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己の歩むべき道は己で見つけてみせる  作者: 飛来針
第三章 ─ アデスラン王国 ─
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トルーザディーと言う難敵

 相変わらず大半はドルイドの森こと聖域の森で過ごしたが、外の世界では一年近くが過ぎていた。


 一般学校と技術学校と全ての寮も完成したが、魔法学院ほど大きな事柄は無かったので割愛する。


 魔法学院は二年目となり生徒も増えた為、講師も増やした。

 俺もタッケンドーラさんが来ている時に、(たま)に精霊魔法の基礎を教えてもらったりしていた。


「基本が出来なきゃ魔力の消費は大きいままです。」


 一般的な魔法の魔力操作と少し違うようで、精霊魔法に適した魔力操作を学んだ。



 そんな平和な日々で一年が過ぎた。



 しかし平和な日々は執政の使者ウーバンによって、終わりを告げる事となった。

 俺とウェルが以前行った魔物山の洞窟にいたビルアージが、麓に沢山出没したと言うのだ。

 これは魔物山から強い魔物が洞窟に進入したから、ビルアージが追い出される形で出て来たのかも知れないと言う。

 それの確認とビルアージの討伐をお願いしたいと言うのだ。

 それなら他の冒険者に頼めばいいと言ったのだが、ゴルウォールを(たお)せる程の冒険者が見当たらなかったと言う。


 執政が(しっか)りとした報酬を確約するなら引き受けてやると、しかし直ぐには出発出来ないから一ヶ月待てと言伝(ことづて)してウーバンを返した。



 その一ヶ月の間にウーバンは早馬でもう一度来た。

 執政は学校への後の見返りなく助成金を出すと言う。金額も中々の物だった。


 しかし今回エレニアは直ぐに行ける訳もなく、タッケンドーラさんに俺達を手伝って欲しいと連絡していた様だ。

 今回赴く面子は俺の他にアービィ・ジル・ウェル・タッケンドーラさんの五人だ。

 ホールはクーオンズ家の用があり、忙しいので無理だと言う事。


 俺はというと、覚えた雲風火水樹土魔(強激属性障壁)を使い、スベルン防水剤を作って武器を除く全ての装備品使用してみる。

 予想通りだった。

 前回雲風樹土(強化障壁)を混ぜると魔法障壁が発動したが、今回雲風火水樹土魔(強激属性障壁)だと強化魔法が常時発動した状態になった。

 魔力で操作できないので最低限の障壁の厚さしか無いが、前よりはマシになった筈だ。

 それを今回行く者達の分、全て付与する。




 そして一ヶ月後パリムールに王都ロクへ送ってもらい、執政のゴルゼウス侯爵の元へ出向いた。


「久し振りであるな、アール=リア=ガウリーシュ。」

(しっか)り覚えてて下さったのですね。」

「無論だ。今回請け負ってくれた事、感謝する。」

「その事に関してですが、もし長期化しそうであれば魔物山の麓の平野部の安全な所に、簡単な拠点を作って頂きたい。なので今の所準備だけで良いので考えてて下さい。」

「分かった。洞窟には何が来ておるか分からぬしな。」

「有難う御座います。」


 そして準備の為の滞在後、ビルアージが出て来てしまっているという麓へ向かった。


 麓の入口付近に着いたので前回ウェルと戦った時、コボフォ麻酔薬が聞いた事を全員に話し麻酔薬を渡した。

 そして毒が殆ど効かない事、属性が分かれば伝える事を決め奥へ進んだ。


 すると少し進んだけでビルアージが二匹出て来た。

「一匹は私にお任せ下さい。」

 と、アービィが進んで進言してくる。なので一匹はアービィに任せもう一匹を四人で倒す事にした。



 戦闘中のアービィは口元が緩むんだよな。

 それだけ余裕があると言う事か。

 そんなアービィを尻目に俺達は倒すべき相手に見直す。



 前回のビルアージは炎土=業土=炎業属性だったが、どうやらこのビルアージは炎魔>業魔>火魔と言う感じだ。

