告白
俺は今までの半ニート半フリーターだった現実社会における402万の価値を冷静に考えた。
確か俺は生活に困ったら適当に日雇いのバイトしてたけど日当八千円くらいだったよな。
時給千円くらいで必死に肉体労働して得られる対価が八千円だ。
今俺は20分弱で402万を手にした。
時給1200万?
考えられない。
でも、現実だ。俺のFXの残高は何回見ても402万になっている。
「すごい……凄すぎるぞ。このスキル。未来が見えるなんて最強過ぎる!」
「喜んでいただいて嬉しいですわ。それよりも、この話す四角い箱について説明してくださらない?こっちが話しかけても何も返答してないの。失礼な人たちばかりですわね」
マーガレット視点の異世界あるあるを聞き流しながら、俺は402万を再び勝負の壇上に上げようと思った。
いやもはや、勝負なんかではない。
100%勝ち確定のギャンブルだ!!
「マーガレット!ほんとすまないがあと一回だけ、この線見てくれないか?あと一回でおそらく十分な額になると思う。これでしばらくやらなくていいから!」
「はぁ、そこまで言うなら……やりますわ」
マーガレットはテレビの後ろに回り込んでも人がいないことに驚いていたが、そんな事をキッパリやめてスマホを見てくれた。
しかし、あまり気乗りはしていないようだ……
「はいじゃあ、見ますわね」
2、3分が経った。
「分かりました。上がります。今度は上がります」
「よし!ありがとう!上がるんだな、了解した」
俺はアメリカのドルが上がるに402万賭けた。
これでおそらく大台の1000万へ届くだろう!
俺はウキウキしながら揺れ動くチャートを眺めていた。
マーガレットはテレビを叩いたり話しかけたりしている。
こいつ、こんだけ未来を見てるのに疲れたりしないものなのか?
そうふと疑問に思ったがすぐ視線をパソコンの画面に戻す。
いやいや、そんなことは後から聞けばいいだけの話。
今は勝ち戦を見守ろう。
上がり始めるのを今か今かと待っていた。
その時、テレビに夢中だったマーガレットが俺の背後からパソコンの画面を覗きに来た。
「なんだ?テレビに飽きたのか?」
「……いや、ちょっとお話があって」
「なんだ?大事な話なら今聞くけど、そうじゃないなら後にしてくれ」
「大事な話だと思う」
マーガレットの声のトーンが低い。
なんだ?テレビの説明してないことに怒ってるのか?
その時だった。和やかなトークを繰り広げていたワイドショーの声色が急に変わった。
「速報です。たった今、アメリカのトランペ大統領が今後一切の貿易を中断するとの発表を行いました。中国間の関税に対しての対応だと見られています。速報です。アメリカは今後一切の貿易を中止すると発表しました」
は?アメリカが貿易をしない?そんなことしたらドルの価値は……
テレビを見ようと急いで振り返った。
マーガレットが立っていた。
「大事な話はね。怒らないで聞いてね」
マーガレットでテレビが見えない。今はテレビが見たいのに。
「ちょっとどいてくれ!ニュースが見たい!」
マーガレットは一切動こうとしない。
彼女は微動だにせずこう言った。
「私、見えてないの。ごめんね。動く線の未来なんて見えてないの」