-(ハイフン)
AIとは、人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術のこと、
または人間の知的営みを行うことができる
コンピュータプログラムのことである。一般に「人工知能」と和訳される。
コンピュータがAIと呼ばれるには、人間が用いる自然言語を理解したり、
論理的な推論を行うことができたり、
経験から学習して応用することができたり、
といった知的で発展的な作業をこなすことが要求される。
-AI。
誰もが聞いたことあるであろうその言葉に
僕は何か特別なものをを感じる。
ただこの状況に唖然とし、そんな状況に興奮しているのだ。
「--こんなふざけた人生なんて未来なんてありえない!」
ある人は言う。
「あなたにとってはなんだか不思議なことだと思いますが、
世間的には普通なことなんですよ。」と。
マニュアル通りの答えを返してきたようだ。
「--私はAIですよ。私には答えられないことはありませんよ。」
透き通ったその声に返す言葉はまだ無かった。
-じゃあ、幸せって、なんだと思う?
第1話 –(ハイフン)
自宅に帰ると相変わらずテレビは鳴る。
--研究チームはまたもや#&$計画に異常が出たと報告されました。
原因は未だ不明となっており......
「ふぅ。」
バタンっ。
ーまた今日も1日が終わった。今日も変わったことはないな。
自分の部屋に入る。現実逃避だ。
高校生の制服から私服のパーカー、ダメージジーンズへ着替える。
そう呟く僕は、海山 幸。
高校2年のただの男子だ。
「変わったことはない......が。なんだこの状況は。」
一人暮らしに近いような生活をしている。
-ピー。-
機械音がする。
「・・・」
僕の母は海山 唯。
母は30代。僕と14ほどしか変わらないようで、
僕は不思議で仕方がないのだ。
さらに父は僕が物心がついたときからいなかった。
母はそれについて何も言わないが。
僕は何一つそのことについて話を持ち出すことはない。
-ピピィッ、ピー。-
「・・・」
―誰だ君は。
このなんでもない僕の部屋に一人の比較的普通なな女の子がいる。
状況はうまく表せないが、多分何かが起きたことは確かだ。
その女の子は青い光をまとっている。
なぜかパジャマ姿だ。
目は開いていない。
その可愛らしい服につい見入ってしまう。
-パチッ。-
目が開いた。
奇妙なほどそれに大きく目を開けている。
「ホラーかよ。」
彼女の呼吸の音が聞こえる。
すぐに触れれば消えてしまいそうなその肌に
僕は、手を伸ばした。
その瞬時に走馬灯のような何かが僕の脳裏に走った。
「ー。ずっと一緒だよ!」
女の子だ。誰かと話をしている。楽しそうだ。
その情景は瞬時にして消えた。
「ーの研究は順調です。この先ー。」
さらに次は研究室。白衣を着た男性が何か話している。研究者だろうか。
また一瞬で消えた。
「ー君はAー。」
また研究者は話している。
「これは現実か?」
ついつい口から出た一言だった。
幾度となくアニメなどで起きる
非現実的な状況が僕の目の前に颯爽と現れた。
彼女はじっと僕を見つめる。
少し照れてしまって目をそらす僕。
「あ。あ。あ。おはようございます。海山 幸さん!
今日もお疲れ様でした!」
まるでロボットのマニュアルのようなその言葉は、
僕のつまらない耳にスゥーっと流れた。
「お。おう。君は、、、」
焦ってしまって何も言葉が思いつかない。
「私は、保科 光さんの体から生まれたAIです!」
―いや待ってくださいなんですかこの状況は本当に誰か助けてください。
「A、A、A、」
もちろんのごとくフリーズした。
人間の平均反応速度は0.25秒ぐらいで、
上位が0.15秒。僕は0.15秒を超えて平均反応速度より早い、
もしかすると僕は怪物なのだろうか。
そんな僕がこの嘘か誠かもわからない言葉に
判断し理解するのに約1分かかった。
「君はAIなんだね。」
今までに発したことのない言葉で、
目の前にいる見知らぬ彼女にAIだなんて。
「はい!」
―まじかよ。予期せぬ返しが待ってた。
最近ではAIはスマホの機能でしか聞いたことのない言葉だ。
保科光。か。聞いたことのありそうでない名前だ。
それにしても体とはなんだ。
「君の体は中身と違うのか?」
「…はい。」
初めてAIがためらった。
こんな感覚初めてだった。AIもときに躊躇し、
言葉を繕っている。
「…。 AIならなんでもわかるんだね?」
「はい!私はAIです。私には答えられないモノはありません!。」
ドンドンッ!