 その事をタッケンドーラさんに伝えると、

「"透視"は本当便利ですね。」

 そう言ってウェルに強化障壁を掛けた後、氷や雷系を準備し始めていた。


 俺はまだ未熟で、他人に障壁を掛ける事が出来ない。

 俺は自分自身に雲風火水樹土魔(強激属性障壁)を使い両手斧を構えて近付く。


 ウェルは基本的に攻撃を受け流す役目で、ジルがアタッカー、俺がアタッカー兼その他諸々(もろもろ)で、タッケンドーラさんが補助魔法と攻撃魔法と回復魔法で後衛となる。



 ウェルは前回と違い強化障壁がある為、強気に前へ出る。

 そんなウェルを前に見て、ジルはグランディーレ[槍]に魔法を注いでいく。

 俺も横や後ろに回る様に立ち回る。


 今回は前回よりも防具面でも障壁面でも少し安心出来るので、多少の攻撃は強引に突き進む。

 及び腰だった前回に比べ、序盤の動きの良いビルアージに対しても攻撃がかなり当たっている。

 その代わり攻撃を喰らう数も増えてはいるが、それ程問題となってない。

 そして今回は4人居るから早く終わるはずだ。


 と、思っているとまだ五分程度なのにアービィが戻ってきた。


「流石にビルアージは少々手こずりました。」

「も。もう(たお)したのか。」

「終わりましたので、剥ぎ取りも終えました。」


 いくら何でも早過ぎるだろうと、死体を正面から見ると頭の左右に刺突と、首元に深い裂傷が見えた。

「さ、三発で斃したのか。」

「いえ急所に五発です。」

「対して変わんねえ・・・。」


 これも手を出しますかと言うので、休んでてくれと言う。

 十数分で斃せたのだがこっちは四人だ。

 アービィの異常っぷりが分かる事となった。



 そうして今日は全て二匹ずつ出て来て、この様な感じで斃していった。

 翌日は一匹か二匹が出て来るが、あまりにもビルアージが多すぎる。

 洞窟に辿りつけない状態になっている。


「こんなに全部洞窟に居たというのか。」

「ビルアージはこの洞窟と洞窟の南側の魔物棲息地域にもおります。そちらの分も来たのでは無いでしょうか。」

 洞窟の南の棲息地域に問題が有るんじゃないのか。

 とは言え洞窟内部も見て置かなければいけないから、進める様にしていく。


 結局洞窟入り口に辿りつけたのは、四日目の夕方になっていた。


「今から入って危険なものが居た場合、外は暗闇で危険だから一安全な所へ戻ろう。・・・やはりロクまで行って長期化しそうだと侯爵に言って来るべきか。」

「そちらの方が宜しいかと思います。」




 そして長期化しそうだと伝え、武器の手入れやアイテムの購入をし、翌日洞窟へ赴く事になった。


 洞窟内部はやけに冷気が漂っている。

 以前来た時とは全く別の場所の様だ。

 アービィがこの洞窟を知っているそうなので、南へ抜ける道を案内して貰った。


 初日

 先ず左右に湧かれた道を左へ進み、直進と右の上り道はそのまま直進する。


 二日目

 次は左右へ斜めの道がある。右は上りで左は下り、これは左の下りを進む。

 この先には広い空洞が有ると言う。


「しかし何も居ませんな。」

「この冷気が問題なのか、やはり何か居るのか。」


 この先の広い空洞の他にもう一箇所広い空洞があると言うことで、この先に何も居なければそちらを見に行く事になった。


 黙々と歩いていると広い空洞が見てきたが、特に何も居なかった。

 この空洞は今入ってきた正面と左方向に道があり、次は左へ進む。

 暫くすると、道が右へ直角に曲がっている。


 三日目

 真っ直ぐ進んでいると、左に道が見えてきた。

 ここを左へ下ると、南の魔物棲息地域に着くと言う。

 しかし今回は直進する。

 空洞に付く前に歩き疲れたのもあり、ここで一晩休む。


 洞窟の中で何故昼か夜か分かるのかと言うと、冒険者様のアイテムで小さな魔石なのだが、夜になると薄っすら輝き、夜が明け日の入りまでは輝きが消える物があるのだ。

