5話 最初の街
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皆さんありがとうございます!嬉しいです!
「お疲れさん。ようやく到着だ。ここがタウノの街さ。」
「はぁ……はぁ……はぁ……。わぁ……!」
ここがこの世界最初の街。門、家、店、そして賑やかな人だかり!世界を救えと言われて、俺がこの世界に送られているんだから、この世界にも人がいるのは予想は出来ていたが、このアランとクロエ以外にも人がいるのを見るとやっぱり安心する。
それになにより、もう歩かなくて済む……
あの後、俺は二人に連れられて、街にやってきた。その時は別に魔物も出なかったし、俺の身に危険が迫ることは無かった。
が、この街に来るまで歩くだけで、スタミナ切れで、ついて行けなくなり、何度か休憩を貰った。切羽詰まっていても、詰まっていなくてもこれでは、この体の体力の無さが流石に気になるレベルだった。
「サクラちゃん、お疲れのところごめんね。ちょっと手続きとかがあるから、私達遊撃隊の支部まで来てくれないかしら?」
「あ、はい。わかりました。」
とクロエに言われて俺はこの街にあるという遊撃隊支部に赴くことになった。
街の中を少し歩くと、石造りの周囲の建物より立派な建物が見えた。
「よし、着いたぞ。あれが遊撃隊支部だ。なぁに、特に気にせず俺達と一緒に入って来ればいいさ。」
そう言われると、俺は二人に手を引かれ、遊撃隊支部の扉をくぐった。
中に入ると、人が50人位は収容出来るくらいの待合場らしき、椅子の並んだ空間がある。そしてその奥に何個かのカウンターが並んでいて、受付らしき人が何人かいる。
雰囲気とすれば小説で良くあるギルド……と言うよりは小さな街の市役所っぽい。
そう思っていると二人は俺を連れて、報告用の受付へ向かっていき、アランが報告を始めた。
「アラン・ストラーダ、クロエ・ルナーレ、2名帰還しました。街周辺の哨戒中に、レグーナに襲われている少女を発見し、保護しました。その保護した少女がこちらにいる、サクラ・オリーヴェさんです。」
「アランさん、クロエさんいつもご苦労さまです。オリーヴェさんへの対応はこちらで行います。任意ではありますが、可能でしたら聞き取り等をオリーヴェさんには受けていただければと思います。」
「了解しました。では、後はお任せします。」
「ごめんね、サクラちゃん。もうちょっと時間を頂戴ね。」
「はい。」
そう言われて俺は待合室で少し待機させられる事になった。
これ、ひょっとして俺は今から、所謂職務質問を受けるような事になるんじゃないか?
当たり前だが、この世界に来てから俺は一回も罪を犯したと思うような事は一つもしてはいないと思う。
が、ここで拒否をしたらそれこそ怪しまれる。
そう思っていると、さっきの受付の人が来て、俺が呼ばれた。
何をされるのかわからないが、強行突破で逃げてもすぐに捕まるだろうし、何よりメリットがない。なら、もう行くしかない。
逃げずに堂々と行くと覚悟を決めた俺は、そのまま応接室らしき部屋に連れてこられた。
俺をここまで連れて来てくれた受付の人がノックし、中にいる誰かに許可を貰いドアを開けた。
「君か。街の外で、平然としていたという少女と言うのは。まぁ、まずはそこの椅子にでも座ってくれ。」
そう言ったのは、見た目は20代後半位に見える女性だった。髪の毛はベージュカラーのショートボブ。顔はキリッとした目つきの女性で、一言で言い表すなら姐さんって言う雰囲気がした人だ。クロエが着ていた服に似てはいるが、服の質や装飾が彼女の物よりも高く感じる。パッと見は、クロエよりお偉いさんに見える。
「アタシはミリアム・サルヴァトーレ。ここ、遊撃隊タウノ支部の副支部長さ。悪いね、こういった接客が得意な奴がこの支部には中々少なくてさ。ん、どうしたんだい?急に固まって。」
「いえ、何も。よろしくお願いします。」
そう言って俺は、促された席に座った。
この人から、凄い気迫を感じる…俺が殺されそうになったあの木ですら、ここまでの気迫は確実に無かった。
「大丈夫さ、そんな顔して。まぁ、取って食おうなんて思ってないから安心しておくれよ。」
「いえ、そんな事は……」
怖っ。いきなり考え読んできたよこの人。
「じゃ、本題に入ろうか。君の名前は、サクラ・オリーヴェで合ってるだろう?あの二人からそう聞いたからね。サクラ、君の家はどこにあるかわかるか?それか、君の両親が何処にいるかわかるか?」
うわ、いきなりキツい質問が来たな…まぁ、その質問をされたらこう答えるしかない。
「分かりません。いつも通り、夜になったので眠ったんです。でも、私が目覚めたら何故だかあの場所にいて、父も母もいませんでした。」
実際この世界にいないんだし。
「なるほどねぇ、じゃあ君の身分を証明出来るものはあるかい?」
「私の持っていた、このカバンの中にはありませんでした。」
「カバンはあったのか。なら、ちょっと中身を見せてもらってもいいかい?」
「はい、構いません。」
そう言って、俺はカバンを見せた。別に見られて困るような物など入っていなかったからな。
「ふーん、なるほどねぇ…最後に一つ。君はどこからやって来たか覚えているかい?」
「……分かりません。」
正直死ぬほど答えづらかった。覚えているには覚えている。俺は地球の日本からここに来たんだ。
が、魔物がいる上に魔法がある時点で俺の知ってる場所じゃないはずだ。そんな所で、正直に言っても絶対理解してもらえない。
「……よし、分かった。サクラ、これから君の今後について少し話させて貰ってもいいかねぇ。まだ子供の君には辛い事になるかも知れないが聞いて欲しい。」
少し黙って考えていたであろう彼女が、口を開いた。
「……はい。」