勇者
目の前には魔王がいる。あぁ、やっと、ここまで来れた……。
ここまで来るのにどれだけの仲間を失っただろうか……。
誰よりも勇敢に戦ってくれた、ウィル……。
あの魔法で、何もかもを蹴散らしてくれた、クルト……。
精確な剣技でみんなを助けてくれた、ロード……。
支援、回復の両方を努め、みんなに安心感をあたえてくれていた、アリア……。
あの屈強な身体と大楯でみんなを守ってくれた、ゴルド………。
そして王国の兵たち……。
みんな僕を守るために死んでいった……。
魔王を倒せるのは僕しかいないっていって……。
だから、たとえ僕しか残っていなくても、みんなの想いを叶えるために、魔王を、目の前にいるこいつを、殺さなければならない。
もうこいつ以外の魔族の兵と幹部供は全員殺した。
だから、こいつとの勝負には邪魔は入らない……。
……僕とこいつの強さの差は、たいして無いようだ。
だけど、僕の体は震えている。
これが恐怖からくる震えなのか、ただの武者震いなのか、僕にはわからない。これが何の震えだとしても、こいつとの勝負には邪魔だ。だから、僕は、こいつとの勝負に気合いをいれるために、そして同時に、こいつとの殺し合いを始めるために、叫ぶ。
「魔王よ!いくぞ!」
読んでいただきありがとうございました。