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土精霊から見た神子のこと

すごい短いごめんなさい。




 我輩は土精霊の1柱である。名前はない。


 我輩たちは個であり全であるので区別を必要とせぬ。むしろ、区別されることによって本体と切り離された個として世界が認識するので力が低下して非常に迷惑である。神子にそのように申し上げたところ、納得していただけた。まこと物分りの良い神子である。これは今まで我輩たちが遭ってきた神子とは大きく異なるところだ。歴代の神子たちときたら我輩たちの話も聴かずに霊送り(精霊食い)を退治するわ我輩たちに名前をつけて区別しようとするわ・・・碌なものではなかった。比べて此度の神子は我らの住処を改良して住み心地の良い場所に変え、精霊食いとも仲良く我輩たちをまとめて呼ぶ。なんとも良い神子だ。

 斯様な稀有な心根の神子であるが、能力も稀有である。複数の能力を持つばかりか我ら精霊を通さずに四大元素に働きかけるような能力・・・召喚者としてこれほどの能力を神子につけられるような神には1柱しか心当たりがない。名前を出すのも恐れられる・・・我輩たちには関係ないのだが。

 さても、あの神ならば良いというだろうと当たりをつけて我輩たちの眷属の保護を神子に申し出たところ、神子はしっかりと許可を求めてから我輩たちに返答した。これも良い部分である。神子が是としても神が否とすることはよくあるゆえ。

 森の迷宮に眷属を住まわせる・・・ふむ、あの神は外界とこの場を遮断するつもりか。確かに今世界には争いが溢れ、協定など知ったことかといわんばかりの召喚が多々行われておる。これだから若い神というのは仰々しく光り、己の権益ばかりに目が行ってばかりだというのだ。我輩たちを見よ。権力などなくとも皆仲良く暮らしておる。そのため無駄な争いもなく、神子の能力のおかげで食うにも困らぬ。稀に人や魔のものが入り込もうとしておるが・・・無理であろう。戦う相手は最弱でも土地長(ゲームで言う中ボス)クラスのものであるし、本当に弱いものたちは広がり続ける森の探索や連中への偵察、種族間の連絡が主な仕事。その上戦うものには我輩たちも助力をするのだから苦戦すること請け合いである。また神子が生い茂らせた植物は須らく魔力を持ちただの植物とは一線を画しておる。とくにその繁殖力と神子の知らぬ生き物への攻撃性には目を見張るものがある。ついこの間は眷属を狩りに来た愚か者が巨大な花に食われておった。良きかな良きかな。

 このように居心地の良いこの地にて、我輩たちも日夜自らの生活環境をより良くせんと神子に頼るばかりではなく切磋琢磨を続けている。神子には驚かれたが我輩たち精霊は戦うものである。ことに火や風のものは力比べを好み事あるごとに同属同士で凶悪な魔術を飛ばし自らの手足で打ち合うものだ。我輩たち土や水のものは知恵比べのほうが好ましいのであるがそれでも己の鍛錬を怠りはせぬ。この世界にて弱い精霊とは搾取されるものであり、強くあらねば待っているのは飼い殺しの地獄だけだ。

 故に、我輩たちは一度も我輩たちの力を利用しようとせぬ神子を正しく神子と認め、好意を示す。

 それは我輩たちだけではない。強きが故にその棲家を追われた獣どももその牙を剥くことなく、眷属たちは敬い跪く。神子もまた示された好意に好意で返す。これがおそらく世界の理想の形であろうよ。



 然様申し上げたところ、神子は苦笑しておられた。我輩は何か変なことを言っただろうか。


 

 

土さんはわりと天然。

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