日本海軍陸戦隊の四号戦車
鹵獲兵器が活躍する架空戦記です。
ああ、ワシは第二次世界大戦の時、アメリカ合衆国海兵隊の戦車兵だったんだ。
M4シャーマン戦車に乗って、主にドイツの四号戦車を相手にして戦うことが多かったな。
ヨーロッパ戦線でドイツ軍と戦ったのか?だって?
違う。違う。ワシが戦ったのは、太平洋戦線で、日本海軍陸戦隊の四号戦車と戦ったんだ。
ああ、そうだ。間違いじゃない。
ドイツ軍の四号戦車を日本海軍陸戦隊が保有していたんだ。
日本が四号戦車をドイツから輸入やライセンス生産した話は聞いたことないだって?
そうだ。日本はドイツから四号戦車を輸入もライセンス生産もしていない。
ソ連が戦場で鹵獲した四号戦車を日本が「スクラップ」として輸入していたんだ。
ああ、第二次世界大戦でソ連は我がアメリカ合衆国の同盟国である「連合国」で、日本は敵国である「枢軸国」だった。
日本とドイツは枢軸国で、ソ連はドイツを主敵としていたが、ソ連と日本は不可侵条約を結んでいた。
ソ連と日本が貿易をすることには、何も問題はなかった。
ソ連は戦場で鹵獲した四号戦車を日本に輸出していたんだ。
もちろん、四号戦車をそのまま輸出するのは、問題があるから名目は「スクラップ」としてだった。
太平洋の戦場で、ワシたちアメリカ軍が日本海軍陸戦隊の四号戦車と遭遇した時、最初の頃は、それがソ連が鹵獲したのをスクラップとして日本が輸入した物だとは分からなかった。
日本軍がドイツの四号戦車を参考にした新型戦車か四号戦車をライセンス生産した物だと思われていた。
事実が判明した時は、アメリカ政府はソ連政府に抗議したが、「売却したスクラップの中に偶然四号戦車の残骸が混じっていて、それから四号戦車を再生したのは日本で、ソ連には何の責任もない」という返答だった。
日本に輸出するスクラップに四号戦車の残骸を混ぜないように求めると、「スクラップの中身を判別するのは膨大な作業量になり、不可能である」という返答だった。
アメリカ政府はソ連への軍事物資の削減までちらつかせて交渉したが、結局はソ連が日本へ「スクラップ」を輸出するのを止められなかったそうだ。
もちろん、ワシは裏の細かい事情は戦後になって知ったからな。
日本海軍陸戦隊の四号戦車がどこから来たよりも、戦場では、どう戦うかが重要だったからな。
ん?
日本海軍陸戦隊の四号戦車と繰り返し言っているが、日本陸軍には四号戦車はなかったのか?だって?
これも戦後に知ったんだが、四号戦車を所有していたのは、日本海軍陸戦隊で、日本陸軍ではなかった。
ソ連は仮想敵である日本陸軍に四号戦車を輸出しなかったんだ。
それなら何で、日本海軍には四号戦車を輸出したのか?だって?
これも、戦後に知ったのだが、ソ連の国家戦略だったそうだ。
ソ連は我がアメリカからの膨大な軍事物資の援助により、ドイツと戦っていた。
しかし、ソ連政府上層部は戦後のことも考えていた。
我がアメリカは自由主義国家、ソ連は共産主義国家だ。
思想的に相容れない二つの国が軍事同盟を結んでいたのは、ドイツという共通の敵がいたからだった。
戦後は敵対するのは確実だった。
そこで、ソ連は、アメリカの力を少しでも削ぐことを考えた。
それが、「鹵獲した四号戦車の日本海軍への輸出」だった。
日本製の戦車はブリキ缶に豆鉄砲で、我がM4シャーマン戦車にまともに対抗できなかった。
互角に戦える鹵獲した四号戦車をソ連は日本海軍に渡した。
それで、太平洋の島々でワシたち海兵隊は、苦労することになった。
ソ連は、「四号戦車を運用するのは日本海軍のみで、日本陸軍が運用したのが判明したら、スクラップの日本への輸出を中止する」と日本に警告していた。
ソ連は、ドイツとの戦いの後、極東の日本の勢力圏への侵攻を考えていたからな。
朝鮮半島や満州には、四号戦車が配備されないようにしていたんだ。
……という裏話をワシたち前線で戦っている兵隊たちが知ったのは戦後のことだ。
戦時中は、太平洋の戦場で四号戦車があらわれると、「タイガー戦車もあるかもしれない」と、ありもしないタイガー戦車を警戒して、進撃が遅れることもあった。
結局、太平洋戦争では、我がアメリカが沖縄の攻略に手間取っている間に、ソ連が北海道の北半分を占領して終わった。
そしてソ連は、北海道の北半分に共産主義国家「日本人民共和国」を建国した。
我がアメリカが占領した北海道の北半分以外は、天皇を象徴とする民主主義国家「日本国」となった。
我がアメリカは「日本国」の軍事力は完全には解体せず。人民日本に対抗するために縮小して残すことにした。
日本の陸海軍は名目は解体して、復員のための復員隊となり、日本の新憲法で「文民統制」と「国防権」を明記して、復員隊を国防隊として、陸上国防隊・海上国防隊・航空国防隊を創隊した。
陸上国防隊は、日本製の三式中戦車と我がアメリカが供与したM4シャーマン戦車を保有して、海上国防隊陸戦部隊は、四号戦車を保有した。
前後しばらく、アメリカ製・ドイツ製・日本製の戦車が正統な日本の守り手になっていたわけだ。
今は、陸上国防隊も海上国防隊陸戦部隊も戦車は全部日本製の61式戦車と74式戦車になっている。
最新の90式戦車は人民日本との北海道の軍事境界線に配備予定だそうだね。
だけど、ソ連が崩壊して、東ドイツが西ドイツに併合されたように、人民日本も正統な日本に併合されるだろう。
日本の国防隊が大量の戦車を保有する必要はなくなるのではないか?
……以上が1990年代におこなわれた元アメリカ海兵隊隊員へのインタビューの記録です。
彼の予想とは違い「日本人民共和国」は、我が「日本国」の領土である北海道の北半分を2026年現在も不法に占拠しています。
ソ連崩壊後は、中華人民共和国の支援を受けるようになり、日本人民軍の装備は、中国製となっています。
日本人民軍に対抗するために、我が陸上国防隊は、10式戦車の大量配備に踏み切り、一時期検討された戦車の代替えの105ミリ砲塔を備えた装輪装甲車の配備は中止になりました。
ここ国防隊広報センターには、四号戦車・M4シャーマン戦車・三式中戦車が展示されています。
数年前に公開された戦後すぐを舞台とした怪獣映画に国防隊として出演したこれらの戦車はCGでしたが、今年公開される続編では、レストアされ走行可能なった実物が撮影に使われています。
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