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9話 暫しの別れ

 直接受付で行う転入手続きは、実際えらく簡単に終わった。

 既にどこからか送られていた、写真なのか絵なのかはよく分からなかったそれと俺の顔が、一致しているか確認して、その後に一応保護者扱いになっているのか、アランやクロエに本当にその人で合っているのかを確かめると、俺が書類にサクラ・オリーヴェと名前をサインをすると、俺が行わなければならない手続きは全て終わった。


 いくら何でも早すぎる……と言うよりも、どう考えても裏口入学みたいなんですけど、これ。いくらアランとクロエは確かに日本で言う国家公務員みたいな立場の人だったとしても、これが本来の入学手続きだとは思えない。

 もし本当にそうだとしたら、ここのセキュリティがもうボロボロすぎる。成り代わりの入学が余裕で出来るような気までする。


 でも、これで本当に良いんですか?と聞く勇気は俺にはなかった。

 ここで余計な事を言って、黙っていれば入学出来たのに……みたいな事になり、孤児院送りになるのは絶対に避けたい。俺は今まであまりそうは思ってこなかったが、沈黙は金だとよく言ったものだ。


 その後は、手続きを終えた時に貰えた資料によると、俺は、3年生からの転入となるらしい。この体が10歳位だと感じた俺の直感と観察眼も意外と捨てたもんじゃないな。

 また、明日が始業式なので、明日からもう本格的に俺の学園ライフが始まる。学園と言っても、実際は私立小学校みたいなものだろう、多分。


そして、俺は渡された資料の中にあった校内地図を見て、寮へと向かう事になった。

 寮へ向かう最中の少しの時間にも、学園の外からでも見えるほどの立派な校舎や、どんなスポーツでも出来そうな位広いグラウンド、昔行っていた学校には絶対無かった訓練所らしき場所もあれば、綺麗に花が咲き誇っている中庭もあった。これでも、まだまだ学園の一部しか見れてはいないので、この学園の氷山の一角だろう。


 そして、俺がこれから3年間お世話になるであろう寮…女子寮に到着した。

 ……今まで男は絶対に入れなかった所に一日に二度も入るとは思わなかった。

 でも、こっちは逃げると本当にこの世界での、俺の居場所を失う事になる。それに女子用の服から逃げるのはともかく、いきなり女子寮から逃げる女子なんて聞いたことがない。それに、ただでさえ帰る場所なんてない俺が逃げたら、ただの変な人にしか見えない。

 そう考えると、俺はアランやクロエに変な姿を見せないようにする為、心を空にして女子寮の中へ向かっていった。


 俺は無心で寮の中へ入り、ただ部屋への廊下を進み続ける。寮内の見た目や空気等は全く気にせずに、ただ進み続けると、俺の部屋に辿り着いた。

 寮は個室だと聞いていたので受付で貰っていた鍵を使って、二人と一緒に部屋に入る。

「着いたわね。ここがサクラちゃんの部屋だって。」

「ふぅ、とりあえずサクラの荷物は部屋の中に全部置いておくからな。」

「ありがとうございます。」

 部屋の中は、白い壁紙と木のフローリングで出来た6畳程度の空間であり、備品としてベッドとテーブルが置いてあった。


 とりあえずさっき店で買った、収納用ケースにクロエに買ってもらった服を入れるだけで、とりあえず、これで引っ越しは完了だ。

「よーし、これでサクラの学園転入も完了だな。」

「お疲れ様、これでサクラちゃんも明日からはこの学園の生徒ね。」

「はい。今日一日だけでも、お二人には大変お世話になりました。感謝しいてもしきれません。」

 言葉通り、俺はこの二人に心の底から感謝している。二人に命を救われて、そこから暫くの間、俺が生きていく為の道まで照らしてくれたのだから。

 でも、俺も、もう二人に守られるだけじゃなく、自分の身は自分で守れる程の実力位は早くつけたいと強く思う。


 そのまま俺達は俺の部屋を出て、寮の前まで来た。

「それじゃあ暫しのお別れだな。学園に入るという事はサクラにも何かしらの目的があるんだろう?しっかり成し遂げろよ。」

「よし、サクラちゃんをしっかり送り届ける依頼はお終い!今からはもう遊撃隊と依頼者じゃなくて、私達は友達ね!確かに今からはお別れだけど、またタウノの街に来てくれたら、絶対会おうね。約束よ?」

「はい。お二人もお気をつけて。遊撃隊のお仕事でも体を大事にして下さいね。私もまた街に行く時には、友達として会えればと思います。それでは、お元気で。」

「分かってるって。今度クロエと会うときには俺も誘ってくれよ。じゃあな、また会おう。」

「今度会うときは、一緒にタウノの街の観光でも行こうね。私がいい場所いっぱい連れて行ってあげるから。それじゃまたね。」

「本当にありがとうございました!」

 前を見て歩きながら片手を上げるアランと、振り返って手を振りながらもそのまま歩き続けるクロエが見えなくなるまで、俺はそのまま二人を見送った。

 でも、二人とは本当にまた会いたい。

 せめて、今度会うときまでには、俺もこの世界に順応出来るように頑張ろう。


 ……そう思った矢先に、また心を無にして女子寮の俺の部屋に戻ることになった事は言うまでもない。

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