第0話 突然の死
初めての投稿です!
頑張ります。
中学に入った頃くらいからだったか、周りの人間が幼く見えて仕方がなかった。
もっと前からなんとなく感じていたことだったが、その頃からはっきりと思うようになった。
喧嘩している生徒、行動に無駄の多い生徒、感情を優先させる教師。
外見が幼く見えるということではなく、なぜそんな頭の悪いようなことをするのかわからなかった。
そんなふうに考えていたからだろうが、16になった今も友達は多くない。
そんな俺だが、一人他と違う特別な友達がいた。
よく会うのだが、ちょっと場所がおかしい。
もう慣れたものだが、
「おはよー、リツ」
そう言いながらこちらにてててっと走ってくる少女、ルカは、今日も、俺の夢にやってくるのだった。
◇ーーーーーーーーーー◇
華原 律、16歳。
高校一年。彼女なし。わけあって一人暮らし。
頭はいいほうだ。高校の勉強はすでに終えているし、学年3位には毎回入っている。
得意な教科は理数系、趣味は音楽。
俺はとある事件を境に、こんな夢をよくみるようになった。
気がつくと、なんとなく懐かしいところにいるのだ。
場所は毎回同じというわけではないが、よく草原に来る。
近くにはいつも紅茶の様な飲み物の入ったカップが乗ったテーブル一つと、椅子が二つがある。
その椅子のうちの一つ座り少しすると、どこからともなくルカが現れるのだ。
見た目13歳ほど。白縹色の長い髪に、キリッとしているがとても可愛らしい淡紅色の目。
ちなみに、ルカという名前は、昔俺がつけてやった名前だ。それまでは名前はなかったと言っていた。
この夢の中だと俺はなんでもできるようだった。
なんでもできると言っても少しコツが必要で、はじめの頃は苦戦していたのだが、欲しいものを何もないところから生み出したり、触っていないものを動かしたりと、最近はほとんど思い通りだ。
テレビゲームを出してやって一緒に遊んだり、小説、図鑑、漫画、はたまた家やゲームセンター、飛行機に電車など、いろいろなものを出してやった。
今日もお互いの近況を話し合った。
俺は学校のことを話してやるが、ルカは普段一人でいるのだそうで、特に話すことがないらしく、話し合うというよりは、俺の話に興味津々といった様子で質問してくるといった感じだ。
ある程度話に区切りがつくと、いつも通り目が覚めそうな感じがしてくる。
「そろそろ終わりの時間みたいだ」
「そっかー。うん、あ、そういえば最近何かあった?」
「え?いや、特に何もなかったと思うけど…」
そんな言葉を交わした後、いつものように世界から自分が薄れていく感覚がしてくる。
ーーんーと?どういう意味なんだろうか。
「よくわからないけど変な感じがしてるから気をつけてね、リツ」
その言葉を聞くと同時に意識が薄れていく感覚が加速する。
そしてその数秒後、リツは現実で目覚めた。
◇ーーーーーーーーーー◇
目を覚ますのとほぼ同時。
ビシッ…
後頭部に鋭い衝撃が走る。
「そんなに私の授業は退屈かなぁ?」
教科書の背表紙で俺の後頭部をなぐった物理の教師ーー宮島 夏菜子ーーが何か言っている。
「すみません、今忙しいので後でいいですか?」
どうやら授業中に寝てしまっていたらしい。
今何時だろうか。
そう思い時計を見ると、後10分ほどで16時と言った時間だ。
「何が忙しいのかな、華原くん、昼寝かな?」
「何って勉強以外の何だというんですか。
誤って寝てしまったので取り戻さなくてはいけないじゃないですか。
それに寝てしまっていたことなら謝りますが、睡眠というのはある意味生理的なものであって我慢しろと言われても限界があると思いませんか?
人間の三大欲求にも睡眠欲は含まれてーー」
「あーわかったわかった。とりあえず放課後先生のところにこようね?」
「あ、すいません今日予定がーー」
「こようね?」
「い、いや」
笑顔が怖い。
「は、はい」
はぁ、面倒臭いことになった。
今日はお気に入りの洋菓子屋さんで新作プリンが出ると言っていたから早く行きたかったんだけど…
宮島は教卓に戻り、授業を再開したようだ。
さっき宮島にあんなことを言ったが、高校の勉強はほぼ終わっているので授業は基本退屈だ。
「いい時間だしこの問題解いたら授業終わりにします。
終わった人から解散していいです。」
宮島がそう言って黒板に書く問題をパパッと解く。
ーーそういえばルカが何か気をつけろとか言ってたな。
そんなことをぼんやりと考えながら宮島の部屋に行っていようかと席を立つ。
◇ーーーーーーーーーー◇
雑用を終えた俺は職員室を出る。
そこまで時間はかからなかった。まだ空も明るい。17時を少し過ぎたくらいか。
「りっくん、一緒に帰ろ」
そう言ってくるのは幼馴染の荒巻 楓だ。
セミショートでゆったり系の明るい性格で結構もててるらしい。
そんな楓だが、お互いの家も近くにあるため、よく一緒に帰ることがある。
「今日プリン買ってから帰ろうと思ってたんだけど一緒に行くか?」
「うん!昔から甘いもの好きだよねー」
「まあな。カエデの分も買ってやるよ」
「やったー!」
そんな会話を後に二人で洋菓子屋に向けて歩き出す。
楓は小学生の頃からの友達だった。
小2の夏に越してきた
なんだかんだ言って、面倒くさい俺と長く付き合ってくれている。
もちろん友達としてだが、
その道すがら、信号で立ち止まっている時急に意識が薄れる感覚に襲われる。
ーーなん、だ?
平衡感覚がわからなくなる。
リツは前のめりに倒れていくが、本人も、スマホをいじっているカエデも、そのことに気づくのが遅れた。
不幸なのはちょうどその時に大きめの自動車が通ったことであった。
鋭いが重い音が二回響いた。
ーーなんの音だ?
その直後頭に激痛が走り、吐き気もしてくる。本能的にわかる、これはまずいやつだ。
トラックにはねられた後、重力に導かれるまま頭を地面にぶつけてしまったのだ。
「リツ!リツ!」
楓が俺を呼んでいる気がする。
ーーこのまま死んでしまうのか。寒い、気がする。これ死んだわ。
もう何も考えられない。感じられない。
リツは抗えない眠気に意識を手放すのだった。