目覚め
レイチェルに恐れられ距離を置かれ、リッケンやジョー、それにゴーレムのメンテナンスをする為に薬屋に行くエチゴールに何度も諭され、漸く危険な人のレッテルから開放された。
そうなるまでに三ヶ月近くも掛かった。
俺の中で三ヶ月だ。実際森の外の世界では六ヶ月程経っている。
森と外で半々くらいで過ごしていたから、おそらく是位の日数が経っていると思われる。
最近は直接売り行くのが面倒で、ホールに薬を卸したり、[闇の通用門]に卸したりしていた。
それでも合計資金は金貨28,000枚くらいにまで膨れ上がった。
あくまでシュツーの商人ギルドの貯蓄額である。
ドズの分は自宅の魔力倉庫に預けてある。
魔力倉庫と言うのは、購入時に登録した魔力の人しか開けれないと言う便利アイテムだ。
魔力倉庫の分も合計すると、多分金貨40,000枚を越すだろう。
正直使い切れんと言うわけである。
この金の使い道はまた今度考えよう。一応ホールが面白い話を持って来ていたからそれも踏まえて。
俺が作った方の薬は始め一ヶ月くらい価格も高かったのだが、その頃漸く黒/緑の巨大変異体バジリスクが討伐されたのだ。
そうするとバジリスク特需は終わり、高騰していた解毒剤関係や他の薬も次第に値段も落ち着き始める。
そんな中でも俺の薬は高く売れる方だった。
しかし俺はと言うと不定期に薬を卸すので中々欲しい時に品物が無いと言う不便さもあり、以前傭兵に宣伝していた物が漸く芽吹き始めた。
あの珍しい薬が黒字じゃなくやや性能が劣る物がドズで買え、オマケに売り子が可愛いと言う口コミで広まっていったのだ。
討伐後暇にもなるので殺到する冒険者達で、多少やんちゃ(・・・・)する者も居た様だが、色々と風評が広がっていてそれを他の冒険者達に教えられ、暴れそうになっても他の人に抑えこまれ、あれ以降大きな問題は特に起きなかった。
外の世界で実に四ヶ月近く掛かった、凶悪ば魔物だった。
死者も多かった様だが、その素材で金貨数万枚稼いだ猛者もいた様だ。
当初は相当怯えていた様で俺が店に近付くと、店の奥に隠れて出てこないと言う状態だった。
俺も店に行き辛くやる事も特に無く仕方ないので、エチゴールに護衛のゴーレムを一体貸与して貰い、新種の雑草を探し求めたり、魔力の訓練をしたりジョーの作った案山子で弓や斧で戦闘訓練をしていた。
────────
ドズには正式名では無いが"畏怖屋"と呼ばれる薬屋がある。
店を切り盛りしている十代の女の子を怒らせると怖いと言う訳ではない。
この店に害を齎したり、最近では看板娘とまで言われ着実にファンを増やしていってるレイチェルに迷惑を掛けていると、畏怖を撒き散らす男が現れると言うのだ。
しかもこの男がこの薬屋の経営者と言う。
更に最近では[レイちゃん親衛隊]なる謎の団体まであるそうだ。
レイちゃんとはレイチェルの事らしい。
最近のレイチェルは塔著のような堅苦しい口調も消え、丁寧ながらも優しさがあると随分好評な様子だ。
あまりに客受けが良く売上も良い為、最近固定日給を銀貨50枚から金貨1枚に賃上げしたのだ。
最近の一日の平均売上が金貨150枚くらいある。
最近のレイチェルの平均日給は金貨4枚,銀貨50枚と言うそれなりの高給取りになっていた。
誤解の解けた俺に対して、レイチェルはこう言う。
「こんなに稼げる様になると、思ってなかったですよ。色々誤解したり怖がったりして御免なさい。」
と最近良く謝られる。普通に接してくれて構わないんだがな。
このまま大商人でも目指すようになればいいのにな。
一応この店はカゼリオA/Bを除く全種を取り扱っているが、如何せん店が小さいので数はあまり置けないのだ。そこでレイチェルが店をもう少し大きくしたいと提案してきた。
そして俺はドズ町長に相談しそこでは土地が足らないと言うので、少し広い土地があるドズ内の近場へ移転を決めた。
