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太陽のこうげき ▶︎全体攻撃


 今日は土砂降りだ。

 太陽の攻撃がない日はひゃっほう! と思うかもしれないけど結局『傘』をさす事には違いない。

 日傘か雨傘かの違いだ。しかも足元はグッシャグシャ。

レインブーツを装備して出勤だ!


 っとと、その前に朝ごはんをコンビニで調達。

 今日はちょっとだけ早く家を出たので、パンの他にヨーグルトも食べる時間ありそうだから、奮発するぞー!


 会社近くのいつものコンビニに入る。

 開いた自動ドアをくぐると落ちた。


 高さはなかったようで50センチくらい下に落ちただけだ。とは言っても、不意に起きた落下に着地など出来るわけもなく、尻餅をつく。

 やだなぁ、服汚れたじゃん、今日雨だよ! って何で落ちるんだよ!!


「……ドコデスカ…」


 目の前の風景は外だ。晴れている。そして横は森だ。視界の先に村が見えるけど知らない。

 道路も舗装されてない。


「そうか、夢だ!」


 手をパンっと叩く。夢なら覚める。

 たまーに夢の中で、これは夢だって気づく時あるよね!


「……もし…お嬢さん? 君は一体…」


 何やら声が聞こえるぞ。中々の低音ボイス。イケボだ! と、振り向くと足が見える。

 イケボは上から聞こえた。視界はそこから自然と上がる。


「っひゃあ?!」


 人間が立っているのだ、そりゃビックリする。

 シャツにベストに皮のズボンを纏ったお兄さん。ゴツい。


「いきなり目の前に現れて降ってきたのだが…」

「はい? 私がですか? コンビニに入って何か落ちましたけど…」


 言葉の通じる目の前の人も私も首を傾げる。まじまじと見られた後コクリと頷かれる。


「そうか…落ち人か」


 おチビとか?! え? え?? そりゃ155センチは、ちょっと小さいけど、ちょっとだけだい! いや、初対面にチビって言わないよ、普通。じゃあなんて言ったの??


「すまない、君を保護しないといけない」


 待て、見知らぬ人に言う言葉じゃないぞ?


「一緒に来てもらう…」

「わ、私子供じゃありません! 大人です! 保護してもらう理由、大人にはありません!」


 とりあえず会話だ、外人顔してるけど言葉が通じてるんだもん、まず会話だ!


「いや、落ち人であるなら大人も子供もなく、保護をせねば…黒髪なのが落ち人の証だ」


 話が通じない! 言葉が通じるのに話が通じてない! ここは逃げるに限る!

 慌てて立ち上がって、お兄さんに背を向けて走り出した。

 森の木々をすり抜けていけば捕まらないだろう。幼少期は田舎育ちな事を感謝! 初めて感謝したけど!!


「ま、待ちなさい!」


 何か追いかけてくるけど、追われる夢って夢占いだと悪いものじゃなかったような気がした。うろ覚えだけど。あれ? うるおぼえ? どっちだっけ。

 ふんいきとふいんき、みたいにちょっとわからない時あるよね。

 とりあえず人攫いから逃げなきゃ、夢だけど!


 10メートルも走らないうちに捕まった。

 お兄さんの腕が私の腹に回ってる。首根っこ掴まれるよりも近づかれてる証拠だ。

 そりゃそうだよね、ゲームばっかりしてる半引きこもりの女が、手足も長けりゃ背も高いゴツい男に、敵うわけないもんね。


「人攫いー!!! だれかー!!!」


 こうなったら助けを呼べばワンチャンあるかもだ!!


「落ち着きなさい! 攫う訳ではなく保護だ!」

「同意してないのは誘拐と一緒ですー! たすけてー!!」


 とりあえず、お兄さんの腕をバシバシ叩くくらいしか抵抗が出来ない。


「話を聞いてくれ、君をとって食おうという訳ではない、君の安全を保証する! 女神ティトゥーヤに誓って!」

「そんな女神しりませーん!! …ん? ティトゥーヤ?」


 何処かで聞いたことあるぞ??

 あ、ゲームに出ていた名ばかりの女神…日本で言う「神様仏様」レベルで、ただ祈られるだけの人…何のゲームだっけ…ごく最近聞いたような…。


「そうだ、女神の誓いは絶対に破らない。だから話を聞いてくれ」

「聞くだけ…聞くだけですよ!」


 記憶ではおぼろげだが、何となく聞いたことある名前に、少し落ち着きを取り戻して、街へ向かって歩く。お兄さんに手を引かれながら。誘導ではなく連行だ。ちくしょう、逃げると思ってんのか、逃げたいけど。


 森の木々を抜けて、街道のような草のない道に出ると、太陽が照りつける。


「日差しがいてぇ!!!!」


 慌ててお兄さんの手を振り解いて、カバンを漁る。

 雨の日だって、折り畳みの日傘を持ち歩いている。雨の後晴れる日だってあるのだ。雨傘では紫外線は防げないのよ!

 紫外線100%遮断する、諭吉がひらりひらりと飛ぶ傘じゃないと大変なのよ! 紫外線99%カットなんてまっっっったく意味ないんだから! 1%の差で値段が10倍とかマジありえんからー!!

 とりあえず折り畳みの日傘をさして、日差しから身を守る。


「何だ、その道具は…」


 折り畳み傘をビックリした目で見つめるお兄さんだが、これは私の現在の生命線なのだ。


「触ったら逃げます。この傘は私の命を繋ぐものです。触らないでください」

「わかった」


 太陽に向けて傘をさす。

 1番日差しを防ぐのは、傘を太陽のある方向に向ける事だ。日陰の面積を最大限に確保する事が大事!!



「あの、あそこに見えてる村? まだつかないんですか…」

「もう少しで着くが…」


 太陽が出ている明るい外を歩いて、だいぶ具合が悪くなってきた。

 日傘をさしているとはいえ、地面が土とはいえ、照り返しは若干あるのだ。アレルギー症状はじわじわ出てくる。

吐きそう…頭もグラグラしてきた。

 さっきから日陰がないんだよ、私の日傘の中しか!!

 森を越えてから見える周りにある木は1メートルくらいしかないんだよ。

ギブミー日陰。


「顔色が良くないが…大丈夫か?」

「紫外線…太陽の光に弱い体質なんです」


 きっと私は、今にも白目を剥くような顔をしてるだろう。

 花粉症の人が、花粉がバッサバッサ飛んでる山の中を好んで歩かないのと同じように、紫外線アレルギーの私は太陽が照りついてる外を歩く事はしたくないのだ………


「お、お嬢さん…しっかり……!!」


 頭が割れるように痛い…気持ち悪い…もうしゃべる気力もない。

 でも意識は地味にあるこの辛さよ…

 一旦暗いところで眠れば、ちょっとは楽になるのよな……

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― 新着の感想 ―
うわ~、ツラそう。 ワタシに、例えるならタバコの煙の中か。…………うん、死ねる。まあ、死ぬ前に原因物質をコロスけど。 太陽はコロス訳にはいかないもんなあ。 「逃げるしかないのか!? 私は何て弱いんだ!…
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