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出来る事 ▶︎さんすう


 お風呂に入れられてサッパリしたところで、お馴染みルードカプチェ装備に身を包む。


 朝ごはんもこれまた絶品! 昨日より具合が良いので美味しさがよりわかる。

 とはいえ、私が食べるのは、私の1人前だ。周りの人がとても心配そうに見ている。解せぬ。


「リンー、もっと食わなきゃー」


 アリーシャさんがいうけれども、私は反論する。


「病み上がりだし、ハンターさんじゃない私には、このくらいで十分な量ですってば!」


 そうすると、ハンターじゃないというところで、周りは安心するのか、こちらから視線を外す。

 食事が終わり部屋に戻ると、本日もクエストとお留守番で別れるようで言い争いが始まる、かと思いきや、モクレンさんがクエストに名乗り出た。


「…!」


 何かを察したシルキーさんもクエストに名乗り出る。

ゴルーダさんとアリーシャさんでジャンケンをして勝った方がお留守番らしい。負けの人だろ、そこは!

 かれこれあいこが20回は続いてる。息ピッタリだね!

 それから10回以上のあいこを経て、ゴルーダさんがお留守番に決まった。




▶︎▶︎▶︎クエスト組


「モクレンもシルも、クエストに名乗り出て、どうしたんだぁ?」


 アリーシャはリンディーと居たかったので、クエスト組になった事に口を尖らせている。


「ウミネコの翅」

「今日は沢山取れそうだからねぇ!」

「うん?」


 短く素材名を答えるモクレンに、その素材を欲しがっているシルキーの言葉にアリーシャは首を傾げる。

 ウミネコの翅は素材だ。透明な翅で言ってみればレア素材に近い。この時期はウミネコの羽の生え変わりで、透明な物がよく落ちる。


「先日鍛冶服飾ギルドが出した新作装備。性能はゴミだけど見た目が可愛いのよぉ!」

「ま、まさか!!」

「そうよぉ! 作ってリンちゃんにプレゼントよぉ!!」

「こっちにきて良かったぁあぁああぁ!!!」

「満月の翌日狙い目」


 目を輝かせ、服のかわいさに想いを馳せるシルキー。そして、その可愛い服を作れるという状況にガッツポーズをするアリーシャ。

 獣を狩る時以上に真剣な眼差しのモクレン。

 3人は、ウミネコの翅が落ちていそうなエリアのクエストを受注して、ひたすら素材を集めた。




▶︎▶︎▶︎お留守番組


 ゴルーダさんは武器の手入れをしている。

 ほほう、弓使いか…。うん? 槍斧も取り出した…。…全部の武器手入れしてるよ…。


「うん? リンディー、珍しいか?」

「あ、はい。私のいた所では魔物は出ないので、武器を持つ人は殆どいませんから」


 私のいた世界の事を少し話すと、狩りによる生計を建てる手段がない世界、ということに驚いていた。


「リンディーは計算ができる、と」

「えぇ、それなりには」

「うちのチームメンバーになってくれまいか? 勿論給金は出すし、魔物と対峙させる事はないし、外に出ろとも言わん!」

「はい?」


 何故、私はスカウトを受けているのだろうか。


「うちのメンバーは計算が苦手なのが多くてな…。チームの資金をうまく回せないんだ…」

「はぁ…」

「何とか俺が時間を見つけては行っているが、俺もそこまで計算が得意ではない…」


 多分、複式の帳簿とかまでは求められないなら、出来そうだけど…。


「チームの活動報告時期が来ると、俺ひとり、計算地獄なんだ…」

「ご愁傷様です…」


 どうせ落ち人報告したら、イラネされるんだろうし、それなら働き口ある方がいっか。就職先ゲット!


「ところでチームメンバーって、ゴルーダさんたちのみですか?」

「あぁ、そうだ。これ以上増えると計算煉獄になるから、絶対に入れるものか、とチームに入りたい者を断っている状態だ」


 地獄から煉獄にパワーアップしてるよ…。

 ゲームだとチームは人数上限16人までだった。クエストは4人までだけど。そこらへんのシステムではなく、管理問題で人数を絞っていたのか…。

 ちなみに、クエストも人数の上限下限はないらしい。



 昼近くになる。ゴルーダさんの腹の虫が盛大に鳴る。


「すまない、昼食にしていいか?」

「あ、はい」


 流石に盛大な音を聞いて、昼食はまだ、いいですとは言えないよ。

 お昼ご飯も相変わらず絶品。

 "私の中での"1人前の、ガーリックトマトパスタとスープを頂いて、お腹は満たされる。

 通常の1人前として出されたパスタは、4分の3人前ほど残るが、ゴルーダさんが食べてくれる。


 ご飯の後は部屋に戻って、簡単な文字と数字を教えてもらう。数字の形はよく使っていたアラビア数字に酷似しているので読む事はできそうだし、書けそうだ!


 言葉が通じてるから、日本語かと思ったりもしたが、確かゲームでは、ケモハン語っていう独自の言語があったんだっけか…人によってはバケハン語とも呼ばれていた、私はケモハン派だ。開発スタッフでもバケ派とケモ派がいた。


 ゲームでは、私は音声はケモハン語にしていたが、理解出来たことなどなかった。字幕で表示される日本語で、ゲーム進行を読むだけだ。

 日本語ボイスにすると、一部喧しい奴がいたので、ボイスは言葉が認識できないケモハン語にしていました。


 文字を見ていたら何故かスッと頭に入ってくる。

 なんで?? 書くのはまだ慣れないけど書けなくもない。なんで???


「リンディーは頭がいいな!」

「いやぁ、私もちょっと、よくわからない状態で…」


 何となく文字が書けるようになると、ゴルーダさんが頭をワシャワシャなでて褒めてくれる。同い年だってば!!!


「計算出来れば、お仕事にあんまり困らない感じですかね?」

「チームのサポーターなら余裕でやって行けると思うぞ。というか、うちのサポーターになって欲しい」

「どんだけ計算嫌いなんですか…」

「収支報告の書類を作るより、3日3晩寝ずに、クエストこなす方が良いと思えるくらいには嫌いだ」

「めちゃくちゃ嫌いなんですね…」


 あたりの空が、茜色から紫紺へ変わろうという時に、シルキーさん、アリーシャさん、モクレンさんが帰ってきた。


「ただいまぁ!」

「戻ったよ!」

「ただいま」

「おかえり」

「おかえりなさい」


 全員集合だ。なんかシルキーさんとアリーシャさんがニコニコというよりニマニマしているぞ???


「聞いてくれ! リンディーは計算が出来る! 俺よりも!!」

「何ですってぇ?!」

「マジで?!」

「え」


 帰ってきた人たちよりも我先にと、ゴルーダさんが口を開く。そして驚かれた。

 それはどういう方向のリアクションだ? 私のすごさに驚いているものか? それとも私は頭までへっぽこに思われていたものか?!

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