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19/26

残しますか? ▶︎解約します


 翌日、シルキーさんはハンターの集会所にて、同名のシルキーさんをスカウトしてきた。と言っても、まずお話をするそうで、チームハウスに連れてきたようだ。

 応接間で詳しい説明をゴルーダさんから行うらしい。


 私は紅茶を淹れて、応接室へ持っていく。


「失礼します」

「あぁ、リンディー。すまないな」


 スカウトシルキーさんの前に紅茶を置いた後、ゴルーダさんの前、シルキーさんの前に紅茶を置いて、私の出番は終わりだ。

 と、思ったら、スカウトシルキーさんから手首を掴まれる。


「へぁ?! なんですか?!」


 変な声出た!


「おい、オレだ!」


 スカウトシルキーさんが、フードを取って、その下に巻いてあるターバンを取ると、そこには、なんということでしょう! 前職場のマドンナ…じゃねぇ、イケメンが出てきたではありませんか。


九石(さざらし)!?」

「やっぱり、――――か! ん? あれ?」

「おい、マジか。やっぱり、私の名前、言えなくなってるのか」


 私は、名前を奪われた落ち人だ。

 私の名前を知ってる人がいても、言えなかった。奪われた実感がわく。


「リンディー、一体なにが?」


 ゴルーダさんが訊いてくる。そりゃそうだよね。


「ゴルーダさん、こいつ落ち人です! 私の知り合いです」

「いや、彼は髪が茶色だろう?」


 は! そうか! こいつは、少しだけ髪を染めている。だから落ち人認定されなかったんだ!


「こいつ、毛を染めていたので、落ち人認定されなかったんですよ」

「そんなことがあるのか…」


 とりあえず、いろいろ把握したい。


「とりあえず、九石(さざらし)、あんた一体いつ来たの?」

「あー、――――…お前が消えた7日後だよ」


 名前が言えないので、お前になった。これは仕方ない。


「私は、どういう扱いに?」

「無断欠勤からの行方不明。電話も通じないし、ゲームでメッセ送っても反応がないから、即警察に連絡した。着信は無視しても、ゲームメッセを返信してこないなんて、何かあったに違いないって、先輩も言ってたしな」


 仲間内での安定した、私への信頼感()よ…


「警察が防犯カメラを確認したら、会社付近のコンビニに入るところで、いきなり消えたらしい」


 それにしても、即、動いてくれたのか…放置されてなくて、ちょっと嬉しいなぁ。ありがとう。


「マジか…父ちゃん、母ちゃん、心配してるかなぁ…色々ごめん…」

「あぁ、お前の親父さんとお袋さんは、行方不明になったって聞いて、家賃かかるからって、アパートの解約をサッとして、部屋にあった家具は、実家の倉に入れておくって言ってた。涙ひとつ流さずに事務的に片付けてたぞ」

「サバサバすぎじゃね?! 父ちゃんと母ちゃん! らしいっちゃ、らしいけどさっ!」


 とりあえず、私の日本での扱いはわかった。

 神隠しにあった的な、行方不明になっているそうだ。


「んで、さぁ。その人ら、やっぱり?」


 九石(さざらし)が、ゴルーダさんとシルキーさんを見て、私に訊ねる。


「うん、ゴルーダさんと、シルキーさん」

「なんか、似てるって思ってたけど」

「でも、ちゃんと人格があるし、AIでもない、人間だよ」

「ってことは、やっぱりここは…」

「ケモハンの世界だよ。ピッピ先生もいるし、ヤマハミもいた。素材や装備しか見てないけど」


 私は九石(さざらし)に、現状や私が把握している事を伝える。ゴルーダさんたちは、黙って見守ってくれている。


「落ち人って言われてるよ、私らのような異世界転移した人たちは。んで、何かを奪われてしまうらしいけど、あんたは何か無くなった…?」

「あぁ、電子機器がなくなった」

「は?」

「スマホと、スマートウォッチと、ゲーム機だけなくなってた」


 その、3種を一気に無くす事はあり得ないので、おそらく奪われたものだろう。


「ふっっっっざけんなよ! 私は名前が奪われたのに、なんでお前は電子機器なんだよ!! こっちで生活するのにいらねーもんじゃんか!!!」


 はい、八つ当たりです。


「それが本当なら、ラッキーと思うしかないけど。とりあえず、生きててよかったな、お互い。んで、お前もハンターしてるの?」

「はぁ? できるわけないじゃん! 紫外線アレルギーもバッチリ抱えてんだよ! チクショウ!! 生きててよかったは、同意する!」


 普段とは全然違う私の言葉遣いに、ゴルーダさんとシルキーさんは顔を見合わせている。


「うあ、おつ……」

「解せぬ…!」


 とりあえず、日本での私の扱いは把握したが、戻れないからもう気にしてない。

 父ちゃん、母ちゃんは割と心配してなさそうだし、大丈夫だな! 家賃だけが気がかりだったから、解決していてよかった。


「すみません、ゴルーダさん。とりあえず、私の事は把握できたので、次、説明します」

「あ、ああ。大丈夫か? 故郷の事を思い出して、つらいなら俺らは待つぞ」


 っかぁー! 何ですか、このイケメン紳士! いつも、いつでも気遣いの塊、ゴルーダさん! ついて行きます! 解雇しないでください。

 じゃなくて、だ。私は大丈夫なので、話を続けよう。


「平気ですよ。んで先程申し上げましたが、この、偽シルキーは私の知り合いで、落ち人です」

「あぁ、そのようだな」

「私と違って、ハンターさんになれるくらい、丈夫で粗雑な奴です」

「粗雑かは定かではないが、リンディーの故郷の人で、丈夫な者もいるのか」

「むしろ、私は故郷でも割とへっぽこです。彼はごく一般的かつ健康な人間です」


 ハンターできるくらいだから、九石(さざらし)は割と丈夫なんだろうな。


「そうか、落ち人の事も含めて話をしよう」

「お願いします。私は外しますね。お時間取らせてしまって申し訳ありませんでした」

「気にするな、リンディーに必要な時間だった」

「ありがとうございます。では」


「え、ちょ、――――!」


 ゴルーダさんと軽く会話をして、私は九石(さざらし)を残して退出。

 もともと、ゴルーダさんたちとの面接だし、邪魔者は立ち去るよ!


 ドアを開けると、ムスッとしたモクレンさんが仁王立ちしてた。

 めんどくせぇ予感しかしない。

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― 新着の感想 ―
まさかゲームをしている人間はそのうち転移させられるの? いや、まだたまたまの可能性はある……!?
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