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7話 買い物

「お疲れさん。どうだった、うちの副支部長との話は?サクラの今後の話とかしてたんだろ?」

 待合室に戻るとアランとクロエが俺を待っていてくれた。

「はい、私はスペラルーチェ学園に通う事になりました。お二人のお陰で私にも新しい未来が出来ました。本当にありがとうございました。」

 そうだ、この二人がいなければ俺はもうこの世にいなかったんだろうな。そう思うと感謝してもしきれなかった。


「よしてよ。私達も嬉しかったんだよ?助けたのがサクラちゃんで。まだまだ遊撃隊じゃ下位の私達だし、依頼はこなせて当然。失敗したら責められるって事も意外とあるの。だからね、素直にお礼を言ってくれるサクラちゃんみたいな子。私は好きよ?」

「へっ!?」

 カァっと顔が熱くなる。クロエは俺が10歳位な上に女同士だと思っているだろうから、簡単に好きと言ってくれたが、実際は大学生な上に男だ。

 男女で言う時に使うそういった意味ではなく、友情とかで言う好きだとわかってはいる。そうわかってはいるんだが、私も好きとは、羞恥心から簡単に言い返せなかった。


「おい、クロエ。あまりサクラをからかうのは止めとけよ。サクラの顔、真っ赤になってるぞ。」

「別にからかってないから問題ないわ。サクラちゃんに私の本心を伝えただけだからね。」

 赤らめた顔を隠しながらも、こうやって二人を見ているとふと気がついた。俺、二人のうちどっちとよく話しているか考えると、クロエの方がよく話している気がする。クロエが積極的な子というのもあるだろうが、男の頃はこうやって女と話す機会はほとんどなかった。

 でも、俺が女の子になったら、やっぱり一応女同士で話す事が多くなるのか。

 その事実もまた、新たに俺に女となった事を実感させる一つの要因となった。


「副支部長からも聞いていると思うけど、俺達が学園まで送るよ。俺達も、サクラがまた魔物に襲われたら嫌だしな。よし、じゃあ早速行くか?」

「はい、お願いします。」

 アランにそう言われ、俺達は遊撃隊支部を後にした。


「ここ、何処ですか?」

「え、商店街だけどどうしたの?」

 少し歩いていると、何故か俺は商店街にいた。

「え、あの、スペラルーチェ学園に向かっていたのでは?」

「何言ってるの?そんな薄手のワンピース一枚だけで学園に行くつもり?それ以外にも準備とかしていかなきゃ駄目よ。」

「ああ、確かにそうですね。うっかりしてました……」

 いくら小学校的な所だとしても、何の準備もせずに行くのは流石に駄目だって少し考えれば分かることなのに。

 実際、俺が小学校へ行ったときには、両親が準備してくれていたから、小学校へ行くのに全部準備するというその感覚が頭になかったからか……


「いや、その歳でこんなにも大きな転機があるなんて中々無いからな。戸惑っても仕方ないさ。でも、サクラもしっかりしてそうに見えて、こういった所もあるんだな。」

「そうそう、それにこんな事にならない様にする為に私達がいる訳だからね。」

「うぅ、ありがとうございます……」

 これは、さっきとは全く別の意味で恥ずかしいな…


 その後はノートや筆記用具等座学で必要になるであろうものの他に、寮生活をして行く為の日常生活用具を購入した。

 その後、俺は最初クロエに突っ込みを入れられた服を買いに行く事になった。

 確かにこんな服じゃ、なんというか心もとない。もっとしっかりした服が欲しいところだ。正直、この服の肌触りは割と好きだが。


 そう思いながら、商店街では中々大きい店である服屋に入る。店内には老若男女ありとあらゆる人向けであろう大量の服が並んでいた。

 その中から、昔着てた時に気に入ってた服に近そうな、動きやすさに優れている服はないかと思いながら、店内を見て回っていると、クロエに呼び止められた。


「あれ、サクラちゃん?そっちは男の人用の服のコーナーよ?サクラちゃんにはもっと可愛らしい服の方が似合うと思うわ!」

「いえ、私はそれより動きやすい服の方が……」

「そんな服は、女の子用の方にもいっぱいあるって!そんな恥ずかしがらなくても、サクラちゃんは可愛いんだから大丈夫よ!」

「でも……」

 俺がそこまで行きたくないのは、女装したくないからというのはある。だが、それだけじゃない。最悪結局俺の体がこの体な以上、女装からは逃げられないだろう。


 でも、そこまで言われても行きたくない理由はただ一つ。女性用下着コーナーである。あの場所は、何があろうとも近づいてはならない禁断の場所だ。

 昔、自分の欲しい服を探して服屋の中を動き回っていたら、偶然女性用下着コーナーに出てしまった事があった。当然直ぐに撤退した。

 それでも、あの時そこら辺りにいた女性から浴びせられた、軽蔑仕切ったような氷の様に冷たい視線。あれ以来、俺はもう彼処には絶対に近寄ってはいけない場所であると、俺の精神にしっかりと刻み込まれている。


 なのに……どうしてこうなったんだ……

「良いから早く来て!この服絶対サクラちゃんに似合うと思うのよ!」

 そう言われて、クロエに腕を引かれて強制的に連れていかされた。最初の最初は抵抗したが、すぐに今の俺の体じゃクロエの力にすら全く敵いそうにないという事がわかったのでもう抵抗するのも諦めた。

 もう、何でも好きにしてくれ……

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