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己の歩むべき道は己で見つけてみせる  作者: 飛来針
第三章 ─ アデスラン王国 ─
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まだ早かった洞窟

 洞窟に入って暫くは魔物も出てこず真っ直ぐな一本道だった。

 ずっと一本道なら良かったのだが、ある程度進むと行き止まりで左右に道が別れている。

 迷子が怖いので、紙に簡単な道順を書いて右へ進んで見る。


 洞窟は戦えないほど狭いわけではないが、お世辞にも広いとは言い難かった。

 そんな中で熊っぽい魔物の、ビルアージと遭遇した。


 大きな手に鋭い爪、力強い顎に鋭い牙、そして強靭そうな体躯、獅子のような(たてがみ)がある魔物だ。

「ビルアージは聞いたことあったが、こんな所に棲息してるんだな。」

「アールさん気を付けて下さい。毒など持ってませんが非常に力が強いです。」


 前までは気を付けていてもアール様と呼んでしまう事があったウェルだが、最近は慣れたようでアールさんと普通に呼ぶ様になった。


 "遠透視"の能力で属性を確認すると、炎土(えんど)属性=業土(ごうど)属性=炎業(えんごう)属性と三つがほぼ均等だった。

 炎業土は殆ど効かない上に、泥火魔にも強い耐性を持ってそうだ。

 名前は聞いた事は有っても、情報が少なすぎるのだ。

 毒が効くのか分からないからまず泥水魔(ポゾ)を矢筒に込めて、毒矢の魔法矢を作ってビルアージに放ってみる。

 通常毒は無効化され若干傷を与えたくらいだった。

 前衛をウェルに任せ泥水樹魔(ポズナ)泥水樹業魔(ポインズ)と順番に同じ事をしてみたが、どちらも殆ど毒が効かない。

 仕方ないので雲風水(フロスト)を矢筒に込め準備し、様子見で雲風土(魔法障壁)を張り両手斧での攻撃に切り替える。


 ニガルに巣でも色々魔法は試したが、得意な魔法は毒と魔法障壁だった。

 他も色々と使える様にはなったけど、新しく出来るのはこのニ系統が殆どだった。

 他に少し変わった炎火系が使えるが、ビルアージには効かない。


 そんな事よりも今はビルアージだ。

 ウェルは攻撃よりも防御に向いている事が分かった。

 攻撃を受けるより、受け流すのが得意だと判明した。

 その技術を高めていった様で、ビルアージの猛攻も上手く力を逃しずっと受け流している。

 俺は横や背後に周り、先端の重い斧で遠心力を上手く使い叩き斬る様に攻撃していく。


 当然重い一撃が入ると俺に向かう様にビルアージが此方を向くが、距離を取るとウェルが間に割り込み攻撃を受け流したり、横を向いたビルアージの顔面をナックルで思いっ切り殴りつけたりする。


