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SCENE 31

 貧民街のそばかす娘、ケイ。


 舞台の上で悪役令嬢を演じる、天性の才能に目覚めて。


 その女優としての才能は、前世でつちかわれた乙女ゲームと2.5次元舞台への愛、そして最推しキャラだった悪役令嬢ロザレーヌへのあこがれが、あいまって生まれたもの。


 ブラック企業勤めの社畜OL・赤井(けい)()だった前世から、過労のはてに異世界へと転生。

 前世でこよなく愛しプレーした乙女ゲームとうり二つの、新作演劇「聖なる恋の☆ドキドキ魔法学園」との出会い。


 そして、その台本を書き上げた劇作家皇太子ベルトルトに演技の才能を見初められ、悪役令嬢キャストオーディションに合格。


 乙女ゲームにも登場したあこがれの悪役令嬢ロザレーヌを演じるケイは、これからこの不思議な異世界でさらなる成長とともに一躍スターダムへと上りつめていくだろう。

 稀代の悪役女優として。


 新婚休暇から皇都へ復帰する彼女を、新作演劇「聖ドキ」の本式七日間公演が待ちうけている。

 練習熱心なケイのことだ。

 天才悪役女優としてその才能を遺憾なく発揮し、皇都座の公演は楽日大盛況のカーテンコールで幕を引くはず。

 その客席には、娘を不器用ながら後押ししてくれた母の姿もあるだろう。


 この国で、舞台の上が女人禁制だった時代は終わる。

 天才悪役女優ケイ・フォン・ラークライゼンの登場によって、演劇界のみならずあらゆる分野で女性が正当に評価され大活躍する時がやって来るのだ。

 そしてそんな状況はすぐに当たり前になる。


 いや、まだまだそれだけでは終わるまい。

 耳ざとい連中が、すでに国外でもケイの才能と「聖ドキ」の魅力に勘付き動こうとしているようだ。


 ここラークライゼン皇国のはるか外からも、ストロベリーブロンドの天才悪役女優とその新作演劇の公演とを熱望する声がいまに上がりはじめるだろう。

 舞台の上で、悪役令嬢を演じる天性の才能。

 ケイのその花のごとき熱演を、ひと目見ようと。

 

 国外公演。

 かりにそんな新世界へのドアが開かれるとしたら、天才悪役女優の柘榴石(ガーネット)の瞳にはどんな景色が映り込むだろうか。

 演じることのより大きな喜びか。

 人々との出会いが教えてくれる、語りつくせぬ愛の素晴らしさか。

 新たなライバルとの激しい競演か。

 苦難の日々か、栄光か挫折か。

 思いもかけぬロマンスの紅き炎か。


 その真の行く末は、あるいは演劇の神ビュオニセードゥラにも、その他の天上の神々にも完全に言い当てることは難しいのかもしれない。

 なにしろこの不思議な異世界では、時にいたずらな奇跡すら起こりうるのだ。


 しかしいずれにせよ、心配は無用。

 運命の劇作家皇太子ベルトルトと結ばれて、その頼もしい存在に支えられながらケイは悪役令嬢をどこまでもどこまでも演じ抜く。

 そう、つきせぬ花への(あこが)れを抱いて。


 だって、彼女は天才悪役女優。

 何があっても、おそらくきっとこう言うのだから。

 舞台で演じるあこがれの悪役令嬢ロザレーヌの、あの決めゼリフそのままに。



「それでもわたくしは、愛に生きますわ」と。







 ――悪役女優、第一部・完。

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