暗黒樹海の調査
調査隊は不気味な森を分け入って、進んでいく。太陽が昇っているはずなのに薄暗い森はただただ不気味だった。奥深くに進むにつれ、魔物や野生動物に襲われる。しかし、調査隊は見事な連携でそれを撃退していた。そう野生動物や魔物であれば対応できていた。しかし、ここまでの道中が簡単でなかったことは、彼らのボロボロな装備や、悲壮感を漂わす表情からわかる、
「この先、湖があります!」
木の上から、小型の望遠鏡を覗き込んでいたルナリアが下にいる本隊へ伝える。休憩をとれそうな場所を見つけ、調査隊の顔が晴れる。
「ガニル殿、そろそろこちらも限界だこの辺で野営にしよう」
「そうだな。リアベル殿」
二人のエルフの男と人間の騎士が話し合い、全隊に向き直る。
「この先の湖で陣を張る!騎士団は湖内の索敵し、安全確認せよ」
この調査隊で騎士団をまとめるリアベルは、騎士たちに命じる。
「エルフは周囲を哨戒。狩れる獣を狩るぞ」
エルフのまとめ役であるガニルは命じる。この調査隊はエルフと人間の二種族混合部隊のため、諍いを避けるため、各種族に統率者を置き戦闘と情報共有以外は完全に別行動で動かす運用をしているため、野営場所等は完全に種族ごとに分けている。索敵場所を湖と森に分けたのもその方針によるものだ。
数名の騎士が鎧を脱ぎ、腰に縄を巻きそれをほかの騎士に託して湖に次々飛び込んでいく。エルフたちは三人一組で周囲を見て回る。獲物がいれば狩り、木の実などを採取しているようだ。
「湖内には敵影ありません!」
騎士が湖から上がり、リアベルに報告すると、騎士たちは野営の準備を始めた。騎士たちがテントを張り終わるころ、エルフたちがいくらかの食料を手に帰ってきた。
「周囲に魔物の姿はありません!」
ルナリアはとってきた食料の半分を騎士達に渡す。
「ありがとう」
「いえいえ、こちらもテントを立ててくれてありがとう」
食料を受け取った騎士がお礼を言うと、ルナリアも笑顔とともにお礼を返した。騎士はその笑顔に見惚れ、ルナリアが去る方を見続ける。そこを同僚に見つかった。
「キッド、お前もしかして、あのエルフに惚れちまったか?」
「ルーク!?そ、そんなわけないだろ!」
「エルフは美人ぞろいだからなー。特にあの子は別格でかわいいし仕方ないんじゃないか?」
「違うって言ってるだろ!早く食料運ぶぞ!」
ニヤニヤしながら肩を組んできた同僚の手を払いながら、慌てて食料をもって調理場へ急ぐ。その顔は赤に染まっていた。
焚火を炊いても、光を吸われているかのように暗い。暗黒樹海の夜は、一寸先も闇を体現していた。上を見上げても、大きな木々が覆いかぶさるように空を隠す。どこを見ても来い黒に圧迫感を感じどこか息苦しい。そんな中、キッドとルークは、寝ず番をしていた。チラリとエルフ側のテントを見ると、そこにはルナリアともう一人の女エルフが周囲を警戒している。目が合うと、手を振ってくれたため、手を挙げてそれに答えた。
「いい感じじゃないか?」
「ただの挨拶だろ?」
「その割には嬉しそうだな」
「いいから、索敵に集中してくれ」
「魔法使っていい?」
「魔力は温存しろって命令だろ?」
「少しくらいいいじゃないか、ほれ!」
ルークを中心に、魔力の波が同心円状に広がっていく。
「あ。おい!」
「いいじゃないか。うーん敵性生物はいないなー」
「全く。どやされても知らないぞ!」
そんなやり取りをして夜はどんどん更けていき、闇はさらに深まっていく。そして、暗黒樹海が牙を剥く。
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