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◆道を照らす光

月日が飛びます

魔力の制御をすべく訓練し雑草の知識も増やしながら日々は過ぎていった。

そして十一日(・・・)に漸く気付いたことがあった。

あとで何故十一日も気付かなかったのかと自己嫌悪に陥りそうになったが。

足で魔力を使えるかとかやろうとしてもやったことがないから、魔力の流れなんて掴める訳がなかった。


そこで思いついたのが自分は両手から魔力を使う事が出来る。

ならば右手で魔力を操作した後、左手で魔力を操作をすると

どういった魔力の流れ方をするのかを感じ取れるのではないか。

でも初めは全く流れなんて感じ取れなかった。

それもそうだ今まで無意識にやっていたことを、意識してやろうとしてるのだから。

そうして魔力の流れを少し感じ取れるまでに六日(・・)掛かった。


そして小さく操作したり大きく操作したり変化を付けながら

体の中を魔力がどう動いているのか確かめつつ慣れていった。


そして十三日(・・・)後、遂に足で魔力を操作し薬を作ることが出来たのである。

だがそこからが非常に長かった。

体の細部全てに魔力を浸透させるという事の難しさを理解出来てなかったのだ。

余りの難しさに何度心が折れそうになったか。

一生この寝床で暮らして行こうかとも考えた事もあった。


そしてかなりの日が過ぎた頃、やっと全身を魔力が覆う事が出来たのである。

訓練開始から百と三日が過ぎていた。



「ガル、やっと魔力で全身を覆う事が出来たよ。かなり時間が掛かってしまった。」

そう言うとガルが意外なことを言った。

「我は早くても三年くらい掛かると思っておったぞ」

何故ならばドルイドは五年くらい掛けてこの状態に到達するらしい・・・。

「起きている時間の半分以上これに費やしてたからな」

やややせ我慢気味に言い放つ。


「だがその状態では魔力の層が厚すぎる、層を作るのに魔力の大半を使い込んでおるじゃろう。

次にすることはその層を極力薄くするのじゃ。

僅かな魔力で層を作り、それを体の中心にまで圧縮して行くのじゃ。

すると体の中に濃度の高い魔力の核が出来上がる。

その中に己に影響を出しておる"脱力"の効果も閉じ込めておく事で、

己に"脱力"の影響を出さずに相手にだけ影響を出す様に使えるようになるのじゃ。

効果の強さや範囲は魔力の核を作れるくらい操作が出来ておれば容易く出来るであろう」


更に難しい事を言ってきた、俺は出来る様になるのだろうか。


「因みにドルイドでその魔力の核を作るのに何年掛かるの?」

聞くとヘコみそうだが、目安になるかと思い聞いてみた。


「早い者で一年、遅いもので百年以上。コツをつかめれば早い筈じゃが

個々により考えておるコツが全く違うので我のコツを教えても意味がないのじゃ」


サラッとトンデモ発言をされた。百年とか死んでますよ。

だが己の道を照らす光となり得る魔力の核を覚えなければ。

我が道は闇に包まれたままである。


そしてまた長きに渡る修行?の日々が始まるのであった。


***


十七歳の誕生日が過ぎた、まだ核は作れていない。

全身を覆う魔力の層は随分と薄く出来たが、まだそれなりに魔力を使っている様で疲れる。

だが魔力の回復を助ける薬"ターノル回復薬"を発見出来、

随分能力の上がった"雑草"能力で作ったエポ保存薬のおかげで効果時間も長くなり、

一日にかなりの魔力を使う事が出来るようになっている。


しかし村を出て一年が経ち、エンシーにも着いたと手紙や知らせも無く、家にも一度も顔を出してないとなれば

俺はもう死んだ事になっているのだろうか。そんな事を考えてしまった。


そしてまたいつ終わるとも分からぬ修行が始まるのである。


***


******


「いよっしゃぁーーーーーー!!!!」

ガルが何事かという表情で此方を見ている。

「やっと出来たぞ魔力の核!」

