表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/49

再会

 目を開けるとそこには、広い平原が広がっていた。背の低い草が絨毯のように敷き詰められ、風になびいて波打っている。遠くに見える、壁に囲まれた街に向かって一本の道が伸びている。


「お?起きたか?そろそろ着くぞ」


徹が、背中越しに声をかける。


「あ、ありがとうございます」


のんきに寝てしまっていた自分を恥じ、赤面する。


「サンロアちゃんはあそこから来たの?」


ルナリアは、遠くの街を指差す。白い壁に囲まれ、鉄の扉がここからでも、その大きさを主張している。


「実は、出たのは夜中だったので、よくわからないんです……多分あそこだと思うんですが……すみません」

「良いのよ。気にしないで」


そういって、ルナリアは優しく微笑みながらサンロアの頭を撫でる。


「む?なんか騒がしいな」


身の丈よりも大きな荷物を背負う誠は、街の入り口に目を凝らす。


「なんだなんだ?」


徹も誠と同じように目を凝らす。確かに、街の入り口に並んでいる馬車の列から、次々と人々が出てきている。


「あれは?マッドタイガー?」


指で目の前に輪っかを作り、遠見の魔法を使っていたルナリアは、赤黒い炎を纏う虎のような生き物を捉えていた。


「マッドタイガー?」

「魔物ではあるけど、よくサーカス団とかで飼ってたりするのよ。どっかの商人の馬車から逃げ出したのね」

「じゃあ、急いで加勢するか」


走り出そうとするのを、ルナリアは手で制した。


「大丈夫みたいよ?」


ルナリアは、徹達に輪っかを覗かせた。それを見て二人は、嬉しそうに笑う。




 だらしなく舌を出しているマッドタイガーの死体を、同僚が運んでいく。


「うちの商品だったのに!なんてことをしてくれたんだ!」


目の前で唾を飛ばしながら、いかにも成金というようないで立ちの男が叫んでいる。


「それは申し訳ございません。ほかの皆さんの安全確保のためですので、ご理解いただきたく」

「そんなの知るか!弁償だ!弁償してもらうぞ!三千万だ!今すぐ払え!」


マッドタイガーの相場は知らないが、そんな大金即金で払えるわけもない。それは向こうも分かってるだろうにと、心の中で盛大にため息を吐く。同僚に他の入都手続きを頼み、

自分は彼の対応に集中する。まくし立てる男に、謝罪と同じ説明を根気強く続ける。同僚の憐みの視線が痛み入る。


「だーかーらー、そっちの事情なんて知らないよ!商品を台無しにしたんだから、金払えって言ってるの!あれだって、魔術院に納品するはずだったのに!」

「ほうほうなるほどな」


堂々巡りも五週目に来たところで聞き覚えぼのある声がした。そちらに目をやると、荘厳な法衣に身を包

んだ二人の男。一人はなぜか、ローレルの民の少女を背負っている。


「では、不肖我らが裁定しようか?」

「なんだお前らは……」


男が振り返り彼らを見た瞬間、教会関係者だと思い込んだのか黙り込む。


「通りすがりの使徒さ」

「神はお前の行いを見ていただろう。そもそもなぜ、あの虎は逃げ出した?」

「あ、えと、それは」

「ん?」


一人がグイッと男に顔を近づける。その表情が笑顔なのが、男の恐怖心をさらに煽る。


「ひぃ!」

「よもや、自身の杜撰な管理を隠すために、実直な門兵殿に詰め寄ってたわけではあるまいな?もしそうであれば……分かるな?」


そういって、拳を叩き合わせる。ガキン!という生身では、決して鳴らないような音がした。


「そ!そんなことは!」

「ならば、他の積み荷も見せてもらおうか。どんな管理をしているのか見せてもらえば答えはわかるだろう」


二人の背から、ただならぬ威圧感が放たれる。男はガタガタと震えだした。


「我らはこちらの門兵殿に用がある。順番を変わっていただいてもよろしいな?」

「は、はいぃぃぃぃ!」


男は自分の馬車に逃げ込み、門をくぐっていった。


「久しぶりだ、キッドくん」

「お久しぶりです!皆さん!」


誠の手を、キッドは力強く握る。


「積もる話もありますけど、まずは言わせてください」


キッドは誠の手を離し、全員の正面に立つ。後ろの同僚に合図を出すと、重い鉄の扉が開いていく。


「アミル王国 王都マキヌへようこそ!」


キッドは、深く頭を下げる。扉の奥からは、活気ある声と街の動く音が聞こえた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