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友盟の絆  作者: Project_B.W
第2章 ルーディスサイド 第1節
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02話

 ルーディスはケネスと別れた後、協会内にある正規雇用の冒険者のみが利用できるラウンジで、指名依頼の詳細を確認していた。

 内容は遺跡調査。

 調査の対象は、大陸の北を東西に遮るようにそびえ立つ山脈『石の王城』にある天空人の遺跡とのことだ。

 本来、遺跡調査であればシータ派やオルガ派が取り扱うのだが、シータ派もオルガ派も別の大きな案件を抱えていた。

 それで、今回は本部教会区からの持ち込み依頼とのことでもあり、教会系最大派閥であるアスタ派から2パーティを出すことになったらしい。

 また本部教会区の冒険司祭が依頼人代表としてついてくるそうだ。


 冒険司祭とは、教会の組織にある冒険部に所属する司祭の事である。

 神官や司祭など地位の前に部署名が付けられて呼ばれるのだ。

 魔物や野獣、野盗などを討伐しながら教区を巡回する冒険部以外にも、冠婚葬祭や儀式を取り仕切る儀礼部に、天の(ことわり)の研究としての魔法の研究を行う魔法部がある。

 この3部署が中心となって教会を支えており、執政三部という。


 他の細かい所をチェックするように依頼書を読みながら、レイリア達が来るのを待った。

 やがて、レイリアがルイの手を引いてやってきた。


「ルーディスくん。おっまたせー。キンシー司祭の講話に参加する約束してきたから、さっさとお仕事の話しましょ」


 ルイの言葉から、ルーディスはどの教会にいたを察し、そしてケネスがどの教会か説明していなかったのを思い出した。


「ルイさん。おはようございます。レイもお疲れ。キンシー司祭が滞在している教会で寝てたんですね」

「そうなのよ。ケネスもちゃんと教えてくれたら迷う事無かったのに3か所も廻っちゃったわ」

「ああ、そういえば聞かずに走っていってたね。では全員揃ったことですし、打ち合わせを始めましょうか」


 ルーディスは2人が席に着くのを待って、依頼内容について話し始めた。


「今回の依頼は石の王城、ドワーフの領域にある天空人の遺跡の調査です」


 石の王城とは山脈の名前であると共に、ドワーフと呼ばれる者達が住んでいる国の名前でもある。

 国交は一切無く、わりと近い集落だけがわずかに交流を持っている程度である。

 そのうちのミードレイモン王国側のドワーフ集落の近くに天空人の遺跡が発見されたという。

 天空人とは神話に登場する伝説の種族だ。

 天空人の遺跡とされるものはいたる所で発見されており、大昔に実在し繁栄した種族でることは判明している。


「調査は、魔法協議会と教会の合同調査隊が組まれます。依頼者は本部教会区。代表はアスタ派の支持者であるコーウェル冒険司祭です。僕らともう1チームがその下につきます。魔法協議会の方はわかりませんが、おそらく研究者達が来るでしょう」


