待ち人来る
「そんなこと分かってるって目してますわね、浅井さん」
「そんな目してないさ。好きな人といるか。久しく感じてないな、その感覚」
「好きな人と一緒にいるのは楽しいって私最近気づいたんです」
「そいつは良かった。天谷をよろしくね。女にモテるくせに鈍感な所があるからな。あいつは苦労するぞ」
浅井はタバコに火をつけて一息吐いた。
吐き出した煙が風に舞って雪のように消えていく。
自分にとって好きな人と嫌いない人を待つ正反対の2人はしばらく芝生を眺めていた。
先にやってきたのは天谷だった。
「おい!マーガレット!やったぞ!すごいぞ!600万だ!」
天谷は着くやいなや、紙袋に入った札束を見せつけた。
「驚くなよ。マーガレット。これはな、この国の年収くらいある。年収ってのは1年間働いて手にすることの出来るお金のことだ。それを俺たちは今一瞬で稼いだんだぜ!」
浅井は目の前に広げられた大金に目を丸くする。
「こ……これは天谷くん、君が当てたのかい?」
「えっ!!浅井さん?なんでここに居るんですか?」
「君はいつも……普通とは違うことをしているね。まさか600万持って登場とは思わなかったよ」
「どうしたんですか?!こんなところで。マーガレットと2人で何話してたんですか?」
「こんな可愛い彼女まで作っちゃって。羨ましいなぁ」
「…はは。なんで競馬場に?好きでしたっけ?」
「いや、好きできてるんじゃないよ。付き合いさ」
「…そうっすか」
「たまたま上司待ってたら天谷くんを見かけてね。一声かけようかと思ってたら飛び出してどこかに行っちゃうもんだから。この子とここでまってたんだ」
「そうだったんですね。わざわざありがとうございます」
「ちょっと寒かったから一本吸ってたよ」
膝でタバコをトントンと叩き、灰を地面に落とす。ハラハラと灰が落ちる。
浅井さんのよくやるくせ、久しぶりに見たなぁ。
「遅かったですわね。でも、当たって良かったですわ!」
「あぁ、ホントお前のおかげだよ」
「この子が当てたのかい?」
「……まぁ共同作業って感じかな」
へへっと笑う天谷。共同作業という言葉に胸が躍るマーガレット。
「お熱だね。お二人さん。それじゃあ僕はここら辺でおいとましましょうね」
「もう帰っちゃうんですか?浅井さん、もう少し話しましょうよ」
「だらだらしてると神田主任がきちゃうからさ」
「神田主任……」
「天谷くんも会いたくないだろ?そろそろ来るから鉢合わせしちゃうと悪いしね」
浅井は立ち上がり歩き出したと思いきや、何かを思い出したように振り返った。
「あっ。しまった。天谷くんに謝らなきゃ」
「え?」
「天谷くんさ、俺が神田さんに怒られてるの見てるの辛くて辞めたんだろ?色々庇ってくれたし仕事も手伝ってくれてさ、ホントに天谷くんには感謝してるんだ。そして、申し訳ないなって。俺が仕事遅いばっかりに。それだけ言いたかったんだ。久しぶりに会って楽しくなっちゃって。言うの忘れてたけど」
「……そんな。浅井さんは別に仕事が出来ないわけじゃ。むしろ出来すぎて無茶な量の」
その時だった、浅井の頭をパーンと叩く音がした。
「あいー。到着〜。上司待ってんのにポケットに手入れてるって礼儀がなってないな〜」
最悪だ。1番会いたくないやつに会ってしまった。
いつの間にかブクマ100超えていました
嘘みたいです。信じられません。
感謝しかないです。ありがとうございます。




