国助け始めました
何気に異世界にいるのはこれで最後。
二十二日目
外の轟音で起こされた。何が起こっているのか、砂煙と家を覆った緑で見えない。
合間に聞こえる説教のような罵倒は神様の声なので、負けてはいないっぽい。
もう一回寝る。
・創作種メモ
耳栓にできるような物がなかったのでまんま
耳栓になる植物
早くできないかな。本当に煩い。
二十三日目
決着がついた。我らが神様圧勝。ボロ雑巾のようってああいうことを言うんだね。
若い方も神様ではあるしーと礼をしようとしたら笑顔の神様に止められた。
曰く、こんな半端ものよりお前の方が強いから敬わなくて良いよ、とのこと。
・・・あれ?
詳しく説明!と言ってみたらあっさり教えてもらえた件。
神様によると、お前に与えた能力は全部芽吹いたどころか私の予想より大きく咲いているし魔素の多い土地に長く留まったからそこらの神や精霊より強い魔力を持っているんだよ、とのこと。
そこらの神ってどのくらいなんだろう・・・と悶々としているところに神様に聞かれたのが、能力と魔力を除去するかどうか。今週の終わりには決めようね、と言われた。帰るなら除去しないと駄目だけど、残っても良いんだよ、と。
悩みどころだ。
二十四日目
悩みが晴れないままうだうだしてたら精霊たちに遊びに誘われた。大きな花畑があるらしい。
自分で創っておいてらしいなのは、前も書いたけど自分で創った種の繁殖力がぱないから。もう本当に完全に把握できない・・・というほどでもない。実はぼんやりとではあるけど、自分で創った種なら大まかな分布を感じることができるようになった。横になって集中すると種の中でも特に繁殖力が強くて森の外周を覆っているような木や草や花の感覚が伝わってくる。神様から言わせると自分の創造物と意思の交換ができるのはともかく感覚の共有までできる神子は今までにいないとか。
脱線したのでそれは置いといて。精霊たちに連れてこられた花畑はそれはもう見事に色とりどりの花が咲き乱れていた。
花畑とそこで遊ぶ精霊たちにほっこり癒され悩みを忘れていたのに・・・邪魔者が現れた。
ああ今思い出してもむかつく!なんだあれ!昨日ぼっこぼこにされてたのにどんだけ上から目線!?こっちが異邦人だからって(以下筆跡が乱れていて読めない)
・創作種メモ
あの(検閲されました)に対抗するため
神様を呼べる花
一時的にすんごいショックを与える草
創ってみた。
次に来たら、土に還す。
二十五日目
ま た 来 た !
今度はちゃんと森の外から声かけてきたけどね!昨日は悲鳴を上げたら来てくれた神様にこないだよりひどくされてたから学習したのかな。
入れたくなかったけど、ずっと情けない様子で声かけてますって何回も報告しにくる人たちが気の毒なので神様を呼んだ上で入れてあげた。始終神様に怯えてて正直ざまあって感じ。昨日のことは一生根に持つ。帰っても帰らなくても根に持つ。
まあそれはともかく、用件が案外まともだったので驚いた。
外、未曾有の食糧危機らしい。戦争ばっかりやってる上に焦土作戦をどっかがやりだしてからは完全に泥沼。無法地帯があちこちにできてあっという間に民衆が倒れまくり兵隊不足、でも国とその守護神の面子にかけて戦争をやめるわけにはいかなくなり・・・となったところで耳に入ってきたのがこの森のことらしい。最果ての地を覆いつくす緑の迷宮には大量のモンスターと精霊と亜人、そして食べられる上に美味な植物が溢れている、と。
そこでやっとこさ気がついた。そうか、自分、食料チートだ。
そりゃ移住者も来るしみんな言うこと聞いてくれるよね、逆らったら食料危機だもんね。
若い神様からのお願いを聞いて、神様はあっさりと言った―――じゃあ。神子が良いと言ったらいいよ。
・・・若い神様が懇願するように見てきたけども、最初から立ち位置は決まってる。それから逸れるなんて思いもしたことがなかったから、正直戸惑った。神様は悠然と立ってるだけで、だから。
・創作種メモ
遠くの人と話せる植物
栄養たっぷりの、果樹と植物(複数)
・・・寝覚め、悪いし!若い神様の国だけじゃないし条件もつけたし!一般的な日本人として人道に悖ることはできない!うん、だから、仕方ないじゃんか!
二十六日目
ギリギリしながら若い神様たちに種を渡す。だってーだってー戦争やめるって言われたし食料がないとみんな死んじゃうって言われたら逆らえないしー。
もう来んな!と後姿に声をかけつつ、近くを通ったもふもふモンスターに慰めてもらった。
・創作種メモ
皆に秘密でこっそり創ってみたったー。
森に危険が迫ったときに外界を拒絶する結界を張る種
こっそり中心部の小屋の下に埋めとこう。
二十七日目
なんだか眠い。すごい眠い。
神様が横で子守唄を歌ってくれた。すごく安心する。
日記だけ書かせて、と言って書いている。声に惹かれて皆小屋の周りに集まってきてる。
明日、全部、決まる。もう、決めた。
寝る。
二十八日目
四週間目、つまり一月。契約の終わりが来た。
ありがとうございました、と、失われていく力を感じながら下げた頭を神様が撫でて、私たちのほうこそ、ありがとう。お前のお陰で一つの世界の危機が乗り越えられた。ずっとずっと誇りに思うよ、私の神子。そう優しい声で見送られて、一瞬のうちに懐かしい自分の家に帰った。
帰ってきて嬉しいのと、あの世界から消えてしまった悲しさでぼろっぼろ泣いた。
家に誰も帰ってなかったからそれをいいことにひたすら泣きながら今この日記を書いてる。
これで日記も終わり。でも、なんでだろうね。きっとあの世界に家族か従兄弟か・・・とにかく、血縁の人が誰か行く気がするんだ。だから、この日記はこっそり置いておくことにする。そんで、この体験をおとぎばなしにして皆に話そうと思う。
もし、いつか誰かがあの世界に行ったとき、この日記やおとぎばなしを覚えていたら神様に伝えてほしい。あなたの神子はあなたとあの世界を、ずっとずっと大好きなままでしたって。
さようなら、私に生きる意味と実感をくれた偉大なる始祖の神様と遥かなる異世界。
・
雰囲気をぶち壊して申し訳ないあとがきですが、国の守護神はパワーバランスを保つために若い神様しかできないんだよ、と。
若い神様が迷さんに何をしたのかは秘密です。
もうちょっとだけ続くんじゃよ。