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烈日冬破  作者: 酒漬けコルヌ
プロローグ「冬破計画」
1/3

1節 目覚め

初めまして酒漬けコルヌです。

始めて書く長編作品ではありますが、冬の終わりをテーマに結末までは固まっているので気長に読んでいただければと思います。

 どれだけ願ったのだろうか、どれだけ考えただろうか?

それは時代が悪かったのか、それとも環境が悪かったからなのか?

しかし幾ら推論を並べようとも時は無情にも進み、季節は巡る。

だからこそ、その冬との出会いに永遠を求め、冬の問いかけに別れを告げられなかった…



 そうして夢から覚める。


ガタン ゴトン ガタン ゴトン その心音は心地よく、懐かしくもどこか心臓を絞めつけるような感覚を覚えさせる。


始めに目覚めたのは白い天井だった。

それは慣れ親しんだ日課のように、自然と馴染む動作を再現しようと体に寄り添いうように起床を促した。


だが,誰かを期待してふと横を振りむくも、そこには人っ子一人いやしない。

しかし、部屋が一瞬大きく揺れた影響なのか、天井に備え付けられていた汚れた蛍光灯から光が失われた事で状況を理解した。


今現在、何故だか俺は列車の中にいるのだ。

それも清潔感のある白いシーツにくるまりVIP待遇とも言える暖かい個室席で優雅に惰眠を貪っていた。

そして微かに窓辺から差し込む月明かりがこの列車の行路をいやという程に主張する。

視界に映り込むのは見渡す限りの白い雪原。

針葉樹林が立ち並び、厚い雲より雪がちらちらと降り続ける冬の世界。

誰が好き好んでこんな極地に住みたがるのか、しかし列車はお構いなしに雪をかき分け進行する。


そうして再び列車が段差を超えたのか、大きく部屋を揺らしてよろめくとふと我に返る事になる。

「誰だこいつ?」

窓に映るのは裸の男。

焦げた薪のような髪色をした間抜けで弱そうな男。

20代前後に見えなくもないが何処となく精神が数歳幼そうな一言でいえばダメそうな人間が視界に映り込む。

「ふふふ、残念だったな、貴様…今、たるんだ全裸が見ているぞ‼」

そうして勢いよく腕を前に構えながら背後にいると思わしき相手の方向に右足を軸に体を回転させる。

だがその警戒の先には何もなく、月明かりに照らされたベッドとロックの外れた横開きの扉があるだけだった。

「( ^ω^)・・・ふむ、何だろうか、あの扉は?」

ベッドからシーツを拝借して体を温めながら近づいてみると何やら扉の奥からひんやりとした冷気を感じさせる空気の流れが微かに鼻をかすめる。

しかし、それ故になのか、今まで居た部屋の快適さと現状の異常性についての思考を余儀なくされる事になる。


「俺はいったい誰なのだろうか?」

それは自らのアイデンティティを喪失したようにも思えそれと同時に霧がかった記憶の中であっても親しかった誰かが突然消えたようにも思えて少し胸に後悔と虚空感を深く覚えさせるような感覚だった。

だが、一歩、また一歩と扉の奥へと歩を進めるとその穴に詰め込まれるような現実の痛みが押し流されてくる。

「寒い…痛い…」

扉の奥は暗い通路になっており、体を預けようと壁に手で触れてみると鉄という印象よりかは氷がストレートに殴りつけてくるかのよう主張をする。

それは床も例外ではなく数秒程度気おされて立ち止まっただけでも肉が床に引っ付き無理やり剥がすとミシミシと音を鳴らして痛みを伴う。

「流石にこれはまずい…」

そうして暖かかった白い天井の部屋に帰ろうとふと後ろを振り返るとそこは十字路、行きはよいよい帰りは怖いと言わんばかりに進み続ける以外の選択肢は奪われる。

仕方がないのでシーツの端を器用にちぎり気休め程度に布を足に巻き進む事にした。


しかし、こうして痛みに耐えながらも道を進む中で一つの懐かしさを覚える事になる。

あれはいつだったか、今とは真逆で烈日の日々が続くとても熱い、どこまでも続くような線路の上だったような気がする。

そこであの子と会って…何か、約束をした気がする…。

「…あの子…って、誰だっけ?」

それはきっと大切な誰かだった、それはきっと必要な約束だった。

でも今の私には何も分からない、記憶に霞がかかって自分が誰であるのかの分からない。


そうして数分が経った頃、一つの変化が現れた。

と言うよりかは聞こえてきたというのが正しいのだろう。

歩き疲れてうとうとして眠りに誘われようとしたその一瞬に一つの物音に気付く。


それは寝息だった。

スウ…スウ…と小動物の寝息音が耳を澄ませると聞こえてくるのだ。

「おや?」

何だと思いあたりを探ると音の主はとても近いというよりかはすぐそこだった。

少し右に曲がった通路の隙間を直進するとそこにはふかふかしていそうな長椅子が鎮座しており、先ほどからの愛らしい寝息の主がは眠っていた。


それは13~14歳ぐらいの桃色がかった灰髪の少女が一人。

そんな子供が周りの事など知らんとばかりに長椅子で猫のように身体を丸めながら眠っている。

と言うよりかはネコ科?のようにも思える。

正直この光景をどう表現してよいのか分からないが、その少女にはネコ科のような尻尾と耳が生えており、その上で長い髪を収めるように猫耳のフードを被っている。


「乗客…なのかな?」

服装としては体のラインが分かる動きやすい前掛けとパンツに加え、何故だか物騒な弾丸のストックを胸ポケットや腰に掛けた収納に入れていたりと今から戦場にでも赴きそうな恰好をしている。

