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友盟の絆  作者: Project_B.W
第2章 ユリアサイド 第2節
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12話

 皆が寝静まった夜にクロフは王都から帰還した。

 クロフの帰宅に気づいて目を覚ましたケビンとゴーザはその夜のうちに、クロフから王都で得た情報を聞いた。


 そして、翌朝。

 ケビンとゴーザはユリア、メリエンヌ、ソフィナの3人をリビングに集めた。

 

「今夜。飛空艇建造計画反対派達の会合があるらしい」


 ケビンの説明に困惑を示したのはソフィナだった。


「それがクロフさんが持ち帰った情報ですか? いったいどうやって手に入れてきたんですか。クロフさんが元ミードレイモン王宮第三中隊隊長だったって聞いてはいましたけど、そんなピンポイントな情報、簡単に手に入るとは思えないんですけど」

「もしかして、王宮がすでに動いていたんじゃない? ミードの王宮騎士って軍じゃなくて王宮直轄だもの。飛空艇建造計画も王宮の高官が関わっているという話だし。軍人が大量に動員されている。不正の疑いに気づいて王宮側の誰かが動いたのかも。クロフさんが飛空艇の情報を探れば、そういう人達が接触してきても不思議じゃない」


 ソフィナの疑問にユリアが憶測で答える。

 するとケビンは笑みを浮かべた。


「姐さんはそういうとこ鋭いよな。その推察の通りだよ。クロフさんは王宮騎士時代の伝手で王宮と軍、それに協会に声を掛けたら、飛空艇建造が政局の権力闘争に絡む厄介な事情を抱えていることを話してくれたそうだ」

「飛空艇建造計画って政治がらみなんだ、やっぱ」

「あぁ。クロフさんが入手した主な情報は二つ。一つは飛空艇建造計画はミードレイモン王宮の強硬派が立案したってことだ。表向きの目的は貿易の拡大。単純明快でわかりやすい計画だ。だが極秘に三艇の飛空艇と武器弾薬が準備されていて、それを軍人が警備していたとなれば話は変わる。現在はミードレイモン王国の実権を握っているのは穏健派だ。強硬派が実権を穏健派から奪うために計画を立てたのだとしたら、飛空艇を使って既成事実を作るつもりかもしれねぇ」

「どういうこと?」

「つまりだ、強硬派やつらの狙いは戦争、或いは兵士が必要とされる戦場を作ること。飛空艇建造は国王が正式に承認している。それを使って他国に軍事介入すれば後戻りは出来なくなる。ミードは国家間の信頼があって中立を保っている国だからな。一度それが崩壊したら、現政権では対応できなくなる。自然と強硬派が動きやすくなるって寸法だ」

「戦争、軍事介入って……軍備増強だけじゃなかったんですか?」


 訊いてきたのはメリエンヌだ。

 彼女は造艇所地下から通じる施設で隠された武器弾薬を目撃しているため、実感があるのだろう。


「ただの軍備増強のための飛空艇なら、正式に公表してるだろうよ。だが、隠してるとなると怪しいな。戦争は飛躍しすぎかもしれねぇが、少なくともどこかに攻撃を仕掛けることは考えていると思う」


 メリエンヌは「そうですか」と肩を落とし、顔を伏せた。


「でだ、問題はもう一つの情報だ。冒険者協会が計画の賛成派と反対派の対立が原因で混乱状態にあるって話だ」

「そういえばソフィナも言ってたよね。ディーク派が賛成派と反対派で対立してるって」

「えぇ、そうですけど、でも他の派閥は知りませんよ」

「情報によればユンカーン派も内部分裂してるらしいぜ。反対派に走った連中の大半は飛空艇の動力源が何かを知ったからだろうさ」


 ユリアは飛空艇内部にあった黒い鉄の球とその中の部屋を思い出して身震いした。

 あの石の椅子に触れた時に生まれた虹色の光。

 その時に感じた喪失感と脱力感。

 しばらく忘れられそうにない。


「あれはいったいなんだったの? まるで生命力いのちを奪い取られてるみたいな感覚だったんだけど」

「俺が椅子に触れても何も起きなかった。でも姐さんが触れたら起動した。そして、その時に発現した虹色の光。この現象に心当たりがある。『聖なる力』だ」

「『聖なる力』って、初めて聞く言葉なんだけど。なにそれ?」

「神々がごく一部の選ばれた者のみに授けた『魔力』や『気』とは違う第3の力。神の声を聞くことができる『天空の巫女』と呼ばれる存在だ。姐さんには『天空の巫女』の能力がある」

