道中
澄み切った青空の下、エルフたちは里の門に集まっていた。皆が歓声を上げている中、その先頭にリアベルと里長のルシウスが立っている。その向かいには、身の丈ほど大きなリュックを背負う誠と徹。そして、二人に比べれば軽装なルナリアの三人がみんなに向かって手を振っていた。
「ついに行くんだな」
「お世話になりました」
「この里を守ってくれた恩は忘れん。この里はお主たちをいつでも歓迎するぞ」
「ありがとうございます!」
誠と徹が二人と固い握手を交わす。
「ルナリアも気を付けてな」
「はい!行ってきます!」
「リリカのことは、任せておけ」
「すみませんお願いします」
そういうと、人混みの中からリリカが飛び出してきた。
「おねぇちゃん!」
まっすぐルナリアに飛びついた。
「ごめんねリリカ。置いてくことになっちゃって」
「ううん良いの!リリカ大丈夫だよ!」
顔を上げたリリアは、目に涙を溜めながら健気に笑う。そんな彼女を、ルナリアは強く抱きしめた。
「ほんとにほんとに、だいじょうぶなんだよ」
涙声になっていく彼女はルナリアの腕の中で涙を拭く。
「手紙を送るわ」
「ほんと?」
「えぇほんとよ。外の世界のお菓子だって一緒に送る」
「うん」
「必ず毎月送るわ」
「そんなに書くことある?」
「一緒に行くのがこの脳筋バカ達だもの。きっと毎日書いたって足らないわ」
「フフフそうだね!」
姉のおかしい言い方にリリカが思わず噴き出した。
「もうすぐ、父さんも母さんも帰ってくるわ。それまで一人で頑張れる?」
「うん!リリカは大丈夫!」
そういって、姉に抱き着いた後、後ろの二人にオズオズと話しかけた。
「おねぇちゃんのこと、守ってくれる?」
上目遣いでおねだりするリリカを誠は勢いよく抱き上げた。
「「もちろんだ!俺たちが必ず守ってみせる!」」
「約束ね!」
そういって小指を差し出した。二人も笑顔で小指を出して、指切りを交わす。誠がゆっくりと下ろすとリリカはルシウスの隣に立つ。ルシウスが優しく彼女の頭を撫でた。
「行ってらっしゃい!」
リリカの励声を皮切りに、住人たちは旅立つ英雄たちを送りだす。
「「「行ってきます!」」」
鳴りやまぬ激励の声に、息の合った返事をして歩き出した。そよ風が吹き、里の木々も三人にてを振る様に枝葉を揺らす。
初めての夜。三人は、焚火囲んでいた。徹が、薪を投げ込みむ。
「それにしても便利だよな」
徹が、ルナリアの持ってきた無機質な筒を眺める。
「魔道具だっけか」
「アルミ王国は魔道具の生産が随一なのよ。今までも、十分画期的な製品があったんだけど、使えるのは一部の高貴な人向けだったの。でも三年前くらいかしらね?高効率魔力貯蔵装置が開発されてね。そっから一気に王国中に普及されたのよ」
ルナリアは、筒を得意げに掲げる。
「ボタン一つで火が出るとはな」
「戦闘で使えるほど火力は無いんだけどね」
「エルフの里ではあまり見なかったな」
「里は王国の端っこだから、あまり流通してないのよね。今回は、リアベルさんが特別にくれたの」
ルナリアが、筒の底を回すとボッという音共にろうそく大の炎が出る。
「でかさの割に炎は小さいんだな」
「王都の方ではもう少し小型化が進んでるらしいんだけどね」
「これだけの技術がありながら、騎士団の武具は普通だったよな」
徹は、大侵攻時の騎士たちの装備を思い出す。
「どうも、武具より先に生活用品の開発を優先しているらしいの。魔道具を作れるのは、王都にある魔術研究所だけなのよ。量産も難しいんだと思うわ」
「研究ぐらいはしてそうだがな」
「それはしてるでしょうけど……今この国はどことも戦争してないからね。脅威は魔物だけど、王都近郊は出ないし、現状で対処に困ってないからね。前の大侵攻レベルのことは滅多に起きないし」
「あんなのがポンポン起きてたら、メルクリス様からのお願いは勇者じゃなくて魔物の撃滅だったろうな」
誠が、カップに入っているお茶を飲む。独特の香りが鼻を抜けた。
「勇者か……」
「どうした?」
「訊いたこと無いのよね」
「厳密には異世界人だからな。隠れている奴らが多いのかもしれん」
「うーん。まぁ里は割と人の世情に疎いところあるし、王都なら何かわかるかもね」
「まぁ気長にやるさ」
「だな」
三人は、カップを片付けた。火の番に、誠を残しルナリアはテントの中へ、徹ももう一つのテントへ入っていった。
「さて、それで君は何が欲しいのかな?」
そういって目の前にある闇を見つめる。そこには、ランランと赤く光る双眸が誠を見下ろしていた。
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