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居場所

作者: ルエル

なんとなく、書かないといけない気がした。

もう一生、手に入らない事は知っていた。

ただ、憧れだけが残って募る。


いつでも手を伸ばせば触れられると思っていたものは

気が付いたら全く手の届かない所に行ってしまっていた。


近くにあった、灯りが消えて

周りは何処も真っ暗闇で。

寒さと不安で咽び泣いた。


幾ばくかの時間が過ぎて、

ようやっと私は足を踏み出す。

辛うじて、見えるようにはなったけど

周りは今も真っ暗闇。


少しずつ、ほんの少しずつ進んでいく。


時折、灯りを見つけると

深呼吸して進んでいく。


でも真っ直ぐな道はなくて。

近くには行けても、絶対に手は届かない。

道を探している内に、気が付いたら見失って

見つけた時には、再びずっと遠くになっていた。


それを何度も何度も繰り返した。


少しだけ、見える範囲が広くなって。

少しだけ、離れる距離が短くなった。


時折、灯った灯りが何かの影を映し出す。

毎回、姿形は異なっていて、気が付いたら消えている。

でも1つだけ、例外がある事にも気が付いた。


その影だけは、ちょっとだけ色が違って、

灯りから遠くてもよく分かる。

その影が見えると、灯りはいつの間にか、

その影の近くに居て、いつもより明るさが増す。

暗闇に目が慣れた私には、ちょっと眩しいや。



離れる距離が短くなったから、

色んな道をじっくり見ながら進めるようになった。

灯りが近いから、周りもよく見える。


離れて、近付いて。暗くなって、明るくなって。


どんな所から見ても、時折現れる影が見えるのは灯りの向こう側。

でも色の違う影がどこに現れても、灯りはその影を横から映し出す。


“君の隣” その影は云う。

そこは、私には一生手に入らない場所。


何度も周りを移動する内に、

そこに通じる道だけは閉ざされている事に気が付いた。

分かってはいるけれど、やっぱり目の当たりにすると少し悲しい。


ただ、そこに行き着くと、何故か灯りが

道を示すように、他の道を照らし出す。


それを繰り返して、いつしか私にしかない道もある事に気が付いた。

茨が無いわけではなかったけれど、その道を選んでその道を進む。


漸く道を抜けた時、目に入ったのは灯りと影。

透明な壁に阻まれて、こちらから触れる事は出来ないけれど、

ただ、会話をして、温度を感じる事は出来る、背中合わせの場所。


“君の隣” それは、私には一生手に入らない、貴女だけの場所。

今後、どんな影が現れたって、それが変わる事は無い。

でも、だとしたら。

“君と背中合わせ” のこの場所は、きっと私だけの場所。



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