「あ、あたしが? 勘違いなんじゃない? 神様の声とか聞いたことなんてないし」


 ユリアは戸惑った。

 自分に特殊な能力があると言われても、現実感がまるでなかった。


「いいや。虹色の光は『天空の巫女』が力を使うときの発現すると言われている。姐さんは『天空の巫女』の能力がある。少なくとも普通じゃねぇ力を持ってるのは確かだ」

「そう言われてもなぁ。ねぇ、ケビン。ケビンはなんで、そんなこと知ってるの?」

「昔、色々と古代遺跡の研究していたからな、それだけだよ。まぁ、その話は今はいい。それよりも、問題なのは飛空艇がその『聖なる力』を動力源にしている、ってことだ。姐さんが少し触れただけで身動き取れなくなった。恐らくだが、飛空艇のあの動力装置は欠陥品だ。『聖なる力』だけを吸い取ればいいはずなのに姐さんは体力や魔力まで根こそぎ吸い取られていた。つまり、飛空艇は『天空の巫女』の資質のある人間の命を削って動くシロモノだってことだ」


 ユリアは無意識のうちに両腕で自分の身体を抱きしめていた。

 運が悪ければ、命を失っていたかもしれない。

 そう思うと、自然に身体が震えだす。


「そのようなものが使い物になるのか?」

「意識を失っても、生きていれば『聖なる力』は吸いあげられる、だろうな。とはいえ、確かに飛空艇の質量だと一人で動かすことは恐らく不可能だ。推測になるが、少なくとも一隻につき最低でも10人は必要になると思う。動力室にあったあの球体は一つだったが、補助動力室のような場所も恐らく造られている筈だ。でなきゃ、まともな運用ができる訳がねぇ」

「だが、『聖なる力』を持つ者は稀なのだろ。そんな人達をどうやって集めた?」

「姐さんがディーク派に何度も勧誘されてただろ。それを踏まえれば、『天空の巫女』集めをしてたのはあいつらだって予想はたてられる。どうやって『聖なる力』を持った者を探し出したかはわからねぇが、王宮がディーク派を利用して『天空の巫女』達を集めていたとすれば少なくとも納得はできる」

「では、ケビンさんは私達ディーク派が勧誘していたという女性達が『聖なる力』を持つ者達だったと言いたいのですね」


 ソフィナは事実を確認するために口を開いて、自分の言葉で渋い顔になった。


「あぁ。もっとも、憶測だけどな。で、話を戻すけど、その飛空艇計画の概要を知って離反したユンカーン派の人間や王宮の穏健派が秘密裏に妨害工作を行ってらしい。概要までは聞いていないが、恐らくメリエンヌが受けたという書類輸送……まぁ、実際は爆弾だった訳だが、その依頼も妨害工作の一つだったと見ていいだろうな。多分、協会支部を爆破したのもその一環、俺達を嵌めたついでってとこかな」


 それだけ話すと、ケビンは大きく溜息を吐いた。

 静まった室内に響くケビンの吐息は一同をより一層、憂鬱にさせた。

 そんな中、メリエンヌが拳を握り締め怒りに身を震わせていた。


「許せない。確かに強硬派が戦争を起こそうとしてるのは許せない事だけど、わたしみたな関係のない人間まで巻き込むなんて……」


 メリエンヌが低い声音で言った。

 全員がメリエンヌに目線を送る。

 今は皆が同じ境遇にいるのだから、彼女の気持ちは充分理解できた。

 ただ、やり方は汚くとも反対派の行動理念も人命という見地からみればそちらも理解できる。

 『聖なる力』と共に生命力をも吸い取って動く飛空艇。

 そんなものが許されていいはずがない。


 怒りを吐き出そうとするメリエンヌの頭にゴーザがそっと手を置いた。

 そしてまるで子供をあやすように軽く撫でて言った。


「確かに、解せん。だが、今はその怒り抑えておけ。反対派の連中と顔を合わせることになるかもしれないからな」


 優しい言葉をかけられたメリエンヌは「だけど!」と言って反発しようとした。

 だが、ゴーザの穏やかな表情で見つめられて、自分の浅はかさに気付いたようだ。

 途端に反論できなくなり「……はい」と呟いて黙り込んだ。


 メリエンヌが冷静さを取り戻したのを見計らってユリアが声を上げた。


「反対派の連中と顔を合わせるって、最初に言ってた飛空艇建造計画反対派達の会合のこと?」


 ユリアの質問にゴーザは頷く。


「あぁ。反対派達はその会合のあと、セルディーエに乗り込んで飛空艇建造計画を止めるつもりでいる。僕とメリエンヌを匿ってくれたクロフ殿が王国軍に働きかかけてくれたおかげで、算段がたったようだ」

