旅立ち
二人が目覚めてから、半年の時が経過していた。解呪前からめちゃくちゃだった二人だが、現在はそれに拍車がかかり暗黒樹海は今日も大騒ぎだ。
「「アーアアー!」」
「はぁ……」
ツタにつかまりターザンのように木々を移動する二人。つなリアは、そんな二人の後ろをため息を吐きながら軽やかな身のこなしでついて行く。途中で食わす魔獣を狩りながら、拠点にしている場所まで三人はたどり着く。以前までは、干し肉を作っていたり生活感のあった拠点だった。しかし、現在ではずいぶんと寂しくなった。徹が、狩った魔獣の肉を調理する。
「そういえば、ルナリアは本当についてくるのか?」
「えぇ。もちろんよ」
徹の問いに、弓の手入れをしながら当たり前といった顔をして答える。
「危険だと思うぞ?」
「それでもよ。私も自分の腕試しをしたい。今の実力が世界でどこまで通用するのか試してみたいもの。それ
に、あなた達二人だけで旅なんて……都市の一つや二つ無くなりそうじゃない」
「さすがにそれは無いだろう」
「足引っ張る様になったら、大人しく里に戻るわ。だからお願い」
誠と徹は、そういって懇願するルナリアに頷くしかない。この世界の事を自分たちよりもよく知ってる彼女は、間違いなくこれから先の旅で必要になると判断した。
「頼むよ」
「任せて。キッド君にも会いたいしね」
「あぁ、そう言えば騎士団やめたんだよな?」
「何があったんだろうな」
「どうも希望して、今は門番してるらしいわ」
「門番……なんでなんだろう」
「訊いても教えてくれないのよね。こちらに来たら話しますだって」
「気になるな」
徹は、焼きあがった肉を誠とルナリアの前に盛り付ける。
「もうすぐわかるさ」
誠は、肉にかぶりつく。
「いよいよ行くか」
徹も自分の肉に、かぶりつきながら荷造りしたリュックへと目を移す。そこには、調理道具と保存食がパ
ンパンに詰められた革製のリュックが二つあった。
「「巡業へ!」」
「使徒が行くのに、それでいいのかしら?」
ルナリアは、上品にナイフとフォークを使って肉を切って食べてながら突っ込むも二人は気にしていない。
「まずは王都だよな」
「そうね、ここからなら、一か月後くらいに着くかしらね」
「着いたらまず教会に行かないとな」
「使徒なのに、教会に行ったことが無いって本当に変よね」
「それは俺たちも思ってる」
「なにもないと良いけど……」
ルナリアはそういいながら二人を見る。野蛮にも肉を食いちぎる姿に、誰が使徒だと思うだろうか。そんな疑問が浮かぶ。
「無理そうね」
「いざとなれば、正装着るさ」
「それに俺たちには、【メルクリス様降臨(ご本人登場ドッキリ)】がある」
徹がどや顔でサムズアップする。
「それ本当に教会内でやんないでよ?絶対騒ぎになるじゃない」
「まぁ最悪、協会が認めなても勝手にお役目やるから大丈夫だ」
誠は、興味なさげに食事を続けている。
「それもそうね。正直あなた達を止めるなんて不可能だし」
「それは誉め言葉でオッケー?」
「誉めてる褒めてる」
勝手に誉め言葉換算されたルナリアは、あきらめたように食事を続ける。異世界の旅を前にはしゃいでいるアラサー男子共は、追加で肉を焼きに行った。
天界にて、水鏡をのぞいているメルクリスは今日もお腹のあたりをさすっている。
「四肢が生えてきたときは、うれしかったけど解呪後のこの暴れよう。心配だ……次はもっと大変なことしでかすんじゃ……ウゥ……胃薬胃薬」
手探りで薬瓶を探り当てると、瓶の中身が空なのに気づいた。
「あれ?もうない?まずいな、薬神からはこれ以上処方できないって言われてたのに……」
とりあえず、水を飲み疼く腹を落ち着かせようとする。
「ルナリアさん!あなただけが頼りです!お願いします!いや、本当にお願いします!」
わが使徒達と共に映る美しいエルフに、メルクリスは思わず縋ってしまう。鏡の中のルナリアは、この世界の主神に縋られているとは知らずのんきに談笑を続けている。
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