突然の誘い
グランが少女と話している間に人通りが多くなり目の前にある武器屋まではなかなかいけそうにない。この街では、今グラン達がいるこの道は、クエスト受付所や、武器屋、パーティ募集所などある冒険者大通りと、レストランや、街中で着る服を売っている店がずらりと並ぶ商店街通りが、主に人を集めていて、それも隣り合わせに作られてしまっているので毎日毎日少し進むにもかなりの時間をかけて歩かなければいけない状態になってしまっている。
「クソ、絶対設計ミスだろこれ。おい大丈夫か、今はぐれたら見つけられねーからな!」
そう呟いて後ろを振り向くと、この多過ぎる人達にびっくりでもしたのか、泣きそうな顔をしながら、しかし、しっかりとグランに向かって頷き返してきた。
―――しかしなーこうも人が多いと、こいつ流されていきそうで怖いな。よし・・・
「なあ、お前」
「はっはい、な、なんでひょうか・・・」
この少女は、びっくりしたわけではなく、怖がっているんだなと推測を変えたグラン。しかしそれに気づいてもどうもできないので、一つ提案してみた。
「最初に、受付所に連れてく。そこまで行ったら後はお前だけでできるだろ」
中に入ればあとはクエスト受付所の店員にクエストを聞き、クエストを選ぶだけなのでいくらこの少女でもできるだろうと思って提案したグラン。しかし、それでも何か不満なのか俯い(うつむ)てしまった。俯きながらしかし少女は小さな声で何かを言っていたのに気づいたグラン。気づくことはできたが、この人の多さでは(誰もいない時でも多分聞こえない)聞こえなかった。
「おい!今なんて言った。言いたいことがあるならもっとはっきりと言え!!」
グランはついにイライラが最高潮に達し、怖がっている少女に強く言ってしまった。
人が多い場所にいるだけでも、怖がり、怯えて涙目になってしまっていた少女は、今のことでさらに怯えてしまい、その場に固まって動けなくなってしまい、そのせいでグランのイライラはましっていってしまい、この少女をここにおいて先に行ってしまおうかと考え始めていた。
「あの・・・私の職・・・魔法使いなんです・・・一人じゃ、勝てないんです・・・グスン」
顔を上げると、涙を両目からポタポタと流しているが、まだ小さいがしっかりと聞こえる声で訴えてきた。
「それだったら、いくらでも募集してるパーティがあるだろ・・・」
グランは、頭に、血が上っていて少女の性格を忘れてしまっていた。
「私・・・ごめんなさい・・・」
なおも泣き続く少女。その泣き続ける顔を見たグランは、やっと我にかえることができた。
「わ、わかったからもう泣くなよ・・・ちょっといいすぎた。」
「グス・・・いいの。人が怖い私が悪いの。ごめんなさい。」
「じゃあ、お前どうすんだよ。レベル1で、魔法使いが外に出るのは自殺行為だぞ」
「わかってます・・・あの、だから・・・」
少女は小声になりながらも、はっきりと言った言葉に、グランは驚いた。
「私とパーティを組んでくれませんか?」