「そうなんだ」

「んで、ここからが相談事だ。姐さん」


 ケビンが真剣な面持ちでユリアの前に立つ。


「反対派が動いて飛空艇建造計画を止めれば指名手配は解除される。だから何もしなくても俺達の問題は解決はする。だが、後味はわるいままになるだろうな。さて、姐さん。このままここで全てが終わるのを待つか、計画に首を突っ込むか。どっちを選ぶ?」

「聞くまでもないでしょ。首を突っ込むわよ」


 ケビンが提示した選択肢にユリアは即答した。


「こっちはとばっちりで巻き込まれてんのよ。途中で、あとよろしく。なんて他人任せにする気ないから」


 どうやら予定通りの回答だったらしくケビンは破顔した。


「だと思った。んじゃま、俺達もその反対派の会合とやらに乗り込むぜ。夕刻に出発するんでそれまでに準備しておいてくれ」



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 ファスルト村を出発したユリア達は東へ向かった。

 険しい山道が続く。

 先頭をゴーザとメリエンヌ、後方をユリアとケビン、間にソフィナという陣形で進んでいた。

 周囲を警戒してそうなった訳ではなく、自然とメンバーが分かれてしまったのだ。


 先頭の2人は時折、会話を交わしているようだが距離が多少離れているせいでその内容はユリアとケビンには聞こえない。

 ユリアの目の前を歩くソフィナは無言のまま黙々とそんな2人の後ろを歩く。


「姐さん、これを渡しておく」


 ケビンは唐突に口を開き、拳二つ分の長さしかない宝石のついた杖をユリアに投げて渡した。

 はじめて目にするアイテムにユリアは首を傾げた。


「なにこれ?」

「杖だ」

「こんなに短いのに?」


 ユリアの疑問は魔法を使える者なら誰でも思うことだった。

 杖の性能はその長さで決まる。

 杖のシャフト部が長ければ長いほど魔力の伝導率があがり、魔法使いにかかる負担が軽減されるのだ。

 逆に言えば短い杖は魔力の制御もろくにできない欠陥品となる。


「あぁ。何度か、使ってみたさ。体感的には普通の杖と変わらない運用ができた。問題ねぇよ」

「短い杖なんてどこで調達したのよ。ケビンが作ったの?」

「いや。俺がルイに依頼して作ってもらったモンだ。先日、ペメル社経由で送ってきた」

「ルイさんが? なるほど、流石」

「で、姐さんには動作テストを兼ねて使ってみてほしい」


 そう言ってケビンは短杖をユリアに手渡す。

 受け取ったユリアは戸惑った。


「それはいいけど。ケビンは使わないの?」

「ちょっと気になることがあってな」

「気になるって、何が?」

「その杖、グリット部とシャフト部が空洞になってるんだ。何かの仕掛けじゃないかって不思議に思ってたんだが、飛空艇の動力源を見てピンときた。この杖はあの動力源と同じなんじゃないかってな。調べてみたら案の定だった。それで杖の使い手は俺でなく姐さんの方が相応しいと思ってな」

「良くわからないんだけど……どういうこと?」


 訊き返すユリアに対してケビンは不敵な笑みを浮かべた。


「それは使ってみて体感した方が早い。説明すると先入観が先に立っちまうだろうし。ちなみに使い方はな、杖の底部分を押さえながら右に回すと底が凹む、それが切り替えスイッチ。元に戻す時は底を押さえて逆回転させればいい。それだけさ。だけど、いざっていう時以外は使うなよ。勿体無いからな。でもきっと、奇跡を起こしてくれるぜ」