「ちょっとぉ。お兄ちゃん。大丈。。。d、っ誰???」
こいつは妹、海山 凛。
中学3年生。真面目で優しく、とても純粋だ。
彼女は驚きのあまり逃げようとしている。
すかさず僕は彼女を止める。
「ああーっ。凛!待て待て一旦入れっ。」
バタンっ
「誰なの?この子?まさか、彼」
「んなわけないでしょ。」
「だよね。さすがにないよね。」
「もちろん。って失礼だろ。」
「ごめんごめんさすがに言いすぎたね。」
「本当だよ。ちょっと言い過ぎだかんな。」
兄妹喧嘩を晒しているようなものだ。
少し恥ずかしくなって声が小さくなる。
「あの!」
彼女の存在を忘れてしまうくらい会話に夢中になっていた。
「あっ。そうだった。この子は保科 光。なんかAIなんだって。」
また彼女も僕と同様に反応に時間がかかってしまうのだろう。
ざっと5分くらいだろうか。
「あ、AIなんだー。よろしくね。」
「おねがいしますっ!」
あっさりだった。
読み込みが早すぎてもう引いてるよ。
「とりあえず母さんには言っといてよ俺が言うとめんどくさくなるし。」
「わかったー。」
バタン
彼女がちゃんと母に話してくれるかは保証がなかったが、
僕は凛を信じて話を戻すため、彼女に目をやる。
「それで君の目的は?」
「特には、ない、ですね。」
さらにわからない。
目的がないのならどうして?
「どうやってここまで来た?」
「…わかりません。」
わからないなんて随分と頭の足りないAIですこと。
「AIなのに?わからないものはないんじゃないの?
君はさぁ、どうやって僕の家に入ったんだよ?」
少し感情的になってしまった。
暑くなる体をさましつつ彼女は言った。
「申し訳ありません。アップデート次第追加されると思います。」
アップデート。そういうのでわかるようになるのかどうか・・・
「機械かよ。」
「はい。機械です。。。」
「え、君さ、これから僕の家に…?」
「その予定です!」
「待ってよくわかんないんだけど。誰からの許可もらったの?」
これくらいしか返す言葉が見つからない。
「きょ、か?許可はなくとも
国が女性の体を使ってAIを体内に取り込み
今までの記憶は消去され、あなたのような男子高校生の家に
送り出されるようになったんです。ご存知ないですか?」
そういえば3年ほど前に国がなんらかの意思で
中学を卒業した女子数人を強制的にAIにし、
一部の男子高校生の家庭に送り込み、
勉強を教えたり、もちろん会話したり。
言わばスマホの音声なんとかというような扱い方をされるようだ。
特にテロ的な意味はないようだけど。
「それで君は、あれなの?ここから出たりはしないの?」
しっかりと聞きたいことを単刀直入に言う。
「中学を卒業するとともに全てのは消去され
新たにAIとして生きていきます。もちろん刺せば死にます。
話してくれれば答えれるだけ答えれます!」
質問の答えが返ってこなかった。
会話がかみ合っていない。AIらしい一面だ。
「…。うん。そうなんだ。君は本当に何もしないんだね。」
「何もしない。とは?」
「だから。。。泥棒とか。もしかしたらあるかもだから
知りたいことは全部知らせてもらうから。」
「…はい。」
彼女は少し下を向いた。
まるで少し残念そうな。小学生みたいだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後幾度となく質問をし、彼女は全て答えた。
彼女の元々の記憶はもうないらしい。
答えたくても記憶がないそうだ。
そりゃあそうだ。
その他彼女は普通に高校の転校生として扱われるという。
母さんはこなかった。もう理解したのか、ビビって逃げたのかどちらでもいい。
僕は素直に嬉しかった。