 魔法協議会とは、ミードレイモン王宮直属の魔法組織で魔法使いや学者が多く在籍している。

 学者の事をあまりよく思っていないルイが少しいやな顔をしたが、これまでも何度か魔法教育会(ノーラス王国の魔法組織)関係の仕事もこなしてきたのだ。

 問題はないであろう。


「シータ派は参加しないんだね?」


 天空人の遺跡の調査は協会の指揮で行う場合シータ派に依頼が来ることが多い。

 レイリアがその事を指摘するとルーディスはケネスから聞いた話をした。


「シータ派はもっと大きい遺跡が見つかったんで、そっちを独占するみたいだよ」

「その話は、親方の所の丁稚(でっち)から私も聞いた。ボルンとの国境に近い火竜山脈の麓って話しだけど、詳しくは判らなかったわね」


 ルーディスもそこまでは知らなかった。

 ルイの情報収集能力に感心しつつ、話を続ける。


「ケネスからもうちょっと詳しい話を聞こうと思えば聞けますが、調査が終わってから話を聞いた方が面白そうですね」

「そうね。それで、合同調査隊はいつからの結成になるの? 経費とかの問題もあるし、わかってないと不便でしょ」


 ルーディスは懐からメモを取り出し、読み上げた。


「代表のコーウェル冒険司祭とは5日後に合流。ドワーフの集落と交流のある村で魔法協議会側のメンバーと合流し調査隊結成の予定になってますね」

「じゃあ、5日後から経費を出してくれるわけか。でも5日後出発よね。……必要物資は出発後になるのかしら?」

「そうですね、ここより良い品物が手に入りやすい場所なんて無いから、途中で購入となると難しいな」


 この街は職人の街。

 その恩恵で冒険に必要な道具が高品質かつ安価で買う事が出来るのだ。

 


「協会に問い合わせして、ダメなら後で交渉するしかないでしょ」


 ルイが出した結論にルーディスは首肯した。


「明日、明後日で情報収集して、3日目を使って買出しということで良いですか?」

「ごめん。明日は親方に報告あげなきゃ」


 冒険者を副業としているルイは、本業である技術者の仕事を疎かにすることはできないのだ。

 それは、ルーディスもレイリアも承知していた。


「わかりました。職人さん達の間で噂とかあったら教えてください」


 そのあと、依頼に関するその他の段取りを話し合った。

 全ての打ち合わせを終えたルーディスたちはキンシー司祭の講話を聴きに教会へ向かった。

 そして、移動中の雑談でルイの研究の話になった。


「姉さん。今回は何を研究してたの?」

「これよ。危険だから注意してね」


 懐から取り出した親指大の細長い鉄の球をレイリアにわたす。

 レイリアはしばらく観察していたが、お手上げとばかりにルーディスにわたした。


「何これ? コレを矢先につけて撃つの?」


 ルーディスもしばらく見て、ルイに返す。


「新しい鉄のサンプルか何かですか?」


 それぞれの意見を聞き、ルイは微笑みながら懐に戻した。


「これはね封魔鉄よ。封魔の壷って知ってるでしょ?」

「魔法を封じ込める壷よね。たしか、魔石を砕いて土とかに混ぜて作るのよね。もしかして同じ事を鉄でやったの?」


 鉄には(そんなに高いとは言えないが)魔力伝導作用がある。魔法を封じ込めても時がたつにつれ漏れてなくなるはずである。


「でも封魔の壷って、壷だから魔法を封印できたんじゃ? さっきのだと魔法を入れられないですよね? あと、魔力漏れは?」

「それは、神話上での話で本当はあまり関係ないの。関係あるのは空間の大きさ、でも壷の方が空間が取りやすいからみんな壷にしてるの。コレも空洞になってるのよ。魔力漏れができないように、特殊な液体で3層にコーティングしてるの。んで、実際に魔法が込められてるのが、これなのよ」


