表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

伝える言葉~受け継ぐもの~

作者: クシナ

亡くなった人の偉大さは

その人がこの世を去って初めて分かる

2015年1月28日

その日は母の誕生日でもあり、三日後に試合も控えた日だった


大好きだった曽祖母がなくなった

私はその日の朝、起きてすぐそのことを知らされた


曽祖母は病気で私が小学生の頃から入院していた

どうやらその病気は体の筋肉が少しずつ落ちていってやがて心臓の筋肉の力が弱くなり

死んでしまう、という病で医師からは

「持ってあと5年」

と余命宣告をされていた


だが、もともと高齢であったにも関わらず曽祖母は

医師の余命宣告をはるかに超え、91歳で生涯を閉じた


驚く事に曽祖母は、死因は病気ではなく 年齢による老衰だった

病気で亡くなったのではなく、しっかりと自分の寿命を全うして亡くなったのだ


曽祖母は長く入院してたため会う機会が少なかった


だから、お見舞いに行って病室に入り左奥の窓側のベッドに近づくと

何事も無かったかのように曽祖母が寝ている姿があまりにもはっきりと思い出せてしまうのだ



そのため実感が湧かず、「亡くなった」と聞かされた時も通夜の時も葬式の時も

私は涙を流すことができなかった


亡くなって、翌日の29日に通夜 30日に葬式に出席し、次の日に試合を迎えた


私は身体能力はそこそこだったが部活のバスケはあまり上手くなかった

当然、試合に出たこともなく「今日の試合もどうせ応援だけだろう」と軽い気持ちでいた


試合前のミーティングの時、スタメンの発表がされた

通夜と葬式で練習に参加できなかった私は100%無いだろうと思っていたのに


コーチが言ったスタメンの中に私が入っていたのだ

私は素直に嬉しかった


今までの練習が無駄ではなかった


そう思えた

が、それと同時にある思いが浮かんだ

「曽祖母が私を試合に出してくれたのではないか」と


そんなことがある訳がないと自分でもわかっているはずなのに

考えれば考えるほど、涙が止まらなかった

曽祖母の死について初めて涙を流した


拭いても拭いても溢れ出してくる涙は

目を潤すと共に、曽祖母との思い出を鮮明に蘇らせた


縁側に座っている時に栗を持って行けば、自分は一切食べず

むいた栗を全て私に食べさせてくれていた


母には内緒だと言っていつも昼食前にくれていた、ちいちゃなマーブル

幼い私が短時間で堅いそれを食べきれるはずもないのにいつもくれていた


それが、感情表現の苦手だった曽祖母の精一杯の愛情だと気付いたのは最近のことだ


そんな曽祖母とのたくさんの…たくさんの思い出が走馬灯のように

私の頭のなかを駆け巡った


いろんな曽祖母の表情を思い出したけど

私のなかの曽祖母はいつも穏やかで、優しい春の日差しの太陽のように微笑んでいた


試合に出て、息が上がっている時に

ふとに曽祖母にあの太陽のような優しい微笑みで

「がんばれ」

と言われた気がした


結局、私は点を取ることはできなかったけど

試合には勝てた

「曽祖母が勝利に導いてくれたのだ」

私は無意識にそう思った


家に帰り、仏壇に報告をした

「おめでとう」

あの優しい声が、聞こえた気がした

「ありがとう」

そう、言い残し私は仏壇をあとにした


季節は変わり、曽祖母が亡くなって初めての夏を迎えた

そしてこの夏私は部活を引退した


あの試合をかわぎりに、私は引退までの残りの試合 全てに出場できた


だけど、スタメンとして出れたのはあの一回だけで

他は全て途中からのメンバーチェンジによるものだった


だからこそ、あの試合は私にとって忘れられない試合だ

曽祖母と私をツナグ最初で最後の試合なのだから


今でも思い出す

「がんばれ」

という優しい声は

これから辛い時がある度に私にとっての支えとなるだろう


私は生きてゆく

どんな困難にぶち当たっても

いつか生まれる子が、孫が

辛い目に遭った時に

曽祖母と同じ、あの太陽のような微笑みで

「がんばれ」

そう、伝えるために…


この作品は、今は亡き曽祖母に宛てたものです。

そのため、曽祖母の月命日の8月28日の公開とさせて頂きました。


初めて書いたのであまり良いものとはなりませんでしたが

多くの方に読んで頂けることを願っています。

長々とした駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