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己の歩むべき道は己で見つけてみせる  作者: 飛来針
第三章 ─ アデスラン王国 ─
34/48

媒体と代償

「何よここっ。」

 済まないと謝罪しつつ状況を説明する、

「バッカじゃないの、何で逃げないで戦ってんの。」

 俺も内心はそう思ってるし、エチゴールにもそう言われた事、彼は今ゴーレムを作りに行ってる事を言うと。

「はぁ・・・チルチルも呼んだのね。」

 若干呆れている。

「彼はゴーレム以外ほぼ非戦闘員よ。何考えてんの。」

 いつもツンツンしてるけど、今日のツンツンは違う。叱られてる気がする。


 少し離れた方から大きく響く音が連続で聞こえる。


 ズシーン・ドスーン、と言う感じだ。


 二階建ての家みたいなゴーレムが見えてきた。

「エルじゃないか、君もアールに呼ばれたのか。」

「チルチル大丈夫だった?」


 どうやら二人は百年来の付き合いらしい、やはり精霊も長生きかという正直な感想が出て来た。

 そしてエルと呼ばれたのは、エレニアだ。


「失礼にも私に魔法は使えるかって聞いてくんのよ。」

「知らないとは言え、流石にそれは愚問だな。ドリアードは精霊種の中でも魔法を得意とし、エルは中でも屈指の使い手だぞ。」


「で、アールは何をくれるの。」

「えっ・・・。」

「対価は必要でしょう。」


 どうしようか考えていると、エレニアが自分で要求してくる。

「アンタの家無駄に大きくなったから、私の部屋作りなさい。そして毎日エレオ甘水漬(かんすいづ)けとエレオール(酒)を出しなさい。安い対価でしょ。」


「ドリアードは対価が無いと、他人の為には動かないから格安だと思うぞ。」

 安いと言えば安いのかもしれない、それで了承する。



「で、ゴルウォールはどっちに居るの。」

 あっちだと指を差す。その方向にはウェルたちも見える。

「全くもう・・・ウェルも治してあげるわよ・・・この姿にあまりなりたくないのに。」

 そして人化を解き半人化していく。

 ベースは人型のままだが脚や腰回りが樹皮っぽくなり、腕が消え代わりに緑色の(つる)の様な物が何本も出て、髪がワサっと増えたかと思うと、先に鋲の様な棘の様な物まで付いている。


「そこの魔道士はそのまま回復してなさい。」

「ドリ・・・アード・・・なのか・・・」

 パルミックの表情に笑みが(こぼ)れた。


 エレニアの(つる)の腕がウェルに伸び包み込んでいく。

 包み込んだ場所が淡い緑の光で包まれて往く。


 光が収まり蔓はリッケンの頭へ巻き付く。

「リッケンに任意解除出来ない魔法まで使わせてんじゃないわよ。これは刻魔法で自身も止めるから、解除出来るものが居ないと永遠にこのままよ。でもこれしか無かったんでしょうね。アール、リッケンに感謝しなさい。」


