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砂漠に降る花  作者: AQ(三田たたみ)


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番外編2(1)シャイニング☆ドラゴン ~前フリ~

 魔物が跋扈ばっこする広大な世界。

 そこを司る神の化身が『光龍』だ。

 しかし突如錯乱した光龍は天変地異を起こし、世界を滅ぼしかねない魔王と化した。

 人々は伝説の勇者に願いを託す……。


  * * *


『――コンコン』


 遠慮がちなノックの音に、サラは首から上だけ振り向いた。

 読みかけの本を、机の上にパタンと伏せて。


「はーい、どうぞー」


 重たい木の扉が、床の岩に擦れながらギギギと音を立てて開く。

 と同時に、すっかり聞き慣れたアルトの声。


「ねーサラ姫、聞いてくれる?」

「なぁに、クロル王子……って、また来たの?」


 サラの中の“サラ姫”が大歓迎ではしゃぐのを、がっぷりよつで押さえ込みながら、サラは苦笑した。

 ここは、聖なる山こと盗賊の砦。

 戦争が終結した現在、この場所は交通の要所というだけではなく、ネルギとトリウム両国の王族も立ちよる憩いの場……まさに『道の駅』と化していた。


 特に頻繁に利用しているのが、クロル王子だ。

 少し伸びた前髪の隙間から覗くキラキラ輝くつぶらな瞳と、涼やかで整い過ぎた面立ち、とっつきにくそうに見えて意外と愛想の良い態度から、今では盗賊女子のアイドル的ポジションだ。

 結果、屈強な男達から殺気だった目で睨まれているのだが……当の本人は全く意に介さず、まるで勝手知ったる我が家のように闊歩している。


「サラ姫ってば、冷たいなぁ。せっかく遠路はるばるサラ姫に会いに来たのにー」

「嘘はイケマセン! どーせ闇の魔術でひとっ飛びでしょ。あと理由も違うよね? エール王子にイタズラして怒られたとか?」

「別に嘘はついてないよ。確かに闇の魔術は使ったけど、ここホントに遠いからけっこう疲れるし。イタズラしたってのは正解。でも相手はエール兄じゃなくて父様だし。ついでに言うと、怒ったのはお義母さん……」


