◆意外な事実
本日二話目
読んで下さる方が一人でもいるなら頑張れるそんな気がする日曜日
しかし文字だけで表現するのは難しいですね
この森は結構広い様で二時間ほど歩いて漸く目的地に着いたらしい。
厳重に結界が張ってあるようで結界と通り抜けた途端目に入ってきた光景に
「凄い」
その一言しか言えなかった凄すぎて。
言葉に言い表せぬ程の色取り取りの花や草木
あそこに飛んでいるのは蝶かな
日の光なぞ届かぬと思っていたら、花や実が光っている植物がある
光ってかたまっている蟲もいる
余りの事に呆けているとガルゼリアに声を掛けられた。
「数日たてば慣れて嫌でも見ることになるぞ」
こんな景色を嫌になるというのか。
なぜガルゼリア"さん"ではなく呼び捨てかというと、
ここまで歩いて来るうちに本人に呼び捨てで良い
対等にやろうと提案があった。
その理由の一つに長命であった多種多様の雑草の知識をもつドルイドが、
五十年前程に亡くなったこと、それにより雑草の博学者が少ない。
ここで学んだ雑草知識を我らにも教えて欲しいと言うこと。
よって教え教えられの関係だから対等であるべきだと言われたのである。
雑草は食べても煎じて飲んでもいいがそのままでも効果を発揮出来るそうだ。
そして人間のやっているポーション作成は元々ドルイドが教えたもので
単体で効果を発揮しないもので組み合わせや製造方法により
効果を出すものだけを教えたのだという。
完全に雑草の劣化版である。
しかしなぜ人間が雑草に興味を持たなかったのかと聞くと
ドルイドでも雑草は"雑草"というニュアンスで呼んでいるのだという。
しかし意味合いとしては違うので捉え方の違いで興味がなかったのだろう、
今となっては良かったと思っている。
人間は取れなくなるまで取り生えなくなったら生えているところを探す。
そうなればすぐに雑草は無くなってしまうという事。
だから無暗に取りすぎるなと言われた。
「今日は簡単に脱兎の事を話しておくぞ。
"脱兎"は亜人の狐兎族に多く見られる能力である。
亜人なら偶に他種族でも見ることはあるが、人間でも持つ事があるのだな。
能力に関しては平時には意味はなく危険回避という意思がある時に自動発動し殆ど逃げる事が出来るそうじゃ。
殆どと言ったのは能力の熟練具合に依るからだそうだ。
狐兎族から聞いた話じゃと同種族で持つ者と持たぬ者で
跳躍力に二倍程差が出るという事じゃが狐兎族以外に効果が出るかは判らぬ。
無理に試して着地を失敗して怪我をしても我は知らぬぞ。」
優しいのか冷たいのか偶に分からなくなるな。
「それとなずっとお主と呼んでいて忘れておったが、名は何という」
「凄い今更だな」
「遭った時はこうなると思っておらなかったのじゃよ」
「アールという、俺もこうなるとは予想すらしてなかったよ」
「「はははははは」」
お互いに笑ってしまった。
「今日のところはこれ位にして色々試してみたいであろう、
休みたくなったらあそこに見える樹の根元に多少空間がある。
あそこなら雨を凌げる、更にこの辺りには外敵はおらぬ故寝床にするがよかろう。
腹が減ったならあの赤い実かそちらの濃い緑の実を食べるがよい。
我は仲間のところに行って報告と雑草を煎じたり濾したりする道具を借りてこよう。
明日の昼くらいに戻る。」
そういって腕なのか枝なのか判らないものを軽く振ってガルゼリアは森の奥へと消えていった。
腹も空いたし言われた赤い実を一つ取りに行って分かったが、
この赤い実結構大きいので一つで十分だった。
そのあと樹の根元に行ってみた。
「これまた凄いな、樹齢何百年なんだこの樹は。」
所々根と根の隙間から緩やから風を感じるがこの辺り一帯が暑くもなく寒くもないので非常に心地いい。
地面は枯れ葉が敷き詰まった感じだ。
ここで活躍するのはアレしかない。