 しかしこんなことを数十分続けているのに、一向に倒せる気がしない。

 このビルアージは恐ろしくタフな様だった。


「麓の魔物と違ってタフ過ぎるだろ。」

「でも攻撃は流しやすいので、いつかは倒せる筈です。」


 そうは言ってもこっちにも体力的なものがあるから少しずつ動きは鈍くなっていく。


 一時間後。

 俺達は完全に泥沼化していた。



 動きが鈍くなった分、攻撃を喰らう事が増えビルアージも満身創痍。

 しかしコイツはまだ倒れない。

 雲風土(魔法障壁)も途中で雲風樹土(強化障壁)に変えている。

 魔力消費は大きいもののこれに変えてなかったら、もうやられているかも知れない



 戦闘ではよく大声を出す人がいるが、こんな声の響く洞窟で大声を出すと他の魔物が寄ってきてしまう。

 そんな愚策は間違っても取らない。攻撃を食らって痛くても最小限に声を抑えなければ、ビルアージの他に魔物が増えてしまう。


 そんな事を考える余裕が有るだけまだ戦えそうだなと思っていると、ふと試したい事を思いついた。

 最近魔法を主軸に戦ってきたから、雑草薬をあまり使ってなかったのだ。

 取り敢えずトール強化薬B(一時的に全ての攻撃力が増加)の飲み、コボフォ麻酔薬を武器の刃部に塗りつける。

 飲むと効果が出る魔法麻酔薬だが、ある意味毒だなーと思った事がある。

 傷口からの滲入(しんにゅう)で、効果が出るか分からないが試すのも悪く無い。


 ウェルにビルアージを完全に任せ、俺は準備をする。

 そして隙を見計らいビルアージの背後に回り、後ろ足の付け根を横薙ぎにする。


「やっぱり効かないか・・・。」


 直ぐには効果がデないだけかも知れないから、隙を見て何度か攻撃を仕掛ける。

 ビルアージは隙が少ない為、浅い攻撃に成りがちだが傷は作れる。これはこの武器の鋭さのお陰だと思ってる。

 そんな鋭い武器でも滅多に深い傷が付かないのは、ビルアージの強靭さ故か。



 暫く打ち合い斬り合いをしていると、少しビルアージの動きが鈍りだした。

 後ろ足の動きが良くない。麻酔薬が効いてきたのだ。

 後ろ足の感覚が良くないのか、攻撃を避けるタイミングが遅くなり重い攻撃がかなり入り出した。


「今は好機だ。」


 その声と共にウェルも、鉤爪での攻撃を増やしていった。

 俺も麻酔薬を武器に塗布し直し、手数を増やしていく。


 そして遂にウェルの力強いナックルの一撃で、ビルアージがぐったりと倒れこんだ。

 しかしこれで完全に斃せたか分からないので、首の辺りに大きく振りかぶり渾身の一撃を振り下ろす。

 ビルアージの生死を確認し、長かった戦闘が(ようや)く終わった。



 俺達は一息付き、毛皮や牙や爪を剥ぎ取る。このビルアージには魔塊(まかい)があった。

 魔塊(まかい)と言うのは、読んで字の如く魔力の塊なのだが、その魔物の属性の魔力が込められている。

 炎業土の魔塊(まかい)は初めて見た。普通は一番強い属性の物で単属性か二種属性なのである。


 そして魔物の肉は食べれないので炎業火(フレイディア)で焼き後処理をする。

 死んだ魔物に耐性は関係ないので良く燃える。



 一時間と二十分ほど掛かった対ビルアージで疲れきった俺達は、今日の所はこれで引き上げようと決めた。明らかに準備が足らなかった。




 王都ロクに帰り冒険ギルドに着くと、ビルアージの戦利品を買い取って貰おうと買いとり窓口に行く。

 窓口でビルアージの牙・爪・毛皮を出すと、ギルド員が凄い剣幕で怒りだした。


「お前らそんなランクであの洞窟に行ったのか!」


 取り敢えず何で怒られてるのか分からなかったので聞いてみた。


「あそこは最低でも青ランク三人で行け、おそらくそれでもキツイ筈だが。

 生きて帰って来られたのは運が良いのもある。見たところビルアージは一匹だった様だな。

 普通のビルアージは二匹組で運が悪いと三匹以上出て来るんだ。一匹のビルアージに出会ったのは相当運がいい。お前ら命を大事にしろよ。」

「そうだったんですか、忠告通り()めておきます。」

「そうしてくれ、見知った冒険者が死ぬのは辛いからな。」


 顔は怖いが優しいおじさんだった。


「あと魔塊(まかい)も拾ったんですが、これは何処で売れますかね。」

「ちょ、ちょっと見せてくれ。」


 窓口の中が騒ぎ出した。


「お前らは運が良いのか悪いのか。強いビルアージに遭遇したんだな。しかし一匹倒して魔塊(まかい)が出てしかも三種とは。これは売らずに加工できる人を探した方がいい。ロクには三種の魔塊(まかい)を加工出来る者は居ないがエル商国のシュツーの魔導ギルドなら居るかもしれん。いい特殊魔鉱石が出来そうだな。おめでとう。」



