災害クラス
覚悟を決めろ
俺達が見つけたのはブラックゴブリンの死体であった。
無惨気も食い荒らされた跡があり、近くにブラックゴブリンの使っていた武器も落ちていた。
「んなっ!?ブラックゴブリンがやられてるなんて…結構不味いかもしれない…」
「どうしてだ…?やられてるなら問題なくないか?」
ヴェルは深刻そうな顔でこっちを見る。
「だって、これは明らかに他の冒険者が討伐した後ではないんだ。これはブラックゴブリンより上のモンスターが捕食した後なんだ。」
「だったら、倒せばいいんじゃねぇか?」
と言った直後に俺は気づく。
どういう経緯があったかは知らないが、ヴェルはブラックゴブリンに敗走している。
なのに、これより上のモンスターに勝てるかと言われたら勝てるわけがない。
「勝てるわけがないよ。僕はまだD級冒険者なんだ。」
「D級?何ランクから何ランクまであるんだ?」
「冒険者はGランクからSランクまである。Cランクで二流冒険者ぐらいなんだ。今の僕は3流さ。」
「モンスターにもあるんだろ?ランクって。」
「あぁ、そうさ。冒険者と同じで、ブラックゴブリンはCランク級だったんだよ。そいつを倒してるということは恐らくBランク級は硬いね。ブラックゴブリンを倒したやつは。」
「ちなみにB級ってどんなモンスター…?」
恐る恐る訊く。
「村単位を滅ぼしかねない。災害級のモンスターさ!!奏、僕は今から救援とモンスター災害発令の信号を送るから待ってて。」
ヴェルはそう言うと恐らくギルドカードのようなを物を取り出し、スマホのように両手でタッチし始めた。
事態は急を要するようだ。
というか、実際にまずいぞこれは。
よくはわかってない俺でも高ランクモンスターとやり合うなんて無理ゲーだし、経験者が本気で危険を感じているんだ。この場から逃げんと死ぬ。
そんなことを考えたのが不味かったのか。
よく、小説や漫画で出てきそうなオークが現れた。
しかし、色は真っ黒で下卑た笑みはなく、凄まじい殺意を持って俺たちにロックロンしていた。
「ブラックオーク!?なんでこいつがこんな所に!?」
ヴェルは顔から汗が大量に滲み出ていた。
俺も体から嫌な汗が流れる。
そう、こいつとやり合っても勝てないと本能がそう訴えていた。
「逃げようぜ、ヴェル!死んじまう!」
「逃げられないさ…僕は冒険者だからね。このまま逃げて街の方まで連れていくことをすれば僕の責任だけじゃ済まないし、たくさんの人が犠牲になる。救援が来るまで、時間を稼がないと行けない。しかし、君は冒険者ではない。逃げろ!走って!早く!!」
そういった後に、剣を抜きブラックオークに立ち向かう。
うぉぉぉぉぉ!!という咆哮に近い声を上げながら自分を鼓舞するようであった。
逃げる?ヴェルを置いてか?
確かに、知り合って間もないし大した悲しみはないだろう。死んだとしても。
けど、それは正解なのか?
戦う力があり、少しでもヴェルを生存させる時間を伸ばし、応援が来るまで時間を稼げばヴェルは助かるしれない。
けど、助けが来た頃には俺達は死んでる可能性もある、
どうすればいいんだ!?
俺の中で葛藤が渦巻く。
戦うか?逃げるか?
もしだが、ヴェルを見捨ててこのまま生きていくことになるなら、俺は後悔をし続けて生きないとならない。
けど、死んだら終わりだ。まだやりたいこともあるんだ。
「でも、生きて後悔するなら死んで後悔しない方がマシだ!!可能性は零じゃない!!」
自分に言い聞かせるように俺は奮い立たせた。