「はぁ」


 ユリアは曖昧に頷いた。

 使い方だけを教えられても肝心の効果が判らなくては判断のしようがない。


 それからしばらく歩き、ユリア達はクロフとの合流場所である山の頂にある小規模な遺跡に到着した。

 周囲を木々で覆われている為に山麓からは見ることが出来ず、逆にファスルト村やセルディーエを見下ろせる。


 遺跡へ通じる階段や道路、遺跡の建物全てが石を積み上げて作られていた。

 奥には身体半分が山に埋もれた石造りの神殿が鎮座していた。

 神殿の入り口には扉がなく、大きな口を開けている。

 しかし、入り口を潜るとすぐに瓦礫の山に阻まれ先へ進めなくなっていた。


 この遺跡は15年前に発見され、既に調べ尽くされているらしい。

 発見当初は建造物の古さから、古代神に関係する遺跡かと噂された。

 だが、建造物以外の目新しい発見はなく、調査後は放置されたままになっているのだそうだ。


 遺跡に到着したのは、日が落ちる頃だった。

 そこには先に出発していたクロフの姿がありユリア達を出迎えた。

 彼の後ろにはミードレイモン王国軍の男性が2名。その隣には協会関係者の男女が立つ。女性がユンカーン派、男性がプラットホック派の反対派代表の幹部だった。


 ユリア達は彼らと簡単な自己紹介を済ませた。

 その直後、ケビンがいきなりプラットホック派の男性幹部を殴りつけた。

 男性幹部は避けれたはずだが、身動きせずにその拳を受けて大地に倒れた。

 一同が何事かと、2人に視線を向ける。


「殴られた理由は分かっているな?」


 ケビンが冷やかな表情で男性幹部を見下ろしながら訊いた。

 男性幹部は小さく頷いた。


「分かっているなら結構だ。本当は骨の一、二本へし折ってやりたいとこだが、今はこれで勘弁しといてやるぜ」


 ケビンは吐き捨てるように言ってから、男性幹部に背を向けた。


「ちょっと、何やってるのよ」


 ユリアはケビンに声を潜めて訊いた。

 するとケビンは目を細めて言った。


「あいつらは姐さんに怪我をさせた。だから殴った。それだけだよ」

「は? どういうこと?」

「姐さんを襲った奴と助けた奴はプラットホック派だ。少し考えれば判ることさ。本気でやれば最初の一撃で姐さんを殺せたはず。それに助けた連中のことを襲撃者がわざわざ『プラットホックごときに』なんて確定的な呼び方したのも不自然だ。考えられるのは、俺達をたきつけるための自作自演だったってこと。当然、宿で爆弾を投げつけてきたのも、俺の仕業に見せかけてギルドを爆破したのも奴ら。野外食堂で騒ぎを起こした直後から俺達はプラットホック派に監視されてたんだろうぜ。恐らく、建造計画を妨害する駒として利用しようとしてたんだろ。俺達は良くも悪くも目立つからな」

「それ、本当なの?」

「さぁな。でも大人しく俺に殴られたからな。多分、俺の予測は当たってるんじゃないか?」


 ケビンは遺跡の中にそびえる支柱一つに(もたれかかった。

 2人のやりとりは周囲に重苦しい空気を生んでいた。

 特に襲撃者の話を聞いたユリアの表情は険悪だった。


「猶予は余りないゆえ、本題に入りたいのだが……よろしいかな?」


 険呑な雰囲気を感じ取ったクロフが仲介に入る形でそう言い出した。


「あぁ、判っている。姐さん」


 ケビンがユリアに向かって目で下がるように合図を送った。

 ユリアは治まらない怒りを隠しきなかったが、大人しく従った。

 自分一人の感情で、大事な話し合いを壊すわけにはいかない。


「では、始めさせてもらいます。まず、飛空艇建造計画の概要について意識合わせをしておきましょう」


 ユンカーン派の女性幹部がそう前置きをしてから話を始めた。


「計画の立案者はミードレイモン王国高官で強硬派と呼ばれる者達です。表向きな目的は貿易ですが、真の目的は軍事衝突という既成事実を作り政治の実権を穏健派から奪うことにあると思われます。中立の我が国が軍事行動をとることは外交での信用失墜に繋がる。そればかりかクロフ殿から先ほど伝え聞いた話によると、彼らがもたらしてくれた情報によって、この計画には無視できない問題があることがわかりました」


