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6話 孤児

「まず、君に何があったのかは私にも正確には分からないんだ。まず最初に君の名前から君の事を調べた。が、そこからは君の両親の事は何もわからなかった。悪いねぇ。でも、一つはっきりしてる事もある。」

「それは?」

 何を言われるのかと身構えながらも俺は、彼女に話の続きを促した。


「君は、事実上、孤児として生きていかなければいけない。君の言った事と遊撃隊が持つ情報を合わせても君の親の事は全く分からなかった。普通なら君には、孤児院に行ってもらう事になる」

「……。」

 そうか…俺にはこの世界に帰る家なんてどこにもないんだ。今までは落ち着く暇もなくて、気にも留めていなかったが、改めてそれが分かるとどこかそこはかとなく寂しくなってくる。

 父さんも母さんも元気かな。この世界に来て一日もまだ経過していないのに、もう会えないと分かると寂しくなってきて、目頭が熱くなってきた。

 この体になって涙腺が緩んでいるんだろうか。少し目が滲んだ。

 いつになるかは分からないけど、帰るんだ、必ず。何も言わずに、それも死んでもいないのに親と永遠の別れは、それこそ死んでも嫌だ。


「気を落とす気持ちは分かる。でも、君はただの孤児と言う訳じゃない。君には孤児院に行く以外にも選択肢がある。」

「それは、何ですか?」

「学園への転入さ。スペラルーチェ学園への転手続きが誰かの手によって既に終了している。でも、悔しいが遊撃隊では、それが誰の手によるものかは分からなかったがな。君は孤児院で暮らすか、スペラルーチェ学園へ通ってそこで寮生活を送るか、どちらかの未来を選ぶ事は出来るさ。いきなり決断を求めるのは酷かもしれない。けど、決めなければ君の人生はここで終わる。辛いだろうが、君自身で決めてくれ。」


 おそらく既に転入手続きを済ませた事になっているのは、庭園で見たあの人が何とかしたんだろう。他の人が、こんな謎の少女を学校に入れる理由が全くないし、そもそもこの世界の人は俺の事を極一部を除いて誰も知らないだろう。

 それにこの決断は簡単に出来る。スペラルーチェ学園への編入はもう既に俺のプラン通りで下手な手続きをする必要も無い事が分かっただけむしろ幸運だったと言えるまである。

 俺は涙を拭い、こう答えた。


「でしたら、私はスペラルーチェ学園に行きます。孤児院に行くより、今後私が生きていく上で必要な事をより多く得られそうですから。」

「なるほどね。それが君の決断ならアタシからは何も言う事はないよ。と言おうと思ってたんだけどね、気が変わった。やっぱり一つだけ言わせてもらうとするよ。」

「はい。」

「死ぬんじゃないよ!君が何者であったとしてもね、死んだら何もかもお終いさ。」

「……肝に銘じておきます。」

 いきなり死にかけた俺には重い言葉だな…

 でも、どうやら全て俺の言ったとおりでは無いと思われてはいそうだが、ひとまず俺が犯罪者等ではないと言う事はわかってくれたみたいだ。


「まぁ、スペラルーチェ学園はこの街のすぐ隣にある学園だけの街だからね。アタシ達遊撃隊の助けが欲しければ頼ってくれたって構わないさ。」

「ありがとうございます。でも、あの、遊撃隊って何をしているんですか?」

「そんな事も知らないのかい?君、相当世間知らずのお嬢様か何かかい?」

「いえ、そう言う訳では……」

 うう、この世界の一般常識か何かだったのか。まぁ、知るは一時の恥、知らぬは一生の恥だ。聞かずにここでスルーした方が、遊撃隊を頼ると言ったって何を頼るんだという状態になって困る。


「ハハッ、気にしなくていいよ。遊撃隊は国が設けた警備隊さ。昔は魔物から街を守る為だけにあったんだけどね。時代の流れからか、今は、街の警備の他に、街の人から依頼を受けてこなすと言った側面もあるのさ。まぁ、流石に対価は頂いてるがね。」

「なるほど、ありがとうございました。」

 依頼か。ファンタジー系ゲームでは良くある冒険者ギルドみたいだな。この世界には、冒険者ギルドは冒険者ギルドで別にあるのだろうか?けど、もし依頼するなら、当たり前だが依頼を受ける立場じゃなく、依頼をする立場の方になる訳だよな。

 ゲームだったら中々珍しいかもしれないな。等としょうもない事を考えてしまった。


「明日、君を保護したアランとクロエの二人に君を学園まで送るように頼んである。学園に行く途中に君が死んだなんて事になったら、アタシもあの二人も目覚めが悪いだろうからね。じゃあ、サクラ。学園へ行っても頑張りなよ!」

「はい、お世話になりました!」

 そう別れを告げて、俺は応接室を出た。


 怖かった……何度あの人の気迫に圧倒されたか分からない。それに流れの中で、君が何者であれって言われたけれど、絶対俺の事を極一般の女の子だとは思ってないよな…

 こんな気迫を持っている人が、副支部長止まりって、この世界どうなってるんだ。それともあの人は何か特別な人なのだろうか?


 今は、そんな事を考えていても仕方ないか。とりあえずは、アランとクロエの二人に会いに行く事にしよう。

 俺は案内された道を逆に辿り、待合室があった場所へ向かい歩いていった。

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