えんぴつはいつかエッフェル塔になりたい
なろうラジオ大賞4 投稿作品
【えんぴつ】で執筆しました。
初投稿です。
ものすごく、ドキドキしております…。
どうぞよろしくお願いします。
夢がある。
大きくなって、僕はエッフェル塔になりたい。
それはお洒落な街にどん、とそびえ立つ立派な建物で、体はどことなくさびれた灰色に見える。それは僕の頭とよく似た色で、なんだか親近感が湧くんだ。
出会いは、壁に飾られた大きな大きな絵画。
額が縁取るど真ん中。
立つ姿があまりにも美しく、逞しくて。
一目見たときからずうっと憧れている。
絵画には数えきれないほどの建物が並んでたけど。
それは群を抜いていた。圧倒的高さだ。
真っ青な空を貫いて。
どこまでも果てしなく伸びてゆき、太陽と並ぶ天辺。
いつだったか、外の世界へ連れられたとき。
初めて空を見た。
絵よりもっと鮮やかで柔らかな青。
その端っこに太陽がいた。
あまりにも遠くで笑ってて、なのにきらきら眩しくて、僕は途方に暮れたっけ。
今の僕には到底たどり着けないや。
痛いほど違いを感じさせられたんだ。
もしもエッフェル塔になれたなら。
まずは、思いきり背伸びをしたい。
ぐぅん、と空高く頭を突き上げたら住む家はどんな風に見えるだろう。僕がノートに必死で書く点々の粒に見えるくらいちっちゃいかな。
それから、嵐と戦いたい。
びゅうびゅう、と暴れ散らかす雨風に今の僕じゃあ勝てやしない。
僕は嵐が大嫌い。
からだが木だから濡れたくないし、僕は細くて頼りない。これじゃ嵐と戦うどころか、一瞬で吹き飛び門前払いだ。下手すりゃ、ぽきんっ、と折れちまう。
でもね、
エッフェル塔ならちょっとやそっとじゃ倒れない。びくともせずに、頼もしく、どんと受け止め立ち続ける。カッコいいだろうなあ。
そして、太陽に触れてみたい。
太陽がかくれんぼしてるとやってくる月や星たちも、近くで眺め撫でてみたい。
カチコチかたいかな。
ふわふわ、意外とやわらかいかな。
ああ、考えるだけでわくわくが止まらない。
だけど、そんな僕にも悩みがある。
日に日に小さくなることだ。
紙の上、逆さの僕はひた走る。
しゃかしゃか、しゃっ、しゃっ
くるくる、くるり、くるくるり
疲れて、ころん、とひと休み。
尖った頭はまるくなっている。
がりがり、がりかり、かり、さりり
憧れによく似た形を取り戻し、
再び走り、跳びはね踊る僕。
どうして小さくなるのか、
理由はちっとも分かりゃしないが。
それでも僕は夢見てる。
大きくなって、いつか、エッフェル塔になる夢を。
いかがでしたか?
少しでも楽しんで読んでいただけたら、と思います。
ご感想もいただけたらとても嬉しいです。