お食事 ▶︎一人前(ハンター盛り)
ご飯は普通だった。味は美味しいし、見映えよく盛り付けされている。
ただ、ハンター向けご飯と言う点を、普通と見るか普通じゃないと見るかは別の話。
「……多いですね…」
大皿にどーんと乗ったパエリアが5皿だ。
パエリアって普通、テーブルの真ん中にドーンで、取り分けじゃないのかな?
20センチくらいの白皿には、照り焼きチキンステーキに、申し訳程度の野菜が添えてある。
30センチくらいの深皿になみなみと入ったスープ、そして木のジョッキには酒。
私は食べれて、ステーキとパエリアを、お皿の4もしくは5分の1くらいずつだなぁ…。
ハンター飯は眺めて楽しむだけの物だ、と思った。
ウエイトレスのカーチェに小皿を頼み、食べれる分だけ取る。
「リンちゃん、少食ねぇ…体持たないわよ??」
「ハンターさんじゃないんで…こんなに食べれません…」
私のは少なめに盛ってあるらしい。これで少なめかよ! みんなもっしゃもっしゃ食ってるわ…ゲームのあの絵面のように食べてるのは、ゴルーダさんとアリーシャさんだけだが。
モクレンさんは、きちんと切り分けて食べているわりに早い。
シルキーさんも切り分けているが、その切り分けた一つがデカイよ! 口に入れたら中は、満員御礼になるレベルのデカさの切り分けよ…
驚きながらも食べていると、ウエイトレスのカーチェがトテトテと近づいてくる。
「お口に合わなかったですかニャ?」
おわぁ!! めっちゃ悲しそうな顔してる! これはこれでかわいい!!!! …じゃなかった。
他の人に比べてチマチマ食ってるから、カーチェが心配になっているようだね。
「ううん、とっても美味しいです。でも、私は普段、沢山食べる事をしていないので、私に充分な量を取り分けて食べているんです」
ついつい、気持ち的には、子供に話しかけるみたいなタメ口になりそうだけど、カーチェはウエイトレスだ。店員さんには敬意を払わねば!
「そうニャのですかニャ、美味しいならよかったですニャ」
安心したのかニッコリ笑って、カーチェは仕事に戻っていく。
「リンディーはカーチェが好きなのか?」
「あ、ハイ。とっても可愛らしいですね」
思いっきり顔がデレて溶けるんじゃないか、というくらいニヤけているのを自覚している。
「王都に行けば、うちのチームハウスにカーチェいるわよぉ」
シルキーさんがニコニコしながら教えてくれる。
それはルームサービスのあの子だろうか…! もしかしたらメイドさんのようなフリフリの服を着て待っているのかも…あぁ、萌える!!
「リンはもう腹一杯なのか?」
アリーシャさんの問いに頷く。これでも朝・昼食べてない分食べた方だよ!
取り分けてあるので、食べかけじゃない分、失礼度は少し減ってると思いたい。
「いつもより多めには頂きました。ありがとうございます」
あとで、国からお礼金とか経費とかで落ちるよね、じゃなきゃ申し訳なさすぎる。
残った分はゴルーダさんとアリーシャさんで、ペロリと食べ切った。
「さて、俺は一足早く戻って、宿を取り直してくる」
ゴルーダさんは席を立って足早に出て行ってしまった。
「リンちゃんの部屋を取りに行ったのよぉ」
「え?!」
うわぁ、それは申し訳ない気持ちで溢れてしまう!!
「うわ、ごめんなさい、お手間をおかけして…!」
「リンは丁寧なやつだなぁ!」
アリーシャさんは笑いながら背中をバンバン叩く。いや、マジでいてぇ!
「ゴリは世話好き」
モクレンさんが教えてくれる。
宿に戻ると、さっきとは別の部屋へ案内されて、鍵を渡してくれた。
「何から何まですみません」
一同に深々と頭を下げて、感謝の意を伝える。
ありがとうより、すみませんが真っ先に出てしまう。
「っつーか、もっとリンは怒っていいんだぞ? 知らない世界に落とされたんだから、泣いたりとかしたってさぁ…」
アリーシャさんは心配そうに、私を覗き込む。
やけに達観してるように見えてしまったようだが、ある意味達観してる。仕方ないのだ。
目の前の事を受け止めるだけで、精一杯なのもあるし…。
「いえ、流石に27歳にもなって、後先考えず泣いたり怒ったり、わめくとかは流石にできませんよ…」
「「「「は?」」」」
4人の声がハモる。全員いい声だから、中々耳が喜ぶ。
「大人だ、と言っていたが本当に大人だったのか…」
ゴルーダさんがビックリ顔しすぎだよ、ってか他の人もだ。
「ゴリと同い年?!」
「ゴリじゃねぇ」
モクレンさん、この世の終わりみたいな顔しないで下さい。むしろ私が終わりたくなる。
「うちのチーム、ゴリがリーダーで27歳、あたしが22歳、アリーシャが18歳、モクレンが26歳なのよぉ」
「ゴリじゃねぇっつってんだろ!」
だれもゴルーダさんのツッコミに反応しない。
ってか、私もそういうやりとりしていたなぁ…。ゴリじゃねぇよ! って危うく言葉がでかけるんだよぁ。
女性陣が高校・大学の新卒の子の年ってか。色気すげぇな、2人とも。
ペッタン…とまでは言わないが、さまざまな所が平坦な私とは大違いだなぁ。
ってか、野郎ども絶対にいま、女性陣…特に私の膨らんでる箇所みて驚いたよな、なぁ?!
「…大人の面倒見させてごめんなさい…」
表面上の感想はそれしか出てこねぇや…。
「いいのよぉ、何も知らない世界に放られたんだもの。ここでは生まれたてみたいなものよぉ」
やったね、ゼロ才! シルキーさんの優しさが沁みる…。
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