僕にとっては兄弟のような存在かもしれない人に出会えた。それだけだ。
それでもAIは嫌だけど。―
次の日。も彼女はいた。
やっぱり夢ではなかった。
「おはようございます!海山幸さん!今日も頑張r」
「待った。」
「はい?」
彼女の元気な挨拶をスルーして冷静に話す。
まだ朝日が顔を出したばかりの薄暗い部屋に僕の声だけが響く。
「ちょっと不自然すぎだよ。もっとこう、、、友達っぽくしない?」
「ともだ・ち?」
――――――――――
「ずっと友達だよ!光♪」
「光~お友達が来てるわよ。」
「光!あそぼーう。」
「待ってー!私も行く!!!」
―これは・・・私?-
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「―おーい。おーい。保科。でいいよな。うぇっ。なんで、泣いてるんだ?」
彼女は泣いていた。
僕が用意をしている隙に彼女は何か感情のままに泣いていた。
悲しそうな顔で。
ほろほろと。
それを見て僕はやっぱり話さないといけないと思った。
「保科。」
優しく話す。相手を傷つけないように。
彼女は涙をふきとる。
「し、し、失礼しました!このことは忘れてください。ズズッ」
彼女が焦っていることに気付いた。
「君は、残っているんだね。記憶。昨日の夜調べたら沢山出てきたよ
君の言っていたことや
研究が失敗して記憶が残ってしまった子もいるということ。
君は記憶が不具合で消されずに少し
かけらのように残っていたのだろう。」
「かけら?ですか?」
「そう。君はもう敬語なんて使う必要もアップデートも必要ない。
保科光として生きろ。僕が手伝ってやる。」
「海山・・・さん。」
「ほらまた敬語使ってる。幸でいいよ。」
「・・・・幸。」
ついに敬語じゃない言葉が彼女から出た。
それだけでうれしくて、なぜか泣きそうになった。
恥ずかしくて笑って強がって見せた。
もちろんそれはうれし涙だ。
「さ。行こうか。」
いつも通りのテンションを見せる。
が心はそうでもなく尋常もなく緊張していた。
(言えたああああ!っしゃ!)
「はい。。。うん!」
「今日からうちのクラスで一緒に勉強をしていく、保科光さんです。
みんな仲良くしてね~。」
担任の佐田 宏美先生。
独身だ。先生で独身はよくある話だが・・・
究極に背が低い(148.3cm)先生は150はあると断言しているが
一切そのようには見えない。まぁいわゆる合法○リというやつだ。
「保科光です。よろしくお願いします。」
「せんせーの一緒に生きていくパートナーは見つかりましたか?」
クラスの男子がはやし立てる。
先生は顔を険しくした。
「死ね!お前が地獄に落ちるまで今日は補習じゃぁぁぁ」
先生とは思えないほどの言葉が。暴言が出てきた。
「ひゃあああ。まいったなこれは。」
「とにかく。仲良くしてあげてね。」
「よろしくお願いします。」
雨だれのような拍手の中彼女は僕の隣に座る、
ことはなく、斜め前の席に座った。
そこはもともと誰だっけなぁ。
そうだ。弥生とかいうやつがいた気が。する。
その彼女は2学期に入る前に転校してしまった。
家庭の事情だそうだ。よくわからないが。
「君元々どこの高校だったの」
「何か好きなものとかは?」
「あ、はい!えーっとぉ。好きな。。。」
楽しそうだった。
みんなはAIだということに気がついていないんだな。
少し哀れにも見えて少し嘘をついているようで
気が気でない。
「おい。幸。お前なんだか上の空だな」
後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「お。おう。すまん。」
「よくわかんないけど。なんかあったの?」
