調査
ルナリアは弓を背負い、真剣な面持ちで矢の点検をする。
「本当に行くの?」
背後から声がかかり振り向くと、そこには少し背の伸びたリリカが立っていた。
「うん。アイツらがどうしたのか確認しないと」
「でもあ危ないとこなんでしょ?」
「私じゃないとあそこの場所分からないもの」
矢を筒に入れ、腰に短刀を下げ、食料などの荷物を詰めたカバンを背負う。
「それに、私も強くなったから大丈夫!あのバカ達見つけてくるからね」
笑顔で、リリカの頭を優しくなでる。心配そうな表情をしていたリリカも柔らかい笑みを浮かべる。
「おじちゃんたち見つけてきてね!」
「えぇ!見つけたらただじゃおかないんだから」
扉を開け、暗黒樹海の入口へと向かうルナリアをリリカは手を大きく振って送り出した。
誠と徹が消息を絶ってから、すでに一年の時が経っていた。
一年前
当時のエルフの里では、修行に夢中になっているのではないかと、二人に何かがあったなどと夢にも思わなかった。しかし、半年も経つと次第に死亡説が流れ始めた。調査隊を結成しようにも、場所が暗黒樹海ではメンバーを考えないとならない。そこで、立候補したのがルナリアだった。リアベルに、『前の時間軸で彼らの拠点に行ったことがあるため、自分なら最短距離で一番効率的に調査に行ける』と直談判したのだ。しかし、リアベルは、今のルナリアではそこにたどり着く前に死ぬ可能性が高いとして、許可を出さなかった。
リアベルが選び抜いた精鋭で結成された調査隊は、史上初の暗黒樹海中層まで進めたものの、それ以上は危険だと判断し帰ってきた。調査隊の隊長に任命されていたリキの報告では、魔獣の強さと暗黒樹海独特の異常な植生により、撤退を余儀なくされたこと、そして、誠たちの痕跡は何も見つけられなかった事が告げられた。それを聞いたルナリアは、より一層鍛錬に打ち込む。その後も何度か調査隊を送り込むも、深層には到達できず生存は絶望的であるとして、調査は打ち切りとなった。英雄の死は里中に知らされ、里の住人たちは鎮魂の儀式を執り行う。その儀式にルナリアは参加せずひたすら鍛錬を積む。
さらに半年が過ぎた頃、ルナリアは暗黒樹海の個人調査をリアベルに願い出た。
「あの二人が死ぬはずありません。私に調査に行かせてください」
「ルナリア……気持ちはわかるが……」
「自分の目で確かめに行かせてください」
「君は確かに強くなった。しかし、今の君の実力でも深層は厳しいぞ?」
「承知の上です」
ルナリアはまっすぐリアベルを見る。その瞳に宿る堅い決意に、リアベルは大きくため息をついた。
「条件がある」
「なんでしょうか」
「必ず生きて帰ってくること。限界を感じたら収穫が無くても撤退すること。この二つを守れるなら許可しよう」
ルナリアは深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「しっかり準備していくように」
「はい!」
ルナリアは執務室を飛び出して、早速準備に入る。
ようやく準備が整った。暗黒樹海の入り口に立ち、大きく深呼吸する。
「待ってなさいよ。誠!徹!」
気合を入れて暗黒樹海の闇へと、呑まれていった。
魔獣や植物たちをやり過ごし、前の時間軸の記憶を頼りに進むこと三日ようやく見覚えのある場所に出た。開けた場所で陽光が差している。二本の輝く若木、木々の間を渡すように作られた足場。前の時間軸の時と同じ光景にルナリアは確信した。
「誠!徹!いる?」
力いっぱいの声で呼びかける。
「ねぇ!いるんでしょ!返事して!」
こだまする自分の声は木々の合間を抜けて空へと消えていく。
「返事してよ……」
返ってくる木々のせせらぎが主の不在を告げていた。
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