「(禁止ワード)」 ▶︎ガチギレ
「ゴルーダさん」
「どうした? リンディー」
疑問が湧いたので、リーダーであるゴルーダさんに訊いてみよう。
「九石の髪が伸びたら、落ち人ってわかってしまうんじゃないでしょうか? 既に、根本黒いですし」
「あ、本当だ」
黒髪が落ち人の証拠。それが、ちまちま生えてきている。2ヶ月近くも染めれてないから、根元が黒いの、だいぶわかるよね。
「ぜんぶ抜きますか?」
「やめろ、ばか!」
「…それは、やめるんだ、やってはいけない」
「たぶん、ダメ」
男性陣から反対の声が上がる。
「国に報告をしたとしても、既にハンターとして活動しているから、国に取られる事はないだろう」
「じゃあ、大丈夫そうねぇ」
九石は、ハンターとして生計を立ててしまっているので、無理矢理、国が保護する必要もないらしい。
「サザラシは、リンディーと同郷と言う事だが、計算ができる人か?」
「ええ、ここでやってる計算くらいなら、全然できますよ、九石でも」
あ、これ、私解雇される?
「え、事務方行けるなら、そっちの方が嬉しいけれど」
九石が食いついてきやがった…!
「ん? サザラシはハンターをしたいのでは?」
「手っ取り早く、メシと寝床を確保するためにやっていただけなんですよ」
あれ、異世界来て、ケモハンっぽい世界でハンターできる、ひゃっほい! してたわけじゃないのか、こいつ
「魔物相手にするの、すげぇ怖かったし。だから、遠距離武器の弓を使っていたんですよ」
期待の新星は、ただのビビりでした。
ごめんなさい、私には魔物を見ることすら怖いです。
「そうだったのか、ならチームの人数が増えたら事務方に回るか?」
ゴルーダさん、男にも気遣いできる。すげぇ
「しばらくはハンターで稼いでおきたいので、人が増えたらで、お願いします」
九石はペコリと頭を下げてお願いした。
「サザラシ、もうチームの一員なのだから、堅苦しい言葉はいらないぞ」
ゴリィイィ!! 私を見ながら言うんじゃねぇ!!
「だね」
モクレンさんも見てる…!
「そうよねぇ、気楽に話しかけてほしいわぁ」
シルキーさん、こっち見ないで…!
「だな! 砕けた感じの方が、嬉しいよ!」
アリーシャさんもこっち見てる。
「あ、了解」
みんなの視線をたどった九石も、こっちを見た。
「お前、丁寧に喋るのやめろって、間接的に言われてるぞ」
「わざわざ、言われなくても察したよ!!」
ゴルーダさんが、九石の肩をポンと叩いた。
「リンディーは、いまだに丁寧な口調で、俺らに壁を作っている。何か対策はないか?」
「私の見えないところで相談してください、そういうのは」
「僕もしりたい」
「あたしもぉ!」
「わたしもだ!」
何で、そんなにみんな私にタメ口聞いてもらいたがるんだ…訳がわからないや…
「あー、それは、みんながあいつにとって、恩人だからだと思う。あいつの体質は聞いてる?」
「あぁ、太陽の光に弱いのだろう?」
九石は既にタメってるよ、こいつ人付き合い得意だもんなぁ。
「それを、理解した上で保護したんだろ? それ、あいつにはとっても嬉しいことで、ありがたいことなんだよ。向こうにいた時から、太陽に弱い体質を、理解してもらえること少なくて、苦労してたから」
そうなのです。紫外線アレルギーは花粉症よりマイナーなので、周りの人が理解してくれないのです。
高校の後輩に、「先輩ってオタクなのに美白してるんですかぁ?」と、プークスクスさてれ、〆たのはいい思い出です。
あと、オッサン世代はアレルギーは気合いで治るって思ってる奴が幾人かいて、説教かましたこともあります。
そいつら、花粉症だったからね。
それなのに、ここの人らはきちんと信じてくれて、気にかけてくれたんだ。アレルギーなんて理解のなさそうな世界観なのに。実際、アレルギーというものは認知されてないようだったし。
「なら、尚更! 親近感持って接してほしいわぁ!」
シルキーさんに抱きつかれる。大福(比喩)が顔に当たってやわらけぇけど、苦しい。
「わか、わかりました、そのうち! 善処しますから!」
ぷはっと、大福(比喩)から顔を出して返事をしたが、シルキーさんは、頬を膨らませる。かわいい。
「ゴルーダ」
九石がゴルーダさんに何やら耳打ちをしてる。
「リンディー…」
何やら、言い淀んでるぞ??
「……チビ」
あ?
「あんだってぇ?! 誰がチビだ!!」
あ。
「これが、素のアイツです」
「九石ぃいぃー!!!! てめぇ!! あ、いや、あの、これはっ」
慌てて、取り繕うとしても遅いんだろうな。みんなの目がそう言ってる。
「わ、わかったよ、敬語やめるから!」
みんなの視線を、いつまでも一纏めにしていたくない。私は観念するしかなかった…。
「てめぇ、おぼえとけよ」
「はん、ちびっ子に何ができるんだぁ?」
九石を睨みつけて、ギリギリと歯を鳴らしそうな顔をしながら、私は呪詛を吐く。
が、鼻で笑われた。
「今日の晩ごはん、コックのカーチェに、ピーマン尽くしにしてもらうように、お願いしてやる」
チームメンバーということは、九石はここで暮らすのだ。
ハウスキーパーのカーチェとコックのカーチェは、私の味方だ!ごはんがどうなるか、思い知らせてやる!
「ちょ、まじでそれはやめろ!!」
九石は、小さい頃からピーマンが苦手なのだ。アレルギーではなく、ただ、単に味が苦手。
なので、嫌がらせはピーマンが効果テキメン!
「ピーマン、沢山買ってくれば、いいのニャ?」
ハウスキーパーのカーチェ、ルルルフが気を利かせてくれた。
「お願いします! これ、ワイロです!」
「目の前で、ワイロとか言うんじゃねぇ!!」
九石のツッコミは無視して、ルルルフの手に200ゼニゼニ握らせる。
「ルルルフにも、敬語やめてほしいニャ」
「わかった!」
「沢山買ってくるニャ!」
「おねがいね!」
とてとて、と可愛らしく歩く後ろ姿を見送った。はぁ、かわいい。
「え、リンを怒らせたら、メシで嫌がらせされるのか?」
アリーシャさんが、ちょっと引いてる。いや、ドン引きしてる。
「みんなの苦手な食べ物、把握してるから!」
だから、チビって言うなよ!
「僕、嫌いな物無い」
「モクレンは、ミルクプリンが好物なの、しってるけど?」
「!!!!」
モクレンさんの肩が大きく揺れる。
そして、その表情には、やや絶望が浮かんでいる。そんなに好きか!
「みんな、リンディーにチビと…」
「チビって言うなよ、ゴリィイイ!!!」
「ゴリじゃねぇ!!」
あ、ダメだ。一度、素を曝け出すと、とまらない。




