21話 一ヶ月の経過
俺が学園に通い始めてからもう一ヶ月経った。
流石に一ヶ月も経つと、俺も少しはこの学園生活に慣れてきた。
とは言っても、エレナとイデアとリエトといういつもの三人で、授業を受けたり、魔法や剣術の練習をしたり、放課後の時間を謳歌したりといった事が主だ。
そして、今日最後の授業も終わり、ホームルームまでの自由時間になった。
それと同時にエレナが、俺のもとに飛び込んでくる。
「サクラー!さっきの算数の授業でやったあの問題どういう事かわかんなかったんだけどどういう事なの?教えて!」
「うわっ!あ、ああ、あれはね……」
と、こういった様に、魔法と剣術の授業以外にも、普通に国語、算数、社会といった俺が小学生の頃に習っていた基本的な授業もあった。
ただ、魔法がある世界なのが原因なのか、理科の授業だけはなく、生活の授業に近いものしかなかったので、主要五教科ではなく、主要三教科と言う方が正しい感じがする。
まぁ、算数は元の世界の小学生レベルなので、正直物凄い容易く解ける。正直この学園で習う授業の中では一番簡単だと思う。
だから、ついさっきみたいに、エレナがよく俺に問題の解法を聞きに来たりする。
でもなんだか、この一ヶ月の間にエレナが、俺になれたのか、こんな風に少しスキンシップが積極的になった気がする。
エレナの事はさておき、この世界も10進数で助かった。
2進数とか16進数とかが主流だったのなら、例え小学生レベルの算数でも、桁違いに難しくなっていくるだろうし。
国語は、本来理解できる訳が無いのに自然に理解出来るあの感覚があるおかげでそこまで苦戦しなかった。
それにこの奇妙な感覚にも慣れて、吐くどころか、もしもかの有名な翻訳コンニャクを食べた時の感覚はこんな感じなのかなと考えられる位には余裕が出来た。
ただ、いつこの不思議な感覚が無くなるかも分からない故に、国語もしっかりと勉強しなければいけないな。
社会は、この国の事や歴史等を習っている。
これが意外にも、魔法や剣術の授業に並んで、俺のこれからを左右するかもしれない程、重要な因子になる可能性が十二分にありそうだ。
世界の歴史や実状も理解せずに、戦争を止める事が不可能なんて、どんな馬鹿だろうと分かるだろう。
まぁ、とは言っても所詮一ヶ月じゃ、社会について覚えるのは難しく、まだまだスタートラインに立つだけで精一杯だった。
数学……じゃなくて算数の授業の内容を社会に回せるんじゃないかとも思いはした。
だが、実際はその空いた時間は剣術と魔法を学ぶ時間に費やしてしまったり、算数も自分では理解出来ても、エレナやリエトに教える事に時間を使ったりで、結局一般学園生と対して変わらない程度に落ち着いてしまった。
でも、イデアだけは俺と同じで教える立場にいてくれるのがまだ救いか。魔法に関しては俺も教えてもらっているし。
その肝心の魔法も、しっかりと練習して基礎的な魔法はある程度は使えるようになったし、色々欠陥だらけだけれど、オリジナル魔法もちょっとだけ使えるようになった。
剣術も少しは進歩した。でも、まずはアストライアーバスタードソードを星乙女剣と省略して呼ぶ事に決めた。
アストライアーのもう一つの意味である星乙女と剣で纏めたからだいぶ短く呼べるようになったと思う。ネーミングセンスは別として……
まぁ、その星乙女剣を持ち上げて歩ける位には筋力と持ち歩くコツを掴めた。
でも、これを自在に操るどころか、まともに振り回せるだけの筋力はまだ無いので魔法で誤魔化す事で、一応多少は使えるようになった。
ただやっぱりサブウェポンとして持っているあのレゾニウム製の短刀の方が圧倒的に使い勝手はいい。様々な方法で遣っても以外にも結構役立った。
そして、来週に俺の、いや学園生3年全員が実力を試すためのイベントがある。
それは、校外学習。つまり遠足のようなものである。
でも、ついさっき実力を試すなんて言ったから察しがつくだろうが、当然ただ皆でわいわいお散歩とか生温いものの訳はなく。
魔物がいると言われている、というよりも実際にいる草原や森、山を一泊二日で歩いて帰ってくるという、元いた世界で10歳の男女にやらせたら間違いなく社会問題になる、鬼畜極まりない遠足なのだ。
流石にいつでも近くには護衛の先生達がいるとは言っていたが、学園生四人で一班とし、身を守りながらも、目的地に到着し、無事帰還するって超簡易的で簡単だろうけど、やってる事は軍隊の訓練みたいなものじゃないか?これ。
確かに皆10歳と思えないくらい強いが、先生のヘルプ無しで完遂できるのだろうか。




