18話 短刀
「サクラが孤児って事がわかった。まぁ、それ自体は全然問題ないんだけどさ。サクラって何か武器は持ってるのか?明日の剣術の授業で何かしらいるだろ?」
「うん。一応短刀だけは持ってるけど。ほら、これ。」
リエトにそう聞かれて、俺は鞄の中にしまっていた短刀を取り出して見せた。
普通に考えて、孤児が武器なんか持ってるわけ無いよな。
「これがサクラの武器なの?なんか格好いいね!」
「私は武具にあまり詳しくないのですが、サクラさんの短剣は見た事がない形ですね。」
「おお、確かに珍しい短剣の一種っぽいな。ん?でも、なんだかこれ、切っ先の部分が欠けてないか?」
「え、あれ?……本当だ。」
俺も確認してみたが、確かに切っ先の部分が欠けてしまっている。
理由はまず間違いなく、あの木に全力で何度も突きつけた時に、先端部分が欠けたのだろう。
「どうしよう、私じゃ流石に直せるわけないし……」
「とりあえず武具店に行くしかないんじゃないか?そこで直してもらえればいいけど、どうしようもないなら新しい物を買うしかないと思うし。」
「なら、サクラ行こう?私も、一緒に行くから。」
「私もついていかせていただいていますね。」
「当然俺もな!」
「みんなありがとう。でも、街に行かないといけないし、なんだか悪いし。」
「大丈夫!それに、武具店なら学園内にあるから!」
本当に何でもあるな、この学園。もう広い学園というよりも、どちらかと言えば小さな街と言った方が近いかもしれない。
喫茶店から割と近いところに武具店はあった。
ここら辺りに様々な店が集まっているらしく、何か必要な物があれば、ここだけである程度は揃えられそうな位だ。またここら辺にはお世話になる事はありそうだな。
でも、今用があるのは武具店だ。ウィンドウショッピングはまたの機会においておこう。
俺達は武具店のドアを開けて、中に入った。
店の中には多種多様な武器が、適当に詰め込まれた箱から、綺麗な剣や槍などがショーケースの中に入れられていたり、壁にかけられていたりと陳列されていた。
そして、店の奥にあるカウンターに、一人の男性が座っていた。
よく見ると、いやよく見なくてもわかる。若いな。大学生位だろうか?でも、本来の俺とは歳が近そうな感じがする。そう考えるとバイトさんか?
とりあえず店主か鍛冶の人に俺の短刀を修復してもらえるか聞かないと。
「あの、すいません。これの修復をして貰いたいんですけれど、店主さんか鍛冶職人さんはいらっしゃいますか?」
「来店早々失礼な客……この店の店主兼職人のルイン・シルヴェーリ。」
「え、あ、すいません。店主さんにしては随分とお若かったので……」
み、見えない……彼には悪いが大学生位の歳で店主とは全く思えなかった。そもそも、いきなり店主出せってクレーマーか何かかよ。武具店になんて来たこと無いから色々分からない。
こんな若い人に本当に任せて大丈夫だろうか……
「で、どれを直せばいい?得物見せてよ。」
「これですけど。切っ先が欠けてしまっていて。」
そう言って、俺は短刀を見せた。
「ふーん。かなり珍しいのじゃん。短刀なんて初めて見た。」
「そんなに珍しい物なんですか?」
「まぁね。その短刀自体は、形は珍しいけど、似たような短剣なら俺にでも簡単に作れる。けど、それはレゾニウムって希少金属で作られている。でも、その金属の加工技術を会得している人はほとんどいないし、それ以前にレゾニウムなんて流通量が少ないから、純レゾニウム製の武器なんてほぼ存在しない。」
「ええっ、サクラの剣ってそんな凄い物だったんだ!と言う事はやっぱりとてつもなく強い武器なの!?」
ここで一緒に付いてきてくれていたエレナが口を挟んだ。
「いや、技術的には最高峰なのは事実だけど、別にそこまで強いと言う訳じゃないけど。レゾニウムは魔素を通しやすい性質が非常に優れているだけであって、強度はそんなに高いわけじゃないし。実際に使うなら護身用か、家宝としての飾りにするかじゃない?」
「あ、はは。そうなんだ。なんかごめんね、サクラ……」
「別に気にしてないから良いよ。そもそもこれにそこまでの価値があるとすら思ってなかったしね。残念だけど。それに、そんな貴重なものなら直せないし。仕方がないから、諦めて新しい武器を買うしかないか。」
「確かにその切っ先は、レゾニウムがない限り直せないけど。結構酷使されたのか知らないけど、歯こぼれしたり、劣化してる部分くらいなら直せるけど。」
「えっ、直せるんですか?」
さっきまでのあれは、無理な理由をひたすら並べて言い訳して、断ろうとしているのかとばかり思ってしまった。
「当然。でも、流石に1日じゃ無理。それに、完全に直せたとしてもそれを中心に使っていくのは厳しいし。だから何か一本武器を買ってくれたら、それただで直したげるけど、どうする?」
「なるほど、そう言う事。」
要は修復してほしければ、武器を買えって事か。でも、彼が言っていた事が本当なら他にこの短刀を直せる人を探すだけで一苦労だし、幾らかかるかも分からない。
「わかった。なら、貴方の提案に乗る。」
「契約成立。それじゃ、どれを買う?」




