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第7話 怪物

 右手には先ほどから自分の剣を手にし、魔術を使う心づもりも万全にしている。左手に持った松明の火を奥へ向ける。

 坑道は、ほぼ真っ直ぐであるので、少し先まで明かりが届いている。


 しばらく進むと、先に見える横穴から何かが覗いているように見えた。

 ソフィアは進むのをやめ、目を凝らすが、それは明かりがギリギリ届くか届かない距離に居る。

 ソフィアは恐怖を感じ身構えた。そして、叫んだ。

「誰だ?!」

 しかし、何の応答もない。


 十数秒間、静寂が坑道の中を包んだ。

そして、再び先ほどの唸り声が聞こえたかと思うと、正面に居た“何か”が飛び出すして、こちらに向かってきたのだ。

 その姿は、コークマッツが言っていたように、背が低く、茶色い体をしている怪物だった。そして、鋭い爪に、頭は小さいが、不釣り合いの大きく裂けたような口からは大きな牙が見えた。

 怪物の動きは素早い、どんどん迫ってくる。ソフィアは反射的に剣を手放した。剣は地面に落ちる。そして、手のひらを怪物の方へ向けて火炎魔術を使い、火の玉を放った。


 火の玉は怪物に命中した。怪物はその場で、炎に包まれた。そして大きな呻き声を上げてその場でのたうち回るように蠢いている。

 ソフィアは数歩下がって、その様子を見る。あと数秒遅ければ、怪物に襲われていたかもしれない。

 坑道内に肉の焼ける嫌なにおいが充満する。そして、炎はすぐに小さくなった。

 本来、火炎魔術の炎は消えにくいのであるが、坑道内は狭く空気が薄いせいだろうか不完全燃焼となったようだ。

 ソフィアは先ほどコークマッツに潜水魔術をかけてもらったので、魔術の効力がある約一日間は空気が無いところに居ても大丈夫だと聞いている。


 怪物の身体に点いた炎が消えると再び怪物はソフィアの方へ向かってきた。しかし、先ほどよりは、動きが緩慢であった。火炎魔術でのダメージがあったようだ。

 ソフィアは、坑道内で火炎魔術は効果が薄いとわかったので、今度は水躁魔術を使い指先から稲妻を放った。

 怪物に稲妻が命中する。怪物は再びうめき声を上げ、その場で進むのを止めた。

 この魔術の稲妻は人間相手だと、一発で気絶してしまう。しかし、怪物は一発で動きを止めることは不可能だった。再びこちらにゆっくりと迫って来た。

 ソフィアは、怪物が動かなくなるまで稲妻を放ち続ける。連続的に稲妻が怪物の体を貫きついに怪物は動かなくなった。

 どうやら倒したようだ。

 ソフィアは、動かなくなって地面に横たわる怪物に近づいた。

 そして、改めてその姿を見る。これまでに全く見たことの無い容貌の怪物だった。

 これは一体何なのだろうか?

 そして、坑道の奥から再びうめき声が聞こえてきた。

 そうだ、さきほど索敵魔術で感じたのは何者かが四つか五つ存在するということだった。ということは、まだ、奥には怪物が居るということになる。


 さらに進むのを躊躇した。この怪物が何匹も現れた時、すべてを倒すことができるのだろうか?

 不安が頭をよぎる。しかし、少し冷静になって考えると、幸い、坑道は幅がさほどなく、怪物も一度には攻撃できないだろう。一対一であれば切り抜けることができるかもしれない。

 ソフィアは自分にそう言い聞かせ、自らを奮い立たせる。そして、先ほど地面に落とした自分の剣を拾いあげた。その剣を見つめる。まだ不慣れな剣では怪物を倒すことは難しいだろう。ソフィアは剣は使わず魔術のみ、火炎魔術は先ほどの様に狭い坑道内では自分にも被害が及ぶ。そうなると水躁魔術で戦うと決めた。


 ソフィアは剣を腰に下げている鞘に納めた。そして、さらに奥へ進むため、まず怪物の死体をよけるために壁沿いを進んだ。

 注意深く坑道を奥へと進む。

 怪物が掘ったのであろう穴がたびたび上下左右に見える。ソフィアは坑道の地図を改めてみるが、これではどこで曲がればいいのかの確証が持てなかった。

 その後、坑道の中をかなり長い間歩いた。しかし、どれぐらい歩いたかは、暗闇なので時間の感覚が今一つだ。幸いなことにその後は怪物に遭遇することはなかった。

 ソフィアは少し疲れたので休むことにした。適当に地面に座りこんだ。松明の火も小さくなってもうすぐ消えてしまうだろう。

 このままでは暗闇の中を進まなければならないが、代わりの灯りは火炎魔術を使って何とかするしかない。

 そして、念のため再び索敵魔術を使う。先ほどあった怪物の気配は無くなっていた。とりあえず近くにはあの怪物は居ない。

 ソフィアはホッと安堵のため息をついた。

 そして、いつの間にか眠りに就いてしまった。

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