 ハナの強烈な雷を思い出したのか、クロルは一度ぶるりと身震いし、口を尖らせながら顔を伏せた。

 大げさなくらいしょんぼりするその姿に、サラはついついほだされてしまう。

 クロルの手を引いて椅子に座らせ、その柔らかな髪を撫でながら問いかけた。


「ね、イタズラって何したの? 一緒に謝ってあげてもいいよ」

「んー、でも時間が解決するはずだから、たぶん大丈夫」


 強がって笑うクロルを見て、サラはしょーがないなぁと軽く溜息。

 ピンと立てた人指しゆびを軽く振って、二人分のお茶を用意した。

 魔女が封じられた結果、サラの力は徐々に開花し、もうこの程度の魔術ならお茶の子サイサイだ。

 温かいお茶の入ったマグカップを手にし、クロルは喉を撫でられた猫のように目を細める。


「ありがと、サラ姫」

「それにしても、時間が解決って……ほとぼりが冷めるまで、ここに居座るつもりじゃないでしょーね?」


 サラは、もう一つの椅子を引き寄せると、クロルの正面に座った。

 サラが無遠慮にその顔をじーっと覗きこむ……いわゆるメンチを切ってみせると、クロルは悪びれた様子も無くくすっと微笑む。

 その笑顔に、サラの中のサラ姫がときめくから、サラの顔も自ずと赤くなってしまう。

 そんな不安定なサラを、クロルは見逃さない。


「サラ姫さえ良かったら、僕ここに住みたいなぁ」

「――ダメですっ! そんなことしたら、トリウムの皆が困るしっ!」

「本当に困るのは、サラ姫だよね? だってサラ姫は僕のこと」


 ――うん、好き。

 飛び出しそうになった言葉を、慌てて飲みこむ。

 ついでに、勝手にクロルの頬へと伸びていた手も引っ込める。


『ちょっ、サラ姫っ! あんたなんてことを!』

『えー、ちょっとくらいいいじゃない。ケチー』

『浮気はダメ! 私たちにはジュートが居るでしょ!』

『彼もイイけど、この子もイイのよねっ。全然タイプ違うし。っていうか、なんでもアリの最強女神様なんだから、恋人の二人や三人や四人……』

『イケマセン! ふしだらな妄想禁止!』


 ピシャリ、と心のドアを閉めて、サラは一度大きく深呼吸をする。

 挙動不審なサラを、きょとんとして見つめるクロル。

 サラは、手のひらをウチワ代わりにして火照った顔を煽ぎながら、引きつりまくりのごまかし笑い。


「ゴメンねっ、ちょっと頭の中に蠅が飛んで……おほほっ」

「ヘンなサラ姫……っと、そうだ。本題を忘れるとこだった」


 サイドボードにカップを置いて、口元に手を添え顔を近寄せるクロル。

 それは、内緒話の合図。

 真剣な眼差しを受けて、サラも表情を引き締める。


「サラ姫に、聞きたいことがあってさ」

「どうしたの?」


 クロルは一瞬言葉に詰まり、キュッと唇を引き結ぶ。

 近くで見ると、目の下にはうっすらと隈が浮かんでいる。

 こんな表情を、サラは見たことがあると思った。

 いつも自信と好奇心に満ちあふれたクロルが、落ち込むくらいやっかいな出来事……。


「僕……また日本に行っちゃった、かも」

「えっ! またあの子猫ちゃんのところ?」

「ううん、そこともまた違うみたいで……僕やっぱり、オカシイのかも。今回も夢か現実か分かんなくてさぁ……」


 俯くクロルの髪が、神々しい純白の光を放つ。

 その身体からはうっすらと白い靄が浮かび、輝きながら空気に溶けて消える。

 サラが魔術を覚えるのと同じスピードで、少しずつ変わっていくクロル。

 いつしか闇を自在に操り、当たり前のように光の精霊を身にまとうその姿は……確かに普通の人間には見えない。


「とりあえず、詳しく教えてよ。その夢の話」

「分かった。あのね、今回はもしかしたら、ちょっと未来の話なのかも」

「未来?」

「うん、どうしてそう思ったかっていうとね、今度の夢には僕の知ってるひとが出て来たから。サラ姫も良く知ってる、アイツが――」



※続きは『シャイニング☆ドラゴン』にて。お手数ですが移動をお願いいたします。http://ncode.syosetu.com/n3462j/

↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたくない方は、素早くスクロールを。












 新年お年玉企画の『シャイニング☆ドラゴン』、短期連載スタートです。この話は、三月いっぱいで一旦削除する予定になっております。理由は改稿して公募に出すので……落ちたら再度公開します。っていうかそのときは、長編の状態になってると思います。つまり短編版はこの時期だけ!(と、意味も無く煽ってみる……)

 さて、ちょっと意味深な感じの前フリになりましたが、もうピンとくる方もいらっしゃるんじゃないでしょーか。このタイトルですし、バレバレですよね。これは『大陸編』のさらに先の話になります。(しつこいようですが、大陸編は全く未定ですよー。エピローグ2はもうちょいお待ちをっ) 今作品は、本編を見ていない方にも楽しめる、砂漠に降る花のダイジェスト版というかマイナーチェンジ版のような感じに仕上げてます。前フリ無しでも良かったんですが、クロル君出したさにくっつけてみました。しかしクロル君のパワーも便利だわぁ。なんちゃって異世界ファンタジー最高っ。(このイイカゲンさが公募の敗因になる予感大)


※年末にシコシコッと書いた恋愛掌編がアップされております。場所は、乗換案内で有名な『ジョルダン』さんの投稿コーナー。鼻血が出そうなピュア羞恥ラブ話で、どうぞ身悶えしてください。(アクセス上位5作品が決勝に進めるそうです。1/28まで予選期間ですので、ご協力よろしくですー)『七両目のリンゴ』http://book.jorudan.co.jp/cgi-bin/browse.cgi?action=7&param=euaxuuau3u1u7u4u6

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