古の獣を倒す ▶︎エンディング
最終話です。
それから半年が経った。
相変わらず、チームメンバーは増えない。
「リンディー、これから俺たちは、古の獣討伐に行ってくる。留守を頼んだぞ」
「はーい」
古の獣討伐クエストは、国からの依頼で断る事が滅多に出来ない。
国からの依頼が来るチームはそうそうないのだ。ゴルーダさんたちは超優秀なハンターだ。試験を頑なに受けない女性陣は金星ハンターのままだが、実力は虹星ハンターさん!
そして、ゴルーダさんとモクレンさんは虹星ハンターの中でもトップクラスだそうだ。
もちろん、ハンターではない私と、銀星ハンターの九石はお留守番。
だが、悔しがる事もない九石。
「留守番でよかったの?」
「無理無理、古なんてぜってぇに無理! この歳で漏らしたくねぇよ!」
そこまで怖いのか、古の獣。
「リンちゃん、行ってくるわねぇ! お土産たくさん持って帰ってくるからぁ!」
何を持って帰ってくる気だ。買ってくる違うんか!
「アマツソラハミの装備は可愛いものだといいな! 待ってろよ、リン!」
アリーシャさん。そろそろ、クールな女に見える装備をください。マジで。
天津空喰は、ケモハンで、2つくらい前のナンバリングで出た古の獣だ。その名の通り、空を食べる。と言われている。
食べるような動作をしたあと、一定時間姿を消すのだ。それが空を食べて、移動するように思われている。
「ミルクプリンよろしく」
モクレンさん、半年経っても飽きないってすげーな。
「「いってらっしゃーい」」
「いってくる。たのんだぞ」
「いっきてまぁす!」
「いってくるー!」
「いってきます」
私と九石は、みんなを見送る。
扉を閉めて、鍵をかけて、雨戸を閉める。
コックのカーチェと、ハウスキーパーのカーチェと、九石と、私。みんなで、テーブルにつく。
「大富豪にゃ!」
「大貧民ニャ!」
カーチェ2匹は、出身が違うようで、トランプゲームで大富豪と大貧民の呼び名が違っていた。
ローカルルールもあるみたいで、それらを交えて遊ぶ。
え? 仕事しろって? そんなもん、上司がいなけりゃ遊ぶに決まってんだろ! ってわけじゃなく、仕事はもう片付いている。
九石は、ゴルーダさんたちが遠征に出る時は狩りに行かず、チームハウスにこもる。暇になってどうしようもない時は、採取クエストに行くみたいだけど。
「リンは顔に出るから、わかりやすいよなぁ」
クツクツと九石は笑う。
「うっさい、大貧民から抜け出すための、女神の一手を待っているんだ!」
「ルルルフも貧民から抜け出したいニャー」
女神様とやらについても、わかってきた。
アイテムボックスにも女神の加護が掛かっていて、ハンター証のドッグタグで各々のアイテムに入れ替わるらしい。
鍛冶屋にある女神の炉で作った装備は、サイズの概念が無いって言ってたしね。ケモハンで起こる不思議現象は、大抵女神で片付く。
そんな世界にきて、だいぶ慣れてきた。親切な人たちのお世話になりながらお世話をして、毎日楽しく過ごせていた。
3週間後、ゴルーダさんたちが帰ってくる。が、ふたり足りない。
「あ、おかえり。…シルキーとモクレンは??」
聞くと、ゴルーダさんは目を伏せて、ちょっとな、と言うだけだった。まさか、まさか?!
「ちょっと、じゃわからない!」
オトナは時に言葉を濁すが、ここでは濁しちゃいけないと思う。ゴルーダさんの後ろで、アリーシャさんが唇を噛んで下を向いている。
「おい、ゴルーダ、何があったんだよ」
「いや、ちょっと…俺からは言ってはいけないんだ…」
九石が聞いても、ゴルーダさんは答えず下を向いたが、ゴルーダさんの正面に私が立って見上げると、目がバッチリ合う。
「言って」
「だ、ダメだ!」
あ、目を逸らしやがった、このゴリ!
こんな問答を1時間ほど繰り返した。
「ただいまぁ!!!!」
「ただいま」
何もなかった風に、ふたりが帰ってくる。
「へ?」
シルキーさんがふわっふわのドレスを差し出してきた。
「はぁい、お・み・や・げ!」
「へ???????」
モクレンさんもシルキーさんとは違うふわっふわのドレスを出してきた。
「お土産」
「は?????」
わけがわからず固まっていると、とうとうアリーシャさんが声を上げた。
「アマツソラハミの服、わたしがリンに渡したかったのにーー!!!」
「カードゲームの敗者にはダメ」
まさか、まさかだよな?
「まさか、服を作りに行ってて、シルキーとモクレンは帰りが遅くなるけど、口止めされていた、とか?」
ゴルーダさんに聞くと、こくりと頷いた。
「ゴリィイィイイ!!! 紛らわしい事してんじゃねぇ!」
「ゴリじゃねぇえぇ!!!」
でも、みんな無事でよかった。心の中で私は号泣したよ、チクショウ!
▶︎▶︎▶︎ゴルーダの独白
その後、リンディーは1ヶ月間、口を聞いてくれなかった。仕事はしてくれたが、個人の小遣い管理は拒否された。
サザラシにも小遣い管理をするな、と厳命していた。
狩りから帰ってきたら、まずみんな揃って、ただいまを言うと約束させられた。
俺の目の前に突如落ちてきた人は、体は弱いが芯は強く心の逞しい女性だった。
狩りは出来なくとも、俺たちの財布を担う、このチームになくてはならない人なのだ。
今日も狩りが終わったら、真っ先にチームハウスへ帰ろう。
そして、いつもの言葉を交わせる幸せを噛み締めよう。
「ただいま!」
「おかえり!」
おしまい。
別で書いている話が進まない時に書いていた物で、勢いで書いたものですが、完結となります。
もっと掘り下げて書けば、色々書けたかもですが、事務員の日常になってしまうので、とりあえずサクッと終わらせておきます。
書けるとしたら、主人公と九石のその後くらいしかありません。
自分の持つ紫外線アレルギーという体質の人が、文明の発達度合いが高くはなさそうな異世界に行ったらどうなるか、という題材と、ゴリと呼ばれる男を出したかったのと、某ライズな狩ゲームを買おうか悩んでた時期だったので、某ワールドな世界風になったものを書いてみたかった、というフワッとしたものでした。あまり世界観は出せてませんが。
なろうのすみっこに埋もれている作品ですが、見つけてくださってありがとうございます。
ご覧頂きありがとうございました!




