強さ ▶︎一般人以下
とは言ったものの、落ち人の保護をしている以上、誰が1人は残るべきとゴルーダさんに言われてしまった。
誰かしらは残るようだ。
またプレゼン大会が始まる。割とうるさい。
「1番静かなモクレンさんで」(ガサガサ声)
一気に静まったし鎮まった。ガサガサ声でもやっぱ聞こえてるじゃんか!!
大きな声を出していた自覚があるのか、バツの悪そうなお顔をされている3人。肩を落として部屋から出て行った。
モクレンさんは毛布を引き上げて、深くかぶせてくれた。
「おやすみ」
「はい、おやすみなさい」(ガサガサ声)
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すやぁ
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目が覚めると辺りはすっかり夜のようだ。
「具合は?」
モクレンさんが、頬や額に触れて確かめてくる。
「どどがいだいでどぅ」(喉が痛いです)
既にマトモな声すら出ない程、喉が悪化していた。ガサガサ声のプロレスラーさんみたいだ。これは字幕が必要なレベルだ、無いけど!!
「くすり飲んで」
緑色の瓶を差し出された…これはもしかして薬草からつくる回復の薬では?!
ハチミツを加えるとグレードが上がるあいつでは!!!
受け取って飲むととメチャクチャ苦い。飲み終わった後にガッツポーズなんて出来る飲み物じゃ無いよ!!!
そして、ゲームのような回復をするわけじゃない!!!
何て言うか…苦い漢方はこれだ! みたいな味。
「次、こっち」
今度は水色の瓶。それを飲んだ途端、私の意識は途切れた。
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「ん…?」
次に目が覚めると、部屋はやや明るくなっていた。ランプではなく朝日が昇っている明るさだ。
いかん、思いっきりベッドを占領したっ!! ん? 誰か横にいる。って、ゴルーダさん?! 反対側にモクレンさん…?!!
川の字で寝てる…私は真ん中、こどもかっ!!
「おはよう」
モクレンさんが撫でてくる。
「おはようございます、わたしをソファに放ってくれてよかったのに…」
「リンはこっち。昨日言った」
「決定項だったんか…」
「お、声良くなったな、リンディー。おはよう」
ゴルーダさんも撫でてくる。
「オハヨウゴザイマス」
「リンちゃん治ったわねぇ!」
シルキーさんが布団を剥いで、ものすごい速さで私を抱っこする。こどもかっ!!
「ご迷惑をお掛けしまして、申し訳ございません」
「迷惑なんてかかってないわよぉ! 大丈夫? どこか痛いところはない?」
「強いて言うなら、シルキーさんの腕が、めちゃくちゃ締め付けてきて痛いぐらいです」
「あっ! ごめんね!」
アリーシャさんものそりと起き上がって、挨拶をしてくれたので挨拶を返す。
シルキーさんの腕が緩むや否や、モクレンさんが凄い勢いで剥いだ。
「起きててもリン殺す気?」
「失礼ねぇ! そんな馬鹿力じゃないわよぉ!」
「普通の力でリンは死ぬ」
そんなやり取りを聞いてビクッとした。
「もしかして、皆さんから見たら、私はとてもとても貧弱なんですか?」
ゴルーダさんを見ると、伏し目がちに頷かれた。
「下手したら本当の子供より弱いかもしれん…」
「人を偽物の子供のように言わないでください。正真正銘オトナです!」
「リンディー、俺の手を思いっきり握ってみてくれ」
ゴルーダさんの差し出して来た手を、子供扱いの恨みをこめて握った。
「………………」
「……………………」
「思いっきりと言ったのだが…気を遣わなくていいんだぞ?」
「子供扱いの恨みを、込めに込めて握ってますが?」
「……同じ力でみんなの手を握ってみてくれ」
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「リン、大丈夫?」
「な、なんで誰も痛がらないんだ…解せぬ…!」
顔が真っ赤になる程力を込めたけど、誰一人痛くないと言う。
肩で息をしてる私を哀れ…じゃない、気遣うモクレンさんの瞳がなんだか物悲しそうな目をしてるのは、きっと気のせい。
「ハンターさんと一般人の差ですよ、これは!」
「かもしれんが…」
「それにしても…ねぇ?」
「リンはパルパイヤの実すら割れないんじゃないか?」
「木みたいに堅い殻の実ですよね…無理ですよ」
ケモハンで初期の頃にある納品クエストで、依頼文には"木のように堅い殻だけど、斧で割れば中から絶品なジュースが出てくるからどうしても飲みたいんだ!"って書いてあった記憶がある。
「斧で割るものじゃないんですか?」
「リン、斧使える?」
「無理です」
ちょ、モクレンさんの目がなんだか生温かい。
「落ち人を保護しろ、と世界中で言われてる理由がわかったな…」
「そうねぇ」
「だな、すぐ死んじゃいそうだ」
「守るから」
どうやらガチで私は貧弱のようだ…。
「流石に転んだくらいで、死にはしませんからね!」
「「「「え、本当?」」」」
疑いの眼差し×4が突き刺さる。
「リンディーは病み上がりだから、今日も大人しくしていてくれ」
「言われなくとも、外に出なくて済むなら、そうします」
「えぇ!? 一緒にお買い物に行きたかったわぁ…」
しょぼくれるシルキーさん、かわいい。けど病み上がりとして気遣ってもらえるので、なんだか申し訳ない。
「んじゃ、リンの服いろいろ買ってこよう!」
「そうね、ここは可愛い服いっぱいだものねぇ!」
「その前に飯にするぞ」
テーブルの上にあったテイクアウト品は、私が寝ている間に、誰かの腹に入ったらしい。
男2人は、女性陣の着替えのために部屋を出て行った。
イケメンに川の字で挟まれて寝ていても、赤面すらしない達観ぶりよ…
※こんな主人公なので、恋愛ジャンルに出来なかった…




