表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

11話 変わる日常

「え、これが本当に学校の食堂なの?」

 目の前には、少し高そうなホテルで良くありそうな、バイキング形式で多種多様な料理が並んでいる。その中を生徒達が好きな物を取ってテーブルに着き食べている。

「そうだよ。ここがスペラルーチェ学園の食堂。席は特に定められてないから、サクラも一緒に食べよう?」

「うん。とりあえず初めてだし、エレナについていくね。」

「任せて!私のおすすめも教えてあげるから!」


 エレナと一緒に今日の料理を見て回ると、意外と美味しそうな物も多かった。

 正直、別の世界の食べ物となると、俺が今まで食べてきたものとは全くの別物になっていたとしても何もおかしくない。

 同じ地球ですら国が変わるだけで食べ物は変わってくるのに。

 でも、この世界では見たことが無い食べ物ばかりであるとはいえ、野菜、肉、魚、穀物といった風に理解ができる。流石に牛肉や豚肉といったように具体的には分からないが。

 とりあえずエレナに進められたサラダと美味しそうなステーキを取る。何の肉や野菜かは分からないが、今は気にしない事にする。ただ、美味しければそれで良い。知らなければ、何でも抵抗感無く食べられるようになっているだろうし。


 それに水も飲み放題みたいなので、水分で困る世界でもないらしい。餓死、脱水死は嫌すぎるので、今は食に対する心配を気にする必要はないらしい。

 ……そう、今は。戦争が始まると食料に困る事になっても何一つおかしくない。過去の日本がそうであったように。

 そんな未来が分かってしまっているが故に、深く深くこの食事が出来る事に感謝をして、この世界で初めての食事、いただきます。


 やはり、空腹は最高のスパイスと言われているだけあるな。最初に取った料理はとにかく美味しかった。一瞬でペロッと食べ終えて、何度かおかわりまで取りに行ったりもした。

「ふぅ、ごちそうさまでした。」

「うん、今日のご飯も美味しかった!でも、サクラちゃんってご飯凄い食べるんだね。こんな細いのにびっくりしちゃった。」

「あ、あはは……今回は、特別。今日は朝も昼も食べてなかったから……」

「えっ!?それ大丈夫なの!?」

「うん、今日が特別大変だっただけだから。普段はそんな事無いと思う。多分……」

「なら良いんだけど……サクラは初めて会った私でも細いと思った位なんだからね。無理なダイエットは厳禁だよ?」

「大丈夫。明日からはここに来れたし普通に食べられるから。そろそろ部屋に戻ろう?」


 エレナに怒られたものの、今日のご飯はこれで無事に済んだ。別にダイエットなんてやっていた訳では全く無いけれども、今日あった事を話したら、絶対もっと心配されるのは目に見えたので黙っておく事にした。


 後、当然、俺が男と言う事も言う気はない。というか、そんな事を言ったら間違いなく問題発覚となり、刑務所送り待ったなしだ。この世界に刑務所があるかは分からない。けれども、そういう場所が無い所に限って即刻終身刑となるの可能性もゼロじゃない。でも刑務所送りだろうが終身刑だろうがどっちでも断じて嫌だ。それ故に、意地でも隠し通さなきゃ駄目だろうな。

 学園に来てから今まで助けてくれたエレナを騙すというのは、なんだか気が引けるけど、事情だけに仕方がない。


「ねぇ、ねぇ?サクラ?どうしたの?聞こえてる?」

「あっ、いや、ごめん。考え事してた。」

「もうっ。この後一緒にお風呂入ろうって言ってたの!」

「……は?」

 今何と言った?風呂だって?それもエレナと一緒に?勘弁してくれよ……確かに俺、風呂は好きだけど、そんな罪深い事ができるわけ無いだろ……

「だってサクラ、多分だけどお風呂の場所も知らないでしょ?なら一緒に行った方がいいじゃん。それに、その方が楽しいし!」

「いや、でも……ごめん、お風呂は駄目だと思う。」

「えー、なんで?もしかして、私の事嫌になった?」

「そんな事無い!今日学園に来てから、色々教えてくれて助かったし、エレナ良い子だったから余計に……お風呂は……えっと、その……裸が見えちゃうから……」

「なーんだ、そんな事気にしてたの?私はサクラとなら全然構わないよ?だから、ほら行くよ!」

 違うんだ、エレナの考えている姿と実際の俺の精神とは別物なんだ。

 ただ、これ以上抵抗し続けると、何かと怪しまれる可能性が高くなるし、そもそも一日に一度も風呂に入らないで終わるのは嫌だ。


 あーもう、これ以上グダグダしてても仕方ない。結局遅かれ早かれどこにも逃げ場なんて無いんだ。

 何があろうがエレナや他の人の体は見ない!そう、何があってもだ!

 そう覚悟を決めると、俺は部屋に戻り、服とタオルを取ると、部屋の前で待っていたエレナに引き連れられて風呂へと向かった。


 その後は、脱衣場にて、嫌でも見えてしまった自分の体に戸惑ったり、今まで経験した事も無い自分の長い髪や綺麗な肌を洗ったり、絡んでくるエレナを一切見ずに話だけ聞いたり、やっぱり他の世界であってもお風呂は気持ちが良いなと感じたり、色々とあったが、風呂を上がった。

 何とか、俺の他の人の方は一切見ずに入るという任務は無事達成出来た。

 どうやってそんな事を達成したのかは、無我夢中で覚えていないが、出来たのならば気にしないでおこう。


 その後、エレナと別れた俺は、部屋に戻り不貞寝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