 黄色く輝く巻き付いた蔓の腕。

 するとウェルとリッケンの体が動いた。

「モウ良いノカ・・・エレニアが助ケテくれタノカ。アリガトウ。」

「アンタねえ誰も解除出来ず魔力切れしたら死んでたわよ。」

「シッテル、でもそれシカ無かっタ。ウェンターク俺に優シカッた。」


 エレニアが肩を(すく)める。

「俺疲レタ、馬車デ休ム。」

「リッケン有難う、本当有難うな。そして無理をさせたみたいで済まなかった。」

 良いよと言う感じで、手をひらひらさせながら南口へ歩いて行く。


 俺はウェルを抱きかかえていた、さっき少し動いたがまだ目が覚めないのだ。

「魔力が切れかかってるから、魔力を回復させる薬を飲ませてあげなさい。」


 エレニアは相手の魔力量も分かると言う。

 薬を取り出しウェルの口を指で()じ開け、薬を流し込んでいく。

 エレニアの言う通り指や腕が無意識に少し動いた。

 そして目を開いたのを見た俺は、ウェルの胸元に顔を埋め泣いていた。

 ずっと自分がよく知る人の死を拭いきれなかったので、目が覚めるまでは実際不安でしか無かった。


「・・・良かった、目が覚めて良かった・・・。」

 何かを感じ取ったのか、ウェル何度も大丈夫ですよと言い、俺の頭を撫でていく。


「この際だからハッキリ言っておくわよウェル、貴女は戦闘に向いてないんだから、後方待機か補助に徹しなさい。」

 お前は戦えないから、戦うなと言われた感じである。

 キツイ言葉かも知れないが、エレニアなりの優しさなんだろうと思った。


「んじゃ私は向こうに行くから、落ち着いたら戻って来なさい。あと魔力回復薬貰えないかしら。」

 薬を取り出し渡そうとする。エレニアの髪が伸びて自在に動き、薬の瓶を絡め取っていく。



 ────────



 前線に赴いてみると、とんでもない所に呼び出されたと思った。

 ゴルウォールが一頭じゃなく二頭だなんて聞いてない。


 到着してみるとアーバイン以外は満身創痍といった所か。


 ドリアードにはドルイドの様な特殊な触媒技術は無い。

 自分の蔓の腕や髪の一部を媒体とし、その代償を支払い大魔法を練り込んで行く。

 その間無防備だから魔法壁(まほうへき)は頑丈に作り上げる。

 そして失った体の一部を、溢れんばかりの強大な魔力で強引に再生する。

 失う時に痛みを伴うから使いたくないんだ。だって痛いもの。



 エレニアの体とその周囲が青や緑・黄・橙の光が織り交ざり魔法を構築していく。

 それを見た誰かが(つぶや)く。

「・・・合成魔法。・・・。」


 エレニアは複数の魔法を合成していた。

 そして周囲に放出した。

 綺麗な光の粒や線の舞が戦場を(いろど)る。

 エレニア以外の仲間の体力が回復し、攻撃や防御が上がり魔力も回復した。

 と同時に代償を支払ったエレニアの顔が苦痛に歪む。



 これに対し面白く無いのは二頭のゴルウォールだ。

 振り向くとほぼ同時に、エレニアに炎線を浴びせようと放出する。

 しかし魔法壁に(はば)まれ()き消されていく。



「暫く自分自身を回復するから、頑張ってなさい!」

「エレニア様有難う御座います。」

「様って呼ぶなと、何度も言わせるな。」



 コイツやっぱり只者じゃなかった。いつも阿呆(あほう)キャラなのに・・・。


 俺も落ち着いてきて少し近づき、物陰から見ている。

 エレニアにお前も戦闘に向いてないから邪魔になる、下がってろと言われたからだ。


 エチゴールが近付いてきた。

「やっとゴーレムに色々仕込み終わったぜ。今から向かわせる。」


 ズシーン、スシーンとホールが戦っているゴルウォール側へ向かっていく。


「エルはな代償を支払いながら大魔法を使い戦うんだ、使う(たび)に腕やら脚やらを強制的にもぎ取られる痛みが付き(まと)う。そして自分の回復魔法で再生し、また繰り返す。これをあんな対価で済ませた事を自覚しなよ。」

 ・・・・・、言葉が出てこなかった。

「その代わり聖域の森ではトップクラスの強さを誇るのも間違いじゃないから、ここに呼んだ選択自体は間違ってない。全部終わったら(しばら)くエレニアの我儘(わがまま)に付き合ってやればいい。本当に嫌だったらドリアードって種族は引き受けずに帰ってしまうからな。」


 聖域の森は実は凄い奴等が集う森なのかも知れない。エチゴールの作ったゴーレムも大きさが可笑(おか)しい。



 その頃ゴーレムはゴルウォールと取っ組み合いになり、投げ飛ばしたりふっ飛ばされたりしている。

 そしてホール達とアービィ達は、協力して一頭を攻撃している。


 やや押されていたのがゴーレムが投入されると、形勢逆転した。

 戦いだして数時間が経っているのに、ゴルウォールは動きに衰えがない。

 此方(こちら)で衰えがないのは、アーバインとワンスだ。

 ホールは途中焦り無駄に消耗したようで、今は下がって回復しにきている。


「ワンスも強いなあ、いつまで経ってもあの二人には追いつけないな。」

「あの二人どっちが強いんだ。」

「それはアーバインだ、別格すぎるんだよ。ルメシアンの魔王様と模擬戦で互角だったらしいからな。しかし魔法使わずに互角だったから、使われてたら負けてるだろうな。」

「あの魔族の王様か。」

「あそこの魔王様は強い者を見掛けると、模擬戦を仕掛けてくるんだ。基本的には領民思いの良い王様だよ。」

「そんなに強いのか。」

「ダリュセ王国のゼウリオの北にある、小島の話は聞いた事有るか。」

「エル商国中心部の魔物より強いとだけしか知らない。」

「魔王様は以前あの島の魔物が暴れた時、単独で数百倒し蹴散らしたんだよ。」

「バケモノか・・・。」

「そう思うよな、だからダリュセはルメシアンを警戒して南に砦を建てた。

 因みにゴルウォールはこの沖の島以外だと、エル中心部の中央付近に棲息している。

 そしてそこより強いと言われている、魔物を蹴散らす事が出来る魔王様と言う事だ。」


 格が違うとはこう言う事なのか。



 エレニアがまた大きな魔法の準備を始めた。

 赤い魔法がドンドン濃い赤になり、周囲に黒い稲光が見え次第に赤黒くなっていく。

 内部に黄土色っぽいものが見え隠れする。その時エレニアの左の蔓の腕が消え去る。

 見ているだけの俺すら心が痛くなる。・・・その時声が掛かる。

「アール、この魔法に名前を付けなさい!」


 そうか"銘"か・・・他人の魔法にも干渉できるのか。

『ブラック・ブラッド』

「ダサいけどまあ良いわ。」


 ダサいとか直球過ぎるよエレニア。

 すると魔力球はエレニアの眼前で更に収縮し赤黒く輝き、その場を消えたと思ったらゴルウォールの巨躯(きょく)の首下から真っ直ぐに貫いていた。

 そして音と衝撃波が遅れてやってくる。



 ホール達と戦っているゴルウォールは、不利と感じたのか一気に空中へ飛び退き、飛んで来た方向へ飛び去った。

 それを見たホール達は、エレニアの魔法に貫かれ虫の息となったゴルウォールに止めを刺しに向う。

 大きな傷口となっている場所を執拗(しつよう)に攻撃し、()(まま)止めを刺す。


 今回は一頭しか仕留めれなかったが、何とか撃退に成功した。



「痛すぎてもう嫌ーー!!」

 エレニアが叫んでいる。

 そりゃそうだ左腕と左足が、代償で強制的に消し飛ばされ血が流れ出ている。そしてまた自分の魔法で止血してから再生回復を行っている。

 そんな痛々しいエレニアから目を背けてはいけないと思った。


 あのままでは結果はどちらに転んでいたか分からない、最悪の結果を考えるとエレニアにどう感謝すればいいか分からない。分かっている事は恩人だと言う事だけだ。


 一時的かも知れないが撃退できた。しかし皆疲労困憊(ひろうこんぱい)なので、一旦馬車に戻り体力の回復に務める。もう数日するとロクから兵が、来る筈だからもう暫くの辛抱だ。


 こうしてパルイムのゴルウォール撃退戦は幕を閉じた。


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