父の要らなくなった装備品、元テントであっただろう大きな革きれ数枚。
これを自分の体より大きめにナイフで切り分けていく。
寝床の下に二枚重ねて置き、残った革きれで材料集めに使えそうな簡単な鞄を作っていく。
革きれと革きれを繋ぐのはガーゼル村長に貰った革紐。これは結構な長さを頂いたので作れる筈だ。
赤い実が大きいのでダークで切り分け、それを頬張りながらカバン作りを進めていく。
残った革きれの丈夫そうなところを使い鞄の肩紐にしもう一本予備の肩紐を作っておく。
残った革きれはまた丸めて背嚢に括りつけておこう。
作業が終わった頃にはもう夜も更けておりそろそろ眠たくなっていた。
(村を出て二日目で安心して寝る事が出来る様になるとは思いもしなかったな、嗚呼枕が欲しい・・・。)
*****
慣れない事の連続で疲れが溜まっていたのと安心して寝れるという気の緩みからだろうか、
昼手前まで寝てしまっていたようだ。
昨夜腹一杯になるまであの赤い実を食べたので全く腹が減ってなかった。
ガルゼリアが戻って来るまでまだ時間がありそうなので、周囲の探索と雑草の採集と調査の為に出掛けるとしよう。
必要な持ち物は昨夜作った鞄・紙・ペン、あとは一応水筒と武器を持っていこう。
戦うためと言うよりは何かする時に便利そうであるからだ。
三十分ほど先に色々見て回ったが、見た事もない草木しかない。
だが"雑草"能力のお陰かどれが雑草なのかは直感的に分かる気がした。
一応一種採集する毎に判別をしていく。六種の草を採集したが何れも雑草と判別される。
余り取るなと言われていたので、各種3束ずつ集め絵と色や形や特徴を紙に書き戻ることにした。
名前付けは確かめることを済ませてからだ。
戻ってみるとガルゼリアが蝶や小鳥と戯れていた。
(やはり精霊というのは凄いな、人だとすぐに逃げていくのが全く逃げない)
遠目で眺めていたのだがガルゼリアがこちらを向いて手招きなのか枝招きなのかをしている。
促されるままガルゼリアの処に着いたのだが、驚く事に蝶や小鳥が逃げないのである。
「何故この蝶や小鳥は俺が近づいても逃げないんだい」
そう俺が問うとガルゼリアがこう答えた。
「我がこの者は安全だと伝えたからである」
いや本当もう驚く事しかない、昨日からそればかりだ。
「そんな事も出来るのか、ドルイドというのは凄いな」
そういうとガルゼリアから意外な答えが返ってきた。
「ドルイドだから出来るのではない、我の能力"伝えし者"の力である。
これは言葉に出さずとも伝えたいことが伝わるから言葉が通じぬものであれ此方の意思は通じる。
元々蝶や蟲や鳥が逃げないのはドルイドである事なのだろうがな。」
(何それ・・・何その便利能力)
そう思っていると見透かされたかの様に
「我はアールの持つ雑草や脱兎が羨ましいぞ、脱力と脱兎があればほぼ間違いなく戦線離脱が可能だろう。
今日はあとで脱力について教えよう。まずは採ってきた雑草で色々試したいのであろう?」
全てお見通しでござった。
「全部分ってるんだな」
「ある程度はな」
流石は長命種恐るべき洞察力である。
「試したあとで"銘"についても聞きたいことがある、知っていることはある?」
「多少なら知っている」
やはり流石である。
*****
昨日と同様に名を付ける前に煎じて水と混ぜ魔力を注ぐのと
名を付けてから煎じて水と混ぜ魔力を注ぐ。
始めようとしているとガルゼリアが声を掛けてきた。
「すまぬ、先ほど渡すのを忘れておった、仲間から借りてきた作成道具一式じゃ。保存用の瓶もそれなりに借りてきた。」
驚くなかれ十二分過ぎるくらいの道具だった。
石で出来た薬研がある。持ち手は木で出来ている。
