蓄積
「うわあああああ。すっごい大きな建物ですわね!」
マーガレットは一面に広がる緑の芝生に興奮していた。
「この世界に来てから私、灰色の地面ばかり見ていましたので。やっぱり緑の地面は落ち着きますわね」
俺たちが来たのは、そう。競馬場だ!!
俺たちは電車でからこれ1時間(本当は二十分くらいで着くはずだったけど)、東京競馬場に来ていた。
「あれ?もしかして、あの遠くに見えるのは?お馬さんですか?」
マーガレットが指を指し示した方向にパドックがあった。
パドックとはレース前の馬たちが歩いている場所のことである。
「本当に美しいお馬さんがたくさんいますわね。わたしもお馬さん大好きでしたけど、この国でもすごい人気なのですね」
「あぁ……ちょっと意味は違うけどここでも馬は凄い人気さ」
「本当にそうですわね。歯が抜けたおじさまやボロボロの服を見に纏うおじさまがたくさんお馬さんを見に来てますもの。自分があんなにボロボロなのにそれでも馬を見にくるなんて……馬愛に満ち溢れた方が多いのですね!この国はおじさまにお馬さんが人気があるのですね!」
「いや、まぁ、うぅん……。そうだな!みんな馬が好きなことには変わりないし!」
沢山の人でごった返す競馬場。馬をパドックに見にくる人、馬券を買う人。様々な欲望が破裂し続けるこの競馬場という場所は熱気に包まれていた。
「よし、マーガレット、もうちょっと近くで馬見に行くか!」
「もちろんですわ!」
天谷がこの競馬場にマーガレットを連れてきたのはもちろん、マーガレットの気晴らしのためなんかではない。彼女ならレースの未来が分かると踏んでいたのだ。
「たくさん、見てくれよ。マーガレット。この国の馬はあっちの馬とは違って綺麗だろ」
「はい、どの馬も体格がしっかりしていて、もし馬車を引くとなったらどの馬も超一流ランクになると思われますわ」
天谷は地震を予測したマーガレットを見て、スキル発動条件にある仮説を立てている。
それは【彼女が実際に目で見て体験した物】の未来が見えるのではないか?ということ。
彼女は自分の体で体験、経験したことをデータにし高精度でその先の未来を予測していると考えたのだ。
その証拠として見える映像は決まって【彼女視点】だ。
これは彼女か見たデータから予測がされていると判断しても良いだろう。
つまり、彼女が実際に体験したデータがなければ予測と映像もない。つまり、いくらスマホのFXを眺めていてもそこにはなんの情報もない。映像は見えないのだ。
しかし、電車内での痴漢の未来映像は見えた。彼女が実際にずっと鎌田を見ていたからだ。
つまり、マーガレットが実際にアメリカのトランペ大統領に出会っていたら、トランペ大統領が貿易を中止するという未来が見えていたのかも知れない。
「天谷様!あちらで馬が一列になって並んでいますわ。あちらも見に行きましょう!」
マーガレットが俺の手を引きかけ出す。
幸いにもマーガレットは馬が好きなようだ。
よしよし。いいぞいいぞ。彼女の中に今データがどんどん溜まっていっている。