 かなりいい物の様で持ち歩くにのは危ないと思い、甘味や評判の美味い酒を買い宿屋に帰ると森への移動を決めた。

 長老の元へ転移すると匂いで分かったらしく、


「何か旨そうな物でも持って来たのか。」

「ロクのお土産です。後で又ロクに戻して頂きたいので。」

「お主は儂の好きな物を分かっておるな。して何故戻ってきたのじゃ。」


 魔塊(まかい)の事を言うと、三種はやはり珍しいとの事。そしてガルの知り合いに加工出来る人が居るそうだ。しかも何種であれ加工出来ると言う。

「これ儂が預かりガリアに頼んでやっても良いがどうするかね。」

「あ、ではお願いします。」


 そういい魔塊(まかい)を長老に預けると、またロクの宿屋に飛ばして貰った。

 長老の凄い所は元々の場所に寸分違わず戻れる所だ。


 そして数日休み更に数ヶ月間、麓で修行に励む事にした。





 麓での修行が終わる前くらいの開拓地のゼリアルでは、大規模な整備工事が行われていた。


 エレニアの魔法で整備され、五つの町を繋ぐ道は綺麗になっていた。

 また南側の西側と中央の町にはある程度建造物が増えている。

 魔物の討伐についてはカミーザに一旦戻った冒険者の情報により、環境が良いと伝わった事で冒険者が一気に増えたのだ。

 南の道の東西への移動はアールの指示通り、乗り合い馬車での無料送迎をしている。

 馬車内での無料の飲食もある。いい人が領主になったと言う宣伝費なら安いものだ。


 そうして魔物討伐は怒涛(どとう)の勢いで進み、浄化に関してはエリオが追加で沢山持って来た。それを討伐が終わった所から順にやって行くので、それも凄い勢いで浄化されていく。

 整備された道より北側は完全に討伐と浄化が終わっていた。


 中央の街には領主が経営する宿屋と酒場と飲食店をさっさと作ったので、五十人を超える冒険者になったがしっかり(まかな)えしかも売上できっちり利益を上げている。

 しかし毎日金貨が100枚単位で飛んで行くのだ。多い日には金貨300枚くらい消えていく。

 ドズの[レイ・ドリーム]とゼリアル周辺での儲けは合わせて、金貨300~400枚でなんとか黒字にはなっているが中々貯まらないが今は仕方ないと思っている。


 消費が多いのは工事で雇ってる人数が滅茶苦茶多い為だ。しかも彼らはこの工事が終わると街に移住したいという希望者まで出て来た。


 移住者が増えるのは良い事だ領地には税を掛ける必要があるのだ。

 お金が有るから税を0にしたいと言うのは通らないと言う。何故ならばそんなことをしたら移住希望者が殺到し、他の領主適しさ結果的に国が荒れるというのだ。


 税はアデスラン王国により10%から20%までの間にするように決められている。

 この税はどういう時に払うのかと言うと、商店は売買で利益の○○%。労働者は給料の△△%で労働者は商店の税の1/2を払えばいいとなっている。

 そして領主が経営する店は税が免除されるが、その店で儲けた利益と住民からの税金の5%を国に納めろと言う事らしい。

 住民からの税で街をより良くしたり、治安維持や衛兵を雇えと言う事らしい。

 それら一切何もぜず、税の徴収しかしない領主は罷免される。


 この領主が行商人上がりだと言う事は、もう知れ渡ってるので税も平均的な15%にしておいた。

 最低の10%にすると商人上がりが何を企んでると、疑われる事もあるからだ。



 アールの動向はロクに戻る度にゼリアルに手紙を出していたので、特に問題視されておらず特に心配もされず滞り無く開拓は進んだ。


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