**薬研というのは草を置く方に縦に溝があり、
**円盤状の物の真ん中に穴をあけ持ち手となる棒を通し
**左右に抜けないように固定したもので転がして煎じる道具だ。
**時代劇等で薬師が薬草を煎じる時に使っていたりするアレである。
他にはすり鉢に、水や液体を量るかのような木製のコップの様な器。中に目盛りが切ってある。
更に火を熾す道具、煮詰め用の小鍋、蒸し器や燻す道具もある。
ガルゼリアよ、保存用の瓶はそれなりと言ったよな・・・。
小瓶:35
細い小瓶:50
中瓶:15
大瓶:5
奴の言うそれなりがこの数らしい。
あまり採るなと言っておいてこの量は矛盾してないかガルゼリアよ。
そう思いながらも沢山の道具を貸してくれたドルイドに感謝を。
「ガルゼリア、これだけの道具を貸してくれたドルイドにありがとうと伝えておいて欲しい」
俺は何か勘違いをしていたらしい。
「これを貸してくれたのはホビットじゃぞ?」
「えええーー・・・昨日仲間に借りてくるって言ってたじゃないか」
「何も仲間というのは我らドルイドだけでは無い。ホビットの他にドワーフやエルフやコボルトにゴブリンも共生しておるぞ」
(えっと・・・ちょっと待ってくれ、最後二つは魔物じゃないのか・・・聞いてみよう)
「コボルトとゴブリンは魔物なのに共生できるのか?」
やれやれを言う素振りをしてからガルゼリアはゆっくりと話し始めた。
「そもそもコボルトとゴブリンは妖精種だ。
コボルトは鉱石を採って来させると右に出る種族は居ないだろう。
ゴブリンはちょっと悪戯好きなのが問題じゃが悪い種族では無い、寧ろ他種族と友好的じゃ。
理由は簡単だ。
コボルトとゴブリンは昔からドワーフと仲が良い。
ゴブリンに関しては地の精霊ノームとも仲が良く繋がりも深い。
それが関係しておりドワーフやノームと取引や交換したものを持っているコボルトやゴブリンがおる為
それほど強くなく見た目が妖精っぽく無いこの二種族から、アイテムを強奪しているのが現在の人間のやっていることだ。
人間は奴等を見付けたら即襲い掛かる、これの方がよっぽど凶悪で問題じゃ。
基本的に奴らは人間から怯え暮らしていたのじゃ、そしてノームに頼まれたのも有りこの森に呼んで共生している。
だからこの森には結界があるのだ、そしてこの結界は人間にのみ作用するようにしてあるのだが、アールお前は普通に入ってきた。
この話で分かると思うが、この森の事は人間に対して誰であろうと話しては為らぬ。
もし漏らすなら、精霊種、妖精種、亜人種全てを敵に回す事を覚悟せよ。」
なんということでしょう。
では子供の頃に聞いたコボルトやゴブリンが人を襲うという話は、
人間が自分たちのやっている事を正当化するために後付けででっち上げた嘘と言う事になる。
というか最後にさらりと怖い事言われたな。
亜人種なんて中には虎豹族や獅子族や熊猛族、他にも物凄い戦闘民族が居るじゃないですか
無理です絶対無理です。そんなの敵に回して生き残れる自信がありません。
ということで俺はこの時固く心に誓った、墓まで持って行こうと。
「話が逸れてしまったな、貸してくれたホビット達には我から礼を伝えておこう」
「お、お願いします」
「そんなに怖がる事は無い、この事を人間に漏らさねば良いだけじゃ。
それにな戻った時に人間のアールと言うものが一人我の土地に居ると言う事は伝えてある。
アールが危害を加えようとせねば襲われることは無かろう。」
(本当に何者ですかこのドルイドは・・・)
この時のアールは未だにガルゼリアがこの森の重鎮であり相当な権力者である事は知らない。
地図を載せておこうと思います。
▼マークは父が書いてくれた手書きの地図に書いてあった村
■は主要都市・大きさは規模
●は各国首都
食料残数:パン1つ・水筒満杯・干し肉2枚・周囲の木の実果物多数
アイテム:微弱の癒しのポーション(赤)・アールの雑草薬(緑)・アンシー強化薬(緑)
所持金:5丸10角20長
エンシーまで・・・不明
ドルイドの森滞在期間・・・不明