 ユンカーン派の女性幹部はその手をケビンに差し向けた。

 そして言葉を続ける。


「それは飛空艇の謎につつまれていた動力源のことです。その動力源は魔力ではなく、特殊な能力を持った女性達の生命力だというのです。特殊な能力に関しては今はまだどのようなものか詳しくは判っていません。ですが、飛空艇は人間の生命力を奪って動くシロモノであることは確かなのです。この手段を容認するわけにはいきません。ただ、我々は計画の中止を画策し、プラットホック派に協力を仰ぎ、様々な妨害工作を行ってきたにもかかわらず、中止に追い込むことは出来なかったのもまた事実です」

「バカ言うな。妨害工作が大雑把すぎる上に、テロリストと変わんねぇやり口だったのがまずかったんだろうが。そんなんで止められる訳ねぇだろ。なんでそんな真似をしやがったんだ?」


 ケビンは女性幹部に疑問をぶつけた。

 女性幹部の表情が曇る。


「どうしようもなかったのです。最初は正規のルートで王宮に真っ向から中止を訴えたのですが、計画賛成派の連中に揉み消されました。王宮の穏健派側に接触を試みたのですが、何者かに闇討ちを受け失敗。さらに、軍に計画の不正の訴えたところ、逆に訴えたメンバーが政治犯として捕縛されてしまいました。関係者を使った工作は(ことごと)く潰されたのです。行き詰った我々は別の方法にシフトしました。無関係な人間で妨害工作を行い、第三者側から中止を訴えてくる可能性にかけたのです」

「その作戦で釣れたのが、ゴーザだったという訳か。こっちはいい迷惑だ」

「巻き込んだことに関しては申し訳なかったと思っています。ですが、ゴーザ・バイルのおかげで我々はクロフ・ディードという協力者を得られました」


 話題に上ったクロフは肩を竦めた。


「ワシの協力、ではなく。ワシの人脈を、であろう?」

「確かに、クロフ殿の人脈のおかげで我々はボスマン正将軍の協力を得られました。しかし、クロフ殿自身にも我々は期待しています。元王宮騎士にしてボスマン正将軍の師であるクロフ殿の実力を。そしてあなたの弟子たちにも」


 正将軍。

 それはミードレイモン王国に存在する3将軍の1人。

 王国軍の最高司令官だ。

 

 大物の名前が出てきて会合参加者達がざわついた。


「いいだろう。期待に添えるかは判らんがな」

「それで構いません。感謝します、クロフ殿」


 ユンカーン派の女性幹部はクロフに礼を述べると、視線を全体に向けた。


「それでは、話を戻します。今、お伝えした通り、我々にボスマン正将軍という強力な支援者を得ることができました。これにより表立って動く大義名分が入手できたといって良いでしょう。ボスマン正将軍の部隊も協力してくれることになっています。これから我々はボスマン正将軍の部隊傘下に一時的に加わる形となり、造艇所に正面から堂々と強制捜査に入り、関係者を押さえます。強硬派一派を国家反逆罪及び傷害罪で逮捕するのです」

「手順はちゃんと考えてんだろうな? 闇雲に捕まえに行くと証拠を隠滅される可能性があるぞ。証拠物を押収を優先しねぇと後々面倒になる。飛空艇と武器弾薬、加えて動力源として協力している女性達の身柄確保だ。それに逮捕者が一人、二人なら問題ないが、下手すると100人単位だ。逮捕時は造艇所が混戦状態になる可能性がある。そうなると協会の人間はともかく、視察に来ている貴族達を守る必要も出てくるぜ。人手は足りるのか?」


 作戦に対して指摘をしたのはまたもケビンだった。


「ボスマン正将軍の部隊が約100人程度。申し訳ありませんが、我々ユンカーン派は数に入れないでもらいたい。反対派に回った者の大半は研究者でして……基本的には後方支援程度しかできません。クロフ殿の方は?」

「ワシの方は弟子が15人ほどかな。人数は少ないが実力は保証する」

「そうですか。プラットホックの方はどれくらい揃えられますか?」

「我々か。現状では40人程度。召集中のメンバーが同じ人数程。こちらは作戦に間に合うかどうかは運だな」

「多く見積もって200人弱といったところですか。かなり厳しいですね」

「そうだな。まぁ、これで何とか割り振るしかないか」


 こうして飛空艇建造計画を止める作戦が動き出した。

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