「ありがと。昨日ねてなくて。」
こいつは俺の後ろの席で授業中もずっと何かしている
若干不思議な俺の友達。七星 真。
こいつは大のアニメオタク。
俺にまでその話をしてくるちょっと厄介な奴。
でも根は心強くて頼り甲斐のあるいい奴だ。
「おい幸!水買いにいくぞ!」
「お。おう!」
保科に視線を送りつつすっと自販機まで直行する。
真は気を使ってくれていたなんだか申し訳なかった。
廊下は走ってないが少し足早に歩いた。
「幸、お前あの転校生に惚れてんのか?」
「バッ、バカちげーよ。ただ。。。」
単刀直入の質問に焦る一方だった。
「ん?」
「ごめんなんでもないわ。先戻っとくわ。」
「お、おい!待てって!」
言おうとしたことも全ては彼女のためだった。
別に言えないわけじゃない。
ただ、僕の家に住みついてる妖怪のような。。。
AIだ。
クラスに戻ってくると彼女は近くの女子と楽しそうに話していた。
今のところAIだということはばれていないみたいだ。
当然のことながらAIだなんてばれたらまずいことになる。
そう思っていたのだ。
「へぇ。すご~い。光ちゃんAIなんだ~。」
は?
「AIってあれだよね国が研究した新たなシステムかなんかじゃなかったっけ?」
何?
「えぇ。まぁ。そうです。。。。ね!」
とりあえず一言いうなら頭が真っ白だ。
もうばれていた。
「ちょっと来い。」
「あ。はい!」
スタスタと保科の前まで行って左腕を強くつかみ廊下まで連れていく。
他のやつに見つかりそうなのでさらに引っ張って水道の裏まで行く。
「っちょ!痛いっ!」
AIにも痛覚はある。もちろん以前までは普通の女の子だったのだから。
しかしこうもあっさりとばれてしまうと彼女の今後の生活が危ない。
そう思ったからだ。
彼女のことがー。
「お前なんでもうばれてんだよ!」
ムキになって吐き出すように言った。
「すいません!やはりAIは話にかみ合わないことがあるみたいで。」
彼女は冷静ながらも焦っている。
それでも僕は話を続ける。
「だからってAIがバレることがあるか?」
「波さんという方が。。。」
彼女の口から僕の知っている名前が聞こえた。
「n、波?」
「波を呼んでこい。」
声が小さくなったが聞き取れているだろう。
「えぇ?波さんですか?はい!」
慌てて彼女は走って教室へ向かう。
「いったい何の用よ。幸。」
伊藤 波―。
鋭く誰もが寒気を感じるような目つきの彼女。
Sだ。今日も負のオーラを放っている。
「なんで保科がAIだってわかった?」
「それは。。。勘よ。勘。」
波は何かを隠した。分かってはいたが何も言わずに流した。
「ふんっ」
「おーい。幸ー。やっと見つけたよ。ってあれ。波。なんでここに?それに君は転校生の。」
真が来た。保科に気づいて少しだけ顔を赤くした。
「どうも。光です!」
「ご丁寧にどうも。」
「おい波。またじっくり聞かしてもらうからな。」
とりあえずの言葉のみ交わす。
「なんのことかしら。」
彼女はとぼける。呆れてものも言えない。
波が首をかしげると同時に波の長い黒髪がしなやかに揺れる。
「はぁ。」
ため息を思わずつく。保科が見ていたが気にもならなかった。
「クラスに戻るか。」
なぜならAIだからー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えぇーっと今日の授業は----」
授業中。今日も先生はしゃべる。
他の生徒に話を振りながらも笑いをそそっている。
はぁつまらない。実質何も起こらない日常に戻ってきた気分だ。
先生の授業は面白い。だが、そんなことよりも
興味深い出来事が昨日今日で起きすぎている。
彼女はなぜ僕のところに来たんだ?
