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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛すべき悪徳令嬢

作者: HORA

17世紀。トランシルバニア地方の女領主エリザベート・バートリ。10年で若い女性だけで658人。証拠隠滅や、その場の気分で愛人や一夜の関係の相手もろもろを込みで700人を越える命を奪った。バートリは若い処女の女性の血液を浴びて若返ろうとした血の伯爵夫人。特注の血をたっぷりとれるアイアンメイデン(鉄の処女)を用いて風呂一杯の血を溜めて入浴していたのだという。


そして2025年現在。その子孫であるお嬢ユリエアナ・バートリ(35歳独身)は先祖に悪い意味で触発されてしまい同様のことをしている。特に処女の血と細かくは指定してこないのだが、ぼんやりと若い女の血を大量にご所望だ。


私はそんなお嬢に使えている執事。エリザベート・バートリ様の頃から300年以上ずっと執事としてバートリ家に仕えている執事だ。当時、私の死体の処理が適当だったことが原因で事件が発覚した。後年ではほぼ毎日のように死体の処理を押し付けられるのだ。通常業務も他に一杯あったのに。

そして私は1度火あぶりにて処刑された。…のだが、灰の状態から復活して、引き続きしれっとバートリ家に仕え続けている吸血鬼である。


さて、吸血鬼という種族ではあるが、血を吸う必要があるのはまだ不死性を得ていないひよっこの時期だけだ。あの頃は定期的に血を吸わなければならない。ちなみに日光に弱く、十字架にきょどるのはまぁ成長期の黒歴史だと思っておいて欲しい。吸血鬼の出てくる映画作品を見ると非常に恥ずかしくなる。


さてそんな私が仕えているユリエアナ嬢は骨格ブスだ。もうこれはどうしようもない。血液を浴びたからなんだというのだ。血液を浴びたからなんだというのだ。(2回目) …まぁもちろんお嬢本人には言っていないが。


ユリエアナ嬢の求める血液量は多いが現代の戦略としてSNSで募集できるので随分と楽である。スマホでポチポチするだけの簡単なお仕事だ。お金である程度の血液を売ってくれる女性はいるが心許ない。やはり自殺志願や、亡命希望者、命をお金に換えてくれるような案件、つまり体ごと提供してもらえる相手であるとありがたい。お嬢の1度の血の入浴に下手をすると50人程の女性の血が必要になってくる。執事としては超絶肉体労働だ。


「血液の状態でしか私の前に置かないで」


エリザベート様は折檻や拷問の類の性的指向(フェチ)があったが、ユリエアナ嬢は血にしか興味がない。むしろ自称潔癖症。数人の混ぜた血液で顔を洗ったり浸かったりするのはどうなんですかねぇ…?病気になるかもしれないし、そもそも超絶バッチィと思う。うっ!(かつての自身へのダメージ)


今は大型冷蔵庫があるのでまだましではあるけども、人の血液や内臓、脳の腐敗は早い。命を奪った後はすぐに作業に取り掛かる必要がある。私がバートリ家に仕えている理由の一つがこれだ。私は死体の血液、、、では無く脳と脊髄が欲しい。吸血鬼としての不死性を得てから私は黒魔術にハマり、それらを用いた様々な儀式をしているのだ。そのために多数の死体が集まるこの城は最適であると言えた。


私が住む家はこの城でなく70km程離れた山奥にある。週に3回程帰り、それ以外は城内の使用人室で寝泊まりする。棲家(すみか)まで距離はあるのだがこっそり転移を使っているので15分くらいで帰る事ができる。


お嬢の必要な血、私の必要な脳と脊髄を確保。そして使わなかった体の部位、内臓などは棲家の山の鹿に餌としてあげている。SDGsである。だからかその山の鹿が大繁殖。Sは鹿(shika)(deer)も鹿か。G(goat)は山羊って違うか…。懐かれちゃってコロ (台車)に載せたガラガラと鳴る音を聞くと数分で数十頭の鹿に囲まれる。日本の奈良ですかねぇ?まぁ顔見知りの鹿ばかりだ。彼らが毎年落とす鹿の角は黒魔術の触媒になるので幾らあってもえーんですけどね。


私はとある1人の人間を土に還すことをこっそり目論んでいる。急がなければならない理由がある。2025年の現在、2022年に始まったロシアのウクライナ進行が止む気配は無い。バートリ家の城もそう遠くは無く、無関係ではいられない。


そのおかげもあってか昨今(さっこん)は多くの遺体が手に入っている。しかし戦争は気に喰わない。嬢のように明確な目的があるのならばまだ分かる。鹿の餌として食物連鎖に組み込まれるならば地球の摂理として自然と言えるだろう。酒の席の意見の食い違いで殴り合いに発展するのも不毛ではあるが十分理解できる。ただしドローンで無関係な民間人を爆撃や銃撃するという昨今の戦争事情はただのテロリズムだ。我らの貴重な資源を何だと思っているんだ。大切に育てていた農場を勝手にミステリーサークられた気分だ。


ユリエアナ嬢はブスだが(2回目)、幼少から彼女との人生の時間を共有してきた。私にとって愛すべき子だ。彼女の希望は出来るだけ叶え生涯という短い期間を平穏に笑って過ごしてもらいたい。そしてそのために私の黒魔術の集大成であるテロリズムによって1人の人間を自然に還そう。あとわずか120人分の遺体があれば発動できるので年内には何とかなるだろう。


この脈々と受け継がれているバートリ家の血統は途絶えさせてはいけないのだ。

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― 新着の感想 ―
なんで格上っぽいエリザベートやジルドレが滅んでるのに執事がしれっと復活してるんだろう?
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