 ルーディスとレイリアの心地よい反応にルイは目が輝きだし、いつもより饒舌になっている。


「それで、その鉄は何か封じ込めているんですか?」

「火の魔法を封じ込めてもらったわ。だから、下手な衝撃でヒビでも入れば……『ボン!』ってわけ」

「それは……たしかに、危険ですね」


 ルーディスはルイが無造作に腰元の袋に入れた先程の鉄塊を気にしながら歩みを進めた。

 そうこうしているうちに講堂がある教会についた。



 講堂にはキンシー司祭の講話を聴きに来た人で混雑していた。

 普通の司祭ならここまで混み合うことはない。

 ノーラス第二の都市ハザンシティを治め、北ノーラス教区の枢機卿でもあるリディ公爵が、信頼する相談役として重用されているキンシー司祭だからこそなのだ。

 キンシー司祭が講壇に立つと、先程まで騒がしかった講堂が一気に静かになった。

 そしてゆっくりとキルシーが口を開いた。

 こうして司祭の講話が始まる。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆





――キンシー・オルラント司祭による講話 神話と教義について――




 みなさん、こんにちは。

 この度は、私の講話に集まり頂きありがとうございます。

 キンシー・オルラントです。

 さて、本日南ノーラス教区から依頼を受けた題材ですが、神話と教義についてですね。

 皆さんも小さい頃、親御様から神様のおとぎ話として聞いたことがあるとおもいます。



 『大陸がそれぞれひとつひとつの世界だった頃。

  神は色々な世界を旅し、そしていくるもの崩壊を見てきました』



 から始まるおなじみのものです。



 『旅の最中、黄金に輝く大樹を発見しました。

  そして大樹周辺の世界だけは安定しいるのに気づいたのです。

  崩壊間近の世界を大樹に接触させるとその世界は見る見るうちに回復したのです。

  そこへ、神と同じように大樹の性質に気づいた竜がやってきました。

  神は竜と出会い、友となりました。

  そして神は大樹を中心に周りにあった世界をすべて繋ぎ合わせ、今の世界ができたのです。

  神は大樹の上に居を構え、竜に世界の監視をお願いして、崩壊しそうな時は教えてほしいと頼みました』



 この偉大な3つの存在こそが、教会における三位一体の信仰対象。

 すなわち、神の大地を支えるもの、天空樹アスタシェラウィラ。

 神の代理人、天空竜アスティアノイス。

 そして、絶大にして偉大な神。

 この後ろにあるいつも見ていらっしゃるシンボルがそれぞれを示すものです。

 教会はそれぞれに意味をもたせ、三聖人様方がそれぞれを司るとされています。

 神の権威を【教皇】聖下が、天空竜の力を【法王】天下が、天空樹の調和を【天魔師(てんまし)】智下が、それぞれ司っているのです。

 それでは、続きを語りましょう。



 『しばらくして、神によって繋がれた大陸の中の一種族、有翼人たちが独立をすると言い出したのです。

  天空竜は危険を覚え有翼人の元を訪れ「世界はまだ、完全に固まっていない。この大陸を動かすことで、全ての世界が崩壊するかもしれない」と言いました。

  有翼人達は、天空竜を恐れながらも「勝手に世界を繋げたのは神であり、我々はそれを望んでいなかった」と言い返します。

  天空竜は神に相談し神の御許(みもと)に参上できれば、神が望みを叶えるとしました。』



 この事から、神にお会い出来たら望みが叶うという逸話が生まれています。

 教会の執政3部のひとつ冒険部の最終目標は、神の御許に至る道を探すことです。



 『有翼人は実力者を集め、天空樹を登らせましたが上手くいきませんでした。

  そこで、大いなる翼を造ることにし、遥かな時間をかけ完成させました。

  その翼で神のもとへ長い時間をかけ訪れました。

  神のもとへ訪れた有翼人たちは、神が創った世界を目の当たりにしその素晴らしさに感動しました。

  そして、有翼人たちは願いを叶えてもらいました。

  神の住む場所で神に仕えるという栄誉を』



 おとぎ話で語られる創生神話は以上で終わりますが、教会本部が管理している最も古い書の一部を切り取って判りやすくしたものです。

 この書は神から直接伺った記録とされています。

 我々教徒は、この書を基に教義を作ってきました。

 中には時代と共に変化したものもあります。

 私が思うに、時代によって変化を許容する基盤があることこそ、2000年以上の歴史をもつ教会が今でも精力的に活動ができる由縁でしょう。

 例えば、この工業化したバルティティスで、昔の農耕思考に基づく教義を持ち出されても、職人の方々は困るでしょう。あくまで、これは農業を中心とした時代の教義です。

 カルライノ地方など農耕が中心の地方では、教義ではなく、規範として守られている所もあります。教義とは万人の幸福を考えて施行されるものだからです。



 その後、キンシー司祭の講話は夜まで続いた。

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