別に真でも良かったはずだ。
なのになぜ僕のところに来たんだ?
保科の記憶をどうやって戻すか気になるしなぁ。
はぁわからない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「幸!帰ろうよ~。」
「あ。悪い。部活なんだわ。」
「そうなんだ。。。!私も行く!」
「えぇ?いいのかなぁ。そんなに簡単に決めちゃっても。」
「大丈夫でしょ?」「さっ。行こっ!」
小学生のようなテンションで彼女は走り出す。
「待てよー!部室の場所分かってんのか?」
そういえば彼女は僕以外には言葉を崩したことがない。
なぜだろうかそんなことを考えて歩く。
僕は写真部の部員だ。
いや。部員というか写真を撮る。か、撮らないかで言うと撮らない感じの
ひどく魅力のかけらもない部活に所属している。
ちなみに活動内容は。。。僕も知らない。
写真を撮るくらいだ。
顧問は佐田先生。なんとなく面白そうだったから引き受けたそうだが、
いまだに部室に来たことがない。忙しいのだろうか。
「部室はここだよ。」
「しっかりしてる。」
部室だけはしっかりしている。
3階建ての校舎内の2階、の隅っこに部室を置いている。
部員は波と真。さらに部長は3年生。上伸 楓希。
とにかく変態だ。
さらにこの部長、いつでも部室で寝ている。
部長としての役割を唯一果たすのは半年に一回の部長会議のみ。
そこで何を話してるのかは知らないがとにかくそこだけは頑張っているらしい。
さらにこの変態。部費まで使ってベッドを購入するほどのなかなかのクズだ。
ガチャ
「部長~。。。って、寝てますよね。。。」
「部長って変わった人なんだね。」
「うん。。。まぁ。。。無視してくれていいよ。あの部長かなりのクズだから」
「クズとは侵害だなぁ。幸ちゃんよぉ~。俺の美しさに嫉妬してんの?」
まじでうっとしい
「あぁ。はい。そうですね。そうですね。はい。ってか部長。その呼び名やめてもらえませんか?」
クソ変態は極度のナルシスト。DislikeをLikeに受け取る無意味な能力を持っている。
「こ、この美しい美少女は!?」
「保科です。幸について来ました。よろしくお願いします。」
「おっとぉ~。幸ちゃんよぉ~。もしかして彼女?」
うっざ
「なわけないでしょう。」
「・・・・。」
保科はうつむいた。残念そうだった。
まさか。
保科に限ってそんなことがありえない。相手はAIだ。そんなことはできるわけがない。
「幸ちゃんよぉ~。俺より先に付き合うとかなしだよぉ~。」
「はいはい。分かりましたよ。付き合いません。」
「よぉ~し。」
「・・・。」
「・・・。あの。この部はいったい何をするんですか?」
一瞬時間が止まった。
何も言わずに下を向いていた保科がついに口を開いた。
と。思ったら突然の質問に唖然としてしまう。
夕日が当たって少しまぶしいこの部室に沈黙が作られている。
「・・・・・・。何をする。っていうのは?」
部長が約7.24秒の沈黙を破り、口を開いた。
「例えば。写真を撮って構内に掲示とか。」
「いやぁ。無いでしょ。」
部長が言う。
「コンテストとか。」
「保科~。無いよそんなの。」
僕は言う。
「写真集を作るとか」
「うわ~ないわ~。」
口をそろえて出た言葉だった。
「・・・。」
彼女はつまらない部活だなと思ったかもしれない。
構わない。そういう部活だから。そういう部の活動だから。
「特にやることは決まってないんだよ。」
「・・・。うん。」
保科はまた呆れた顔をした。
何度目の顔だろうか。
AIには思えないほどに人間らしかった。
