少女の正体
東の空が赤く燃え、夜の闇を切り裂いていく。森の一角にて、ひと際輝く箇所がある。神々しい光に包まれたその場所では、ルナリアが少女を治療し続けている。わきには、二人が祈りを捧げている。空が明るなったころに、ルナリアが額の汗を拭いながら魔法を
解く。大きく息を吐き、少女を見つめる。
「ふぅ、何とか峠は越えたわね。あとはこの子次第」
ふらつくルナリアを、誠が咄嗟に支える。
「おっと、大丈夫か?」
「大丈夫よ。ありがとう」
「この子は何なんだ?」
徹が、少女に毛布を掛けてやった。
「それは、この狼だけが知ってるはずなんだが……」
誠は、ルナリアを座らせ、カップを渡す。徹が、少女の近くに悲しそうに伏せてる狼に近づく。
「この子に何があったんだ?」
狼に尋ねるも、狼はただ少女を見つめるだけだ。徹がもう一度訪ねようとしたときに、狼の目の光が不規則に点滅していることに気づいた。
「お前まさか……もう……」
そこまで行ったところで、狼がゆっくりと徹たちを見渡し爪で地面をなぞる。
『この子はサンロア。私の大切な友人を頼みます。』
そう書き終わると同時に、狼の目から光が消えガシャンという音と共に崩れ落ちた。誠たちが狼に駆け寄るも、物言わぬ金属の塊と化していた。
目を覚ますと、知らないテントの中だった。少女は、ゆっくりとテントの外を窺う。エルフの女性が一人いた。その女性は、どこか遠くを見ている。その視線を辿ると、そこには、見覚えのある狼を少年のように目を輝かせてみている男達がいた。
「あれは!」
狼の姿を見て、テントから飛び出す。しかし、腹部に激しい痛みが奔り思わずうずくまった。体がフッと持ち上がるのを感じ、視線を上げる。
「大丈夫か?」
先ほどまで狼を見ていた男の一人が、自分を優しく持ち上げている。
「傷はふさがっているけど、無理しちゃダメよ?」
「これでも飲んで、少し落ち着くといい。君がなぜここにいるのか説明しよう」
もう一人の男が、カップに暖かいスープを注ぎ差し出してきた。優しく座らせられると、三人が優しく見守ってくれている。
「ひとまず、ゆっくり落ち着くといい。君を狙う者達ならしばらくは来ないだろう」
男がそういい、少女の背後に立つ。少女の視界の端に映ったのは、幾重にも積みあがった人間の山だった。
少女が落ち着きを取り戻したところで、ルナリアが優しく話しかける。
「あなたは……サンロアちゃん……で良いのかしら?」
少女はコクリと頷く。
「何があったのか聞いても良い?」
「はい」
「あなたはなんで森に?」
少女は少し震えながら語りだす。
「私は……ミロクリス教の修道女です。ある尊きお方のお世話係を任じられています。その方のお世話に関する禁止事項があったんです。私はそれを破ったんです。それを気づかれてしまって……」
少女の背中をルナリアがさすっている。
「禁止事項を破っただけで、殺されそうになるの?」
「尊きお方は国の中心ですから」
ルナリアが、少女を気遣いながら少し離れていた誠たちを見る。二人は、少女の前に座り込み目を合わせる。
「つらいことをよく話してくれた。あと一つ聞きたいんだが大丈夫か?」
「もちろん答えたくなかったら、答えなくて構わない」
少女が伏し目がちに頷く。
「あの狼は一体何なんだ?」
誠は、もう動かなくなった狼を見せる。
「あれは、魔獣工機と呼ばれるものです。まだ開発中の物なはずです……それ以上はわかりません。あれはたまたま教会にあった物なので……」
誠は、少女の頭を優しくなでる。
「そうか、ありがとう」
「役に立たず、すみません」
「何を言ってる?君の話は十分役立っているぞ」
徹が、少女の目を見つめ微笑みながら励ます。彼女は三人の人柄を確かめるように三人を見る。三人とも心配そうに、それでもほほ笑んで不安にさせないようにしてくれている。
「お三方にお願いがあるんです!」
少女は三人に勢いよく頭を下げた。
「あの方を!サリナを助けてください!!」
三人は面食らうも、すぐに笑顔で答える。
「「「もちろんだ(よ)!」」」
三人の声は、晴れた空に心地よく響いた。
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