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自動人形が生まれた理由

 

 いつか歴史の授業で習った、僕が生まれる少し前の話。

 二十一世紀――虐待や育児放棄が溢れた、悲しい時代。

 その子供が成長し研究を重ねた結果、自動人形は生まれた、と……。




 二十一世紀。いつか歴史の授業で習ったその時代は、混沌としていたらしい。

 戦争を放棄して平和になったというのは、あくまでも表面上の話。実際は戦争こそないけれど、親が子を殺す事がある時代だったと聞いている。そしてまたその逆も。

 そして、殺しはしないものの幼い子供の事を放置したり、暴力を振るう親も後を絶たなかったとか。

 勿論、子供に愛情を注ぎ一人前に育てた親も数多くいたと思う。

 しかしそれは社会の中では当然の事と見なされ、目立つのは悪行ばかり。歴史とはそのようなものだろうと、僕は思っている。

 そして、二十一世紀の虐待が歴史に残った理由は、ただ数が多かったからではない。虐待を受けた子供が成長し、自動人形を開発したからなんだ。


 自動人形は、これまた二十一世紀に流行した〈メイド〉というものを参考にしているらしい。

 それは主人にひたすら従順な、とても可愛らしい女性だと言われている。

 確かに自動人形の容姿は例外なく美しく、服装も黒を基調としたふんわりとした膝上丈のドレスに、白のレースやリボンをあしらったものが多い。

 加えて白いエプロンをつけ、ニーソックスやドレスと同色の可愛らしい靴、というのが彼女達の基本的な服装で、それは〈メイド〉と驚く程酷似していたんだ。


 僕はそこに、自動人形を開発した者の理想を垣間見た気がした。

 決して己に逆らう事がない、従順な女性。

 けれどそのような女性を現実に探し出す事は困難を極め、何より人間はいつ豹変するか分からない。

 実際に親から虐待を受けていたのならば、そう考えてしまうのも仕方がない事だと思う。

 それならば、造ってしまえばいいではないか――という結論に達する気持ちも、分からなくはない。

 無論、開発するにあたって、僕には想像もつかない程の苦労や努力があったのだろう。それを為し遂げた事に対しては、心の底から敬意を表する。


 自動人形には家事、育児等、基本的に母親が勤めるであろう仕事の能力が搭載された。それ故、彼女達と人生を共にする成人男性も増え、民法により自動人形との婚姻も許可される。

 それは結果として子供を作れない夫婦を増やしたが、それ故に救われる孤児も増えた。人間と自動人形の夫婦は、決して子供が要らないから結婚する訳ではないようで、養子を引き取るケースが多かったようなんだ。

 そう。孤児や虐待された子供の受け皿が社会的に整ったから、僕も今こうして平和に暮らしている。

 歴史上描かれてはおらず、今となっては知る術もないけれど、自動人形を開発した者の真の狙いは、恵まれない子供達を救う事だったのかもしれない……。




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