何も言うことにできない彼女に僕は言う。
「・・・。まぁ。写真は撮るよ。」
「・・・。うん。何を撮るの?」
「・・・。花?」
「女子運動部?」
「はぁ。センスがないですね。」
「すいません」
2人ともまた揃った。
部室の扉を開け、
校内をスタスタ歩き、
階段を下りる。
部長は来なかった。
(空でも撮るか。)
隣で歩く保科の顔はとても楽しそうだ。
ただ写真を撮るだけなのに。
「・・・なぁ。保科。」
「ん~?なに~?」
「なぜそんなに楽しそうなんだ?」
「だって、今しか見れない景色があるんだよ!写真におさめておかないと・・・。
おさめておかないと・・・。無くなっちゃうから。」
「・・・。」
確かにそうだ。僕は上を向いたそこには一面にオレンジが広がっていた。
雲がかぶさって美しく、とても心が浄化される感じがした。
(今しか見れない。か。)
保科との時間も。一生ではないんだなー。
帰り道。写真はいつも通り撮るだけ撮って部室に置いていった。
また来週取りに行くから気にすることはない。
もう時間は5時を回っていた。
久々に部活をした気分だった。
「今日はなんだかあったかいね~」
AIには見えない普通の女子に錯覚してしまいそうだ。
「そうか?」
「そうかいなぁ」
「やっぱりお前AIだな。」
AIにとって最大の弱点。会話がかみ合わないこと。
しかし保科に関しては記憶が少し残っているのでそのところよくわからない。
「あぁ。やっぱりな。」
「また噛み合ってないな。やっぱりアップデートが必要か?」
「うるさいよ!」
彼女は怒った。可愛い。ついついそう思ってしまうほど可愛い。
彼女はアニメによくいるヒロインのような。そんな子だった。
「はいはい。まったく。なかなかだなぁ。この生活。」
自宅につき、ドアを開け玄関に入ろうとすると、目の前に母さんがいた。
「あ。おかえりなさい。あ。あなたが光さんね。
私は幸の母親。唯。海山唯よ。」
「母さん凛から話は聞いてるみたいだね。」
「初めまして。保科光です。昨日から幸の部屋でお世話になってます。よろしくお願いします。」
彼女はそっと言った。
「幸はあれだから。嘘つきだから光さんのことも嘘だと思ってた笑」
まず人の部屋に勝手に上がり込むこと自体がおかしくてならないんだが。
気にせず話をつづけた。
「これは本当。」
「そう。」
「AIですけどね。」
当然のように彼女は話す。が違う。間違っている。当然ではない。
「AIねぇ。なんだか懐かしいわね。」
「懐かしい?AIって開発されたの最近じゃなかったっけ?」
「研究段階はかなり前だったの。。。ってテレビで言ってた。」
母さんも何かを言い改めた。
みんな隠してることはあるもんだ。
「なるほど。」
すかさず流した。
「幸!今日って「Q&A」の放送日じゃなかったっけ?」
彼女は言った。今日はリアタイで見るアニメの日だ。
「あ!やっべぇ。忘れてた!ごめん母さん今日、飯いらねぇや。こりゃあ飯どころじゃねぇ!」
ドタドタドタ
「え。まってよ~幸~!」
なぜか出会って2日の彼女が僕の好きなアニメを知っている。さすがAIということかな。
バタン。
彼女は部屋に入った。
「ちょっとぉ先に行かないでよ。私だって見たいんd」
彼女が言い切る前に僕は人生過去最大の行動を起こした。
ドンっ
いわゆる壁ドンだ。
「保科。よく聞け。」
「えっ・・・。」
保科は顔を赤らめて反応する。少し声が裏返っていた。
「明日は土曜日だ。お前の記憶を探しに行こう。」
「ゴクリ。」
保科は飲み込んだ。自分の心の声か僕が放った声を。
そしてしっかりと、僕にも伝わる一言が返ってきた。