根付く
時折見る夢の平野には、モグラが飛び出した後のような穴がいくつも開いている。
穴の意味には察しがついていた。この夢は訃報が届いた後の定番なのだ。親しい人、そうでもない人、電波の向こうの有名人、誰の訃報であろうと穴は平等にぽこぽこと開く。
もう数も分からないなと思いながら見渡していたら、どこかの穴から何かが飛び上がるのが見えた。訝しんで見つめるうちに、それはまたぴょこっと飛び出しては穴に引っ込む。
無数の穴を踏まないように近づいてのぞき込めば、コップくらいの穴に球根が転がっていた。
ああ、埋めてもよかったのか。不意に合点して周囲から寄せた土で球根を埋める。
次にここを訪れる時、球根は芽吹いているだろうか。
久しぶりの投稿です。
第35回 毎月300字小説企画、お題は「穴」でした。