 面白そうだなと思って雑貨屋のオヤジにこれ頂戴って言った後、金貨4枚と言われた時には驚いた。

 小さくても魔石は魔石なんだなと。



 しかし洞窟に入ってからは、毎日干し肉と干した根菜で少々飽きてきた。

 そんな事を言うと、食べれるだけ良い方ですとジルに怒られる。



 そして翌日

 二つ目の広い空洞へ向う。


 そしていつもより肌寒い空気が、向こうから此方(こちら)へ向かって流れてくる。

「何か居ります。」


 アービィが察知し、先制を食らわない様にゆっくりと進もうとする。

 俺はいつも通り"気配"を使っている。


「(ちょっと待て、"遠視"を使う。)」

「(アールさん、"透視"もあるのに"遠視"もあるんですか。)」

「(両方の上位能力の"遠透視"ですよ。)」


 そう言いながら奥を見渡していってると、タッケンドーラさんに羨ましい、妬ましいと愚痴られた。


「(これ俺カミーザの図書館に有った魔物図鑑で見た事あるわ。)」

「(何ですか。)」

「(手出ししたら不味い気がする。この魔物はトルーザディーだと思う。)」


「「「・・・・・・。」」」

 アービィ以外の三人の表情が固まった。

 しかしアービィすらも、苦虫を噛み潰した様な表情をしている。


「(一旦ロクに戻った方が良いよな。)」

「「(同意します。)」」


 俺達は気付かれない様にゆっくりと下がりその場を離脱する。



「見た目と名前は知ってるけど詳しくは知らないんだよな。アービィの表情を見てこれは駄目な奴だと感じたから戻ろうと言っただけなんだ。」


 アービィとタッケンドーラさんから、トルーザディーについてを聞いた。

 今回素直に引いたのは正解で、ゴルウォールとは比べ物にならない程の強敵だと言う事。

 今回現れたのが洞窟で良かった。他や街中だと酷い事になっていた事。

 倒せるのは恐らくあの人しか居ないと。


「あの人って誰の事。」

「ルメシアンの魔王こと魔族の王様である、ユデイア=ファズシアン様の事です。」

「そういや会った事あるんだっけ。」

「一度手合わせしましたが、魔法無しでも化物の様な強さでした。格が違い過ぎます。」

「何にせよ一度王都へ行き侯爵様に報告だな。」



 そして数日掛け王都ロクへ戻った。

 昼前に王都へ着いたのでその足で王城へ向かい、ゴルゼウス侯爵へ取り次いで貰った。


「随分早く戻ってきたが終わったのか・・・違うようだな表情が硬い、何かあったのか。」

「非常事態かも知れません。洞窟の南西の空洞に、トルーザディーを目視確認しましたので戻ってまいりました。」

「何故トルーザディーがこんな所に出て来たのだ・・・。」


()しかするとパルイムの北東の島も、これが原因かも知れません。」

「今のパルイムはもう襲撃が無いと聞きました。トルーザディーが洞窟へ移動した為、魔物が逃げる必要が無くなったと考えれば合点がいきます。」


「ううむぅ・・・。」


「アーバインよ、そなたの武勇は知っておるがトルーザディーは倒せそうか。」

僭越(せんえつ)ながら申しますと、私には出来かねます。」

「ならば倒せるものを知らぬか。」


「一人だけ知っておりますが、アデスラン王国として動かねばならなくなると思います。」

「まさかとは思うが・・・」

「魔王ユデイア=ファズシアン様です。」


「・・・だが・・・しかしだな・・・これは執政としてではなく、国王様に報告し相談せねばなるまい。」


 ゴルゼウス侯爵は、掌で目を覆い深い溜息をついた。


「一度国家としての話を決めるので、今回はここまでで良い。今後また頼むかも知れぬが、出来ればその時も宜しく頼む。」


 有耶無耶(うやむや)になってしまったが、今回の報酬は(しっかり)りと出してくれるそうだ。

 そうしてゼリアルへの帰路に就いた。


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