お仕事 ▶︎猫吸い
それから、2ヶ月が経過。
ゴルーダさんたちのチームハウスでお世話になりながら、私は事務仕事に精を出す。
仕事をするのは、午前と午後合わせて5時間ほど。ホワイト! 残業は滅多に発生しない。
みるみるうちに、ゴルーダさんのチームハウスの資金は潤っていった。
ゴルーダさんもクエストに参加する分、稼ぎがふえるし、私がちゃんと計算するから、お金の行方不明は起こらない。だが、何故か個人のお金の管理もしている。解せぬ。
みんなお小遣い制だ。
「そろそろ、自分のお金くらい管理してくださいよ」
「えー? そうしたら、ぜんぶ使っちゃうわぁ」
「私がやったみたいに、1ヶ月に使える額を決めれば、使いすぎる事ないですよ?」
「むりよぉ、手元にあったら使うものぉ」
シルキーさん、お金の管理がスーパー下手くそ。
なので、1週間に1度のお小遣い日を設けて、渡す。そして毎日のように、お小遣い帳をつけさせる。
小学生の時にやったなぁ、これ。
「リンディー、今日のクエスト分だ!」
ゴルーダさんが皮袋にどっさり入ったお金を渡してくる。
「お疲れ様でした。回復薬減ってきたので、補充しておきますね」
「あぁ、あと罠道具も頼む」
「はーい」
と、言っても外に出ないぞ、私は! カーチェにお使いをお願いする。
「ほかに、お買い物はニャいですか?」
「特に不足分は、ありませんね。あ、これでルルルフのおやつでも買ってください」
ルルルフは、このチームのハウスキーパーをしてくれているカーチェだ。アメショー柄でカワイイ。
そんなルルルフにお小遣いをあげる。
もともと、チームのカーチェとして契約しているが、人間と違って給料はそんなにない。
ご飯と寝床が給料で、お仕事をする健気な子!!
なので、こうやって時折お小遣いをあげると、すごく喜ぶ。
カーチェのおやつは50ゼニゼニで売っているので、お使い代とあわせて100ゼニゼニ渡している。
「リンディーは優しいニャー」
「私は、昼間外に出られないので、私の代わりをしてくれる、ルルルフにありがとうの気持ちです」
ルルルフは、私より前からこのチームに所属してるので、先輩としての敬意はちゃんと、はらいます。
呼び捨てにして、と言われたので、さん付けはしていない。
時折、猫吸いさせてもらってるけど。
「リーン!! お小遣いあといくら余ってる?!」
「今月分はあと2500ゼニゼニですよ」
「じゃあ、それには手をつけない!」
アリーシャさんはお小遣いの中から貯蓄を行うようにしている。やりくりの練習らしい。
一応、クエストでわけた分、たんまりあるけど、毎月決まったお金をお小遣いとして、計画的に使うように頑張っている。
「無理はしないでくださいね。我慢して怪我したりすると本末転倒ですから」
「あぁ、わかってる」
そう言って、アリーシャさんはイカ焼きを差し入れてくれる。
お小遣いを無駄遣いしてる、と注意すると、これは必要経費と言われてしまう。
2人で並んで座って、仲良くイカ焼きを頬張る。
「あ、おかえりなさい。モクレンさん」
「…………」
「おかえり、モクレン」
「ただいま」
モクレンさんが、敬語だと口をきいてくれなくなった。めんどくせぇええぇ!!!!!
ハッキリ言って、敬語がクセになりつつあるんだよぉおお!!
心の中じゃ荒ぶった口調だけど、口からは敬語がツルッとでるんだよ! 無意識で出た言葉で無視されるのは悲しいんだぞ!!!
その様子を見たゴルーダさん。めっちゃ、こっち見てる。
「そうか、そうやってやれば、リンディーはもっと砕けた口調になってくれるのか」
拳を手のひらにポンと落とすな!
「ゴリはだめ」
「ゴリじゃねぇ」
相変わらず、言葉は少なめだ。
「リン、あれほしい」
「あー、はいはい。持ってくるね」
モクレンさんは、私の作るミルクプリンがお気に入り。カップサイズじゃなくてボウルサイズだが!
コックさんも雇っているのだが、何故か私の作るミルクプリンを食べたがる。
安易にお菓子作りなんて、するもんじゃないなぁ。
「ただいまぁ! 聞いて聞いて!」
騒がしく帰ってくるシルキーさん。
いつもの事なので誰も気に留めない。勝手に喋り出してくれるからね。
「期待の新星なハンターがいて、王都を拠点にしてるらしいのよぉ! その人の名前、シルキーって言うんだって! 親近感感じちゃうわぁ!」
そのハンターさんは、ソロ活動をしている遠距離型のひとらしく、いろんなチームがスカウトをかけているが、断られているらしい。
「同じ名前のよしみで、お声がけしてみるわぁ!」
ソロ専なら断られそうだよね。
「リンディー、もしそいつがチームに入っても大丈夫そうか?」
人が増える事は、私の仕事が増えると言う事。
「今の倍の人数いても、平気ですよ?」
きちんと、チームで使うお金の収支はつけてある。
買い物をしたら、日付、買ったもの、個数、値段を全部書いてある。
月に一度、見返して、省ける無駄を手間を見直す。それが、私の仕事だ。
住み込みで、ご飯も出て、服も勝手に増えていく。
衣食住が手厚い職場で、ハンターギルドの一般事務より給金が高いんですよ、奥さん!!
ゴルーダさんたち、トップクラスのハンターチームなんですって…そりゃ稼ぐよね。
いい人たちに拾ってもらえたと、しみじみ思う。
「モクレン! 武器はボックスにしまう!」
「アリーシャさん、まだ明るいので、壊れた武器は鍛冶屋へ持って行ってください!」
散らかしが無ければ、完璧だけど。