興味本位で顔を覗き込むと、そこには整った顔立ちですやすやと眠っていてどこか愛玩動物のような可愛さを感じざるを得ない。


しかし、そんな邪な邪念を感じ取ったのか少女は目を覚ます。

それはむくりという起床から切り替わり、ギロリという目を向けながら警戒を伴い目を覚ました。

「ぱぱ?・・・いや、誰ですか?…変出者…?」


「ま、待って⁉ 変出者じゃない⁉ 落ち着いてくれ、俺はどう見ても紳士だ⁉」


「紳士?…意味わかんない…それに何で裸なの?キモイよ…」


「いいや、キモくない、それにこれはファッションだ!」


「は?」

少女は長椅子からライフルを取り出す。


「落ち着いてくれ見知らぬ少女、知らないかトガと言う着衣の事を…」

現状記憶が曖昧ではあるが子供に手を出す趣味はない。

だが、寝起きの少女の前に知らない男が現れる、それもファーストインプレッションと言うのであれば誰であっても悪い印象を抱かざるを追えない。

ならば、無害である証拠を証明するために両腕を上げて思いつく限りの言い訳を重ねる他手段はない。

「…と言う訳で古代の農耕民族は布を体に巻いて生活していたとかなんとか…」


「あっそう、で、誰?」

少女はライフルの残弾を確認する。


「みみ、み、ミスター…Mr…だ。 それ以上はさっき起きたばかりだから何も分からない、だからとりあえず教えて欲しい、ここは何処なんだ?俺はいったい誰なんだ⁉」

凍える足をがくがく震えさせる。


「Mr?Mr変出者?露出狂?それとも…ああ、うん、そういう事ね…。」

少女は何かを察したのか殺意を抑え対話の意志を表にした。

「起きたんだねスノーマン、ごめんね私じゃきっと話しにならないよ。」

そう言うと少女は武器を壁に立てかけ長椅子に再び寄りかかる。


「スノーマン?」


「そう、あなたの品名だよ、氷塊の下から発掘されたもじゃもじゃの雪男。」


「スノーマン…雪男? と言うかなんで品名⁉ 俺はどっからどう見ても人間なんですけどー⁉」


「何でって…そう書いてたから? 取引履歴とか見る?」


「…え?俺は物なの?人権とかないんですか…?」


「何それ?」


「一般的に生きる権利…とか?自由とか?」


「外に行きたいの?裸で?死ぬよ?」


「…」


「どうしたのスノーマン、何か不満そうだね?」


「…」

不満…確かにその言葉は正しい。

アイデンティティである自分の名前?が分ったのは嬉しい事だが流石に珍獣めいた扱いはあまり好ましくはない。

それに加えて目覚めの直後に裸で彷徨い、訳も分からず銃を持ったケモ耳少女に罵倒される。

一種のプレイと考えても流石にやりすぎと思わざる負えない状況である。


「そう、ならファイアーマンはどう?」


「燃えてどうする⁉」


「ならもじゃもじゃとか?」


「どこがだよ⁉」


「ならベールは?同じ行き倒れだし。」


「どんな行き倒れだよ!」


すると少女はぷくりと不満げそうに問を投げかける「文句があるなら具体的な要望を言って欲しい、自分で歩けないブリキの木こりでも欲しい物はちゃんと口に出して答える。」


「ブリキの木こり?」

確か心臓の無いキャラクターだったか?

だが確かにそうだ、願うばかりでは何も変わらない、口に出すただそれだけで変わる事もある。

子供ながらこの少女は芯のある言葉を言う、いや、だからこそなのか?

「ごめんよ、言い返す言葉もない…えっと…君の名前は?」「お父さんと一緒に乗っているの?」


だがその問いへの返答は少し間があった。

苛立ちのようなものを覚えたのか「私はテレー、ただそれだけ。」「無神経なMrハートレスさん。」と口にして、ふてくされたかのようにそっぽを向く。


ハートレス(無神経な人)それは私を差した言葉だ。

何故だか過去にも言われた経験がありしっくり来たが、彼女にその言葉を吐きださせた理由がぴんと来ない。 疑問に思い聞いてみるも、「あなたには関係ない」や「さっさと部屋に戻ったら?」と答えは引き出せそうにない。

だが正直来た道を戻るにしても暗がりで尚且つ入り組んだ通路設計をしているせいなのか戻ろうにも戻りようがない。

ならばと思いせめて手持ちの情報を増やそうと思い付き「君の…いや、君たち?の目的だけでも聞かせて欲しい」と長椅子の横に座り語り掛けると「…ほんとに何も知らないんだね。」と会話の続きを聞くことが出来た。


少女テレーが言う。

「私達は冬を終わらせる。」

その為にはあなたの力が必要になってくる。

あなたが居なければ私たちは目的を達成する事が出来ない。

だからこそこの列車は薪を燃やして雪路を進みコールドゼロヘ向かっている。

それはきっと要望ではなく命令。

彼女たちの為にこの瞬間に目覚め歩み出した理由の意味であり、私がこれから生きる目的にもなる。


そうして最後にテレーが一言「あなたの為に私は死ぬ」ただそれだけとも…。

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