自分の中に凝縮された小さな小さな魔力の球の様なものも判る。

ある程度までは出来ていたのだが最後は一気に凝縮された。

そして驚く程体が軽い、頭がすっきりしている。だが嬉しさのあまり高揚感は抑えきれない。

仕方が無いだろう、本当に長かったのである。

この時アールは既に十九歳を過ぎている。

ガルに逢ってから既に三年が経過していた。


「ガル出来たぞ、やっと出来たんだよ」

心做(こころな)しかガルも嬉しそうに見える。

ガルは何度も俺の助言をくれた、役に立ったものも有ればそうで無かったものもあるが

何より一人であれば確実に心が折れていた。

一日も欠かさずに毎日来てくれていたのである。


ガルゼリアという僥倖に巡り逢えた事、全てはここから始まっていた。



「今はもう体が軽いであろう、それが己の"脱力"から解放された本来の己の状態じゃ」

確かに軽い、軽過ぎてその辺を走り回ってみたいと思うくらいに体が動く。

「体力や腕力や魔法力などが"脱力"に因って枷を掛けられ抑制されておったのじゃ、

それを一気に開放されれば体が物理的に軽くなったと錯覚するはずじゃ。

我も昔はそう感じたからの。

それになアールはこの三年村で普通に暮らしておった訳ではなく森で暮らしておったから

体力や腕力・足腰はそれなりに強化されておるだろう、

普通の人間ではこの森で暮らすのは大変だろうからの

これで森を出ても何とかなる筈じゃ」


この三年魔力の訓練以外にも体の鍛錬も少しはしていた。

していたが急に力が開放されると自分の体なのに戸惑う。


長く苦悩した三年間だが報われた気がした。


「ありがとう、ガルゼリア先生」

「やめよむず痒い、今まで通りにガルでよいだろう」

「ちゃんとお礼を言いたかったんだよ」


照れている、こんなガルを見たのは初めてじゃないだろうか。



そしてやっと俺はドルイドの森の中心部にも行けるようになった。

ドルイドや脱力の影響が少ない種族以外には"脱力"の影響のせいで会う事は許されていなかったからである。

因みにドリアードであるエレニアは影響の少ない種族である。

他の精霊種も影響が少ない様である。




この三年ガルに聞いた色々な話を掻い摘んで話そう。


まずドルイドは世界中の各国各地に住んでいるが、ドルイドの長老がいるのがこの森である事。

そして長老は森の聖域と言うところに住んでいるが俺は会えないらしい、そりゃそうだろうな。

そしてドルイドは知り合い同士ならば何処に居ようがお互いに転移(・・)の様な事が出来るらしい。

自分だけで無くドルイドにその意思があれば、他の者も転移させることが出来るらしい。

これがドルイドが他の種に淘汰される事なかった理由の一つらしい。

そして俺がいつでも転移が出来る様にと各地のドルイドに頼み込んでおいてくれたらしい。

一応魔力の核を作れるようになるのが条件だったらしいが。

本当に恩ばかり受けていて、いつ返し切れるか分からないほどである。


次にこの世界の国々に対して。

殆ど何も知らなかった俺に簡単に説明してくれた。


まずこのドルイドの森の大部分がある[ミセリア国]

国の中心付近にヒルリアという首都があり、

その北西にウィヒル湖という大きな湖があるという。

この国は亜人の国らしい。

亜人のみと言うわけではなく、ほかにも精霊や妖精、僅かながら人間もいるそうだ。

人間の大半は持つ能力によって他の人間に見限られた人達が流れ着きやすいのだという。

入国には特に問題はないが、首都に入るには亜人・精霊・妖精の

ある程度の身分の者からの裏付けがないと街には入れないそうだ。

行きたくなったら我に言えと言っていた。

因みにこの街に住むドルイドもいるらしい。

まずガルが許可を取ってくるからその後転移し待って居るであろう役人に会えば良いらしい。

ガルが相当な権力者である事は、この三年の間にエレニアから聞いた。

田舎で育った俺は亜人を見たことが無いから是非行ってみたい国である。


次に東の[エル商国]

この国は小さいがどの国よりも財政が安定している

所謂お金持ち国家らしい。

それも当然である。商人だらけなのだ。数多の有名な商人の本拠地にもなっているらしい。

それもただの商人ではない武装商人であるから襲われることも少なく、傭兵業も盛んな国である。

そして人間であれ亜人であれ精霊や妖精に差別が無い国だという。

要は金があるか無いかの方が重要らしい。

商都はシュツーと言うらしい。


そしてアウル村があった[モンザリオ国]

この国は今までの二つと打って変わって、完全なる人間国家だという。

亜人は入国すら出来ないという。精霊や妖精は入国は可能だが

人間の目が冷ややかな為好き好んでいく者は殆ど居ないと言う事。

首都はマウラス。

シュツーからホザル川を下ればマウラス近郊に着くそうだ。

商人はマウラスに赴く場合、大体この川を使って行くそうだ。

この為川より北方は殆ど未整備である。


そしてアウル村の西側にある"ホルンの壁"と言われる

岩壁の様な険しく大きな山脈が南北に通っている。

その西方にある[ダリュセ王国]

おそらくこの国が一番軍事力があるらしい。

だが好戦的ではない、なのに軍事力が高い事には理由がある。

あとで説明するのだが、南方の島の国が魔族が統治する国である事。

そして北西の海峡を渡ると[ガゼウィル皇国]がある。

かの国は非常に大きいが人間のみで現在ウィルヘイム四世が治める大陸国家ある。

現在ダリュセ王国とは友好関係であるがいつ敵対するか判らぬ為、

軍事に力を入れる必要があるのである。

ダリュセ王国は全種族が住むが一番の能力主義国家である。

強いもの、優れたものがより上に行く、そう言う国である。

首都はゼウリオ。国の南西にはゴゾという巨大都市がある。


そして先ほど出た南方の島国が[ルメシアン]

島の半分がパル山脈という山という国だ。

魔族の国というが、魔物のように目についたもの全てに襲い掛かるわけでもなく

魔族なりに種族があるのだという。

そしてこの国にも王がおり、それは魔王と呼ばれている。


次はルメシアンを海上で東へ東へ行った先にある島国[マーギン]

ここは亜人の国であるがミセリア国と違うのは

海での生活を得意とする亜人の国であると言う事。

一応他種族との交流もある。

詳しい事はあまり知られていない。


そしてミセリア・エル・モンザリオと国境が接している[アデスラン王国]

首都はロクであり、この国は貴族が各地を治めている国である。

南部にカミーザという巨大都市があるが、この地は直轄地だということらしい。

他国にも警戒しつつ軍事力を置く必要があるのだという。

そして国の東部には風土病の様な物が有りそのせいでヅラが飛ぶように売れる。

ヅラ職人なるも人達もいるそうだ。

どんな風土病なのかは言わなくても判るよな。

そして罹るのは男性のみであり、人間だけでは無く亜人も罹るらしい。

だから以前の亜人商人は・・・・納得した。


そして海を挟んで東の国が[ゲハノコ王国]

首都はズーボルマ。

この国にもはアデスランと同じ風土病がある。しかも全土にだ。

元々はこの島国だけの風土病だったのだが、

いつの間にかアデスランの東部にまで飛び火していた。

今も範囲は拡大しているらしい。

この国はヅラなんて被らない。潔く剃るらしい。

剃る部分が残っているのか知らないが。

こんな事があるせいで、あまりアデスランとは仲が良くない。

だが敵対はしていない。



これがこの周囲の八国の話である。




※地図は四話目の"意外な事実"にも載せましたがもう一度載せていきます。

挿絵(By みてみん)






漸く本編に突入出来そうです。

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