レイチェルは少し大きくと言っていたが完全にやり過ぎである。
最近金銭感覚の狂っている俺だから、少しがどれくらいか分からない。
どうせやるならもう改築が要らなくなるまで、やってしまえと言うことだ。
薬屋となる母屋の一階部分をかなり広く見積もり、その2/3くらいの二階部分がレイチェルの住む家に。
更に二階部分の1/2くらいの三階を予備倉庫とし魔鉱石を動力とした貨物昇降機を取り付けた。
"魔鉱石"というのは、特殊な鉱石に高高位魔道士数人が魔力を半月程掛けて作り上げる相当高価な動力石である。
そして離れを作りそこではエレオ甘水漬けとエレオールを主軸に、他の飲食も出来る飲食店も併設した。
この店は店内でも店外でも飲食可能にした。
お陰で新たに"料理"持ちの人材を雇うことになったが、ついでだったから良しとしよう。
薬屋も新しく二名雇い、飲食店の"料理"持ち以外にももう一人雇ったので、計四人の新しい従業員を雇う事となった。
雇った人材は、薬屋がでオーランとメディリア、二人共狐兎族の若い女性だ。
飲食店店長兼料理人の"料理"持ちのザッカルアスと言う人間男性と、ローレイと言う狐兎族女性だ。
この四人には近くの家を買い貸与した。
狐兎族の女性は戦いが得意で無い為、町の店でこうして働く事が多いそうだ。
それでも人間よりは力がある為、多少の力仕事も可能だそうだ。
この店と作る為にジョーに金貨2,000枚の予算で、シュツーの店より良い物を早く作ってくれと言うとこうなった。多くに人を雇い、昇降機の為に魔導ギルドにまで声を掛け多い時には20人くらいが作業をしていた。
途中でジョーに貨物昇降機つけようぜと言うと、魔導ギルドで魔鉱石だけ別に買ってきてくれと言われた。
魔鉱石が高すぎて予算じゃ全く足らないと言われた。
魔導ギルドに行って魔鉱石の値段を聞いて、目玉が飛び出そうになったのはいい思い出。
俺が必要とするランクの魔鉱石は金貨1800枚もしたと言う事。
高価なものなので、ギルドから護衛を付けて現地に送り届けてくれた。
そんなこんなで、ドズの店の新装開店に金貨4,000枚程吹っ飛んで行った。
それでも総資金の一割程度なので、どうと言う事は無かったが、新しい店をレイチェルに見せると、
「何故少し大きくと言ったのが、ここまで話が大きくなってるんですかーーーー!!」
という普段のレイチェルから、想像出来ない叫びが聞こえた。
そして店名はレイチェルが自由に付けて良いぞと言うと、さっさと名前を付けてしまった。
[レイ・ドリーム]
(おいおい、デイドリームじゃねーんだから、客に白昼夢を見せる妖しい店なのか。それとも御前は魔性の女なのかよ)
と内心笑いそうになりながら、
「い、いいんじゃないかな」
と誤魔化した。
予想に反し新装開店後は、薬以外にも毒や雑貨品も取り扱い、シュツーの大手薬屋といい勝負をする程の売上を上げるように為るなんて、この時点の俺はまだ知らなかった。
────────
時間は少し戻ってバジリスクが討伐された頃。
俺の家は増築の予定が増改築になっていたが、それも終わりかなり大きく広くなっていた。
どうみても敷地をはみ出しているから、ジョーに聞いた所、建設の為町長のヨーゼルに相談したらしい。
「多少はみ出しても、あの場所は誰も文句言わんだろ。好きに広げていいぞ」
と、物凄く適当な事を言ってたらしい。
二階建てを作ってくれと言ってたのに、出来上がった家は一階建てのだだっ広い平屋で、屋根の大部分が平たく何か白っぽい。
ジョー曰く予算が尽きたそうだ。
だから屋根の部分は"軽硬石"を使い土台部分にしておいたから、いつでも増築できるそうだ。
「金を渡すから今直ぐ作り上げろ!!」
と大きな声で言ったので早速取り掛かるそうだが、予算は気にするな好きに作れと言い残し、エリオに金貨1,000枚預けた。足りなきゃまた言えと付け加えて。
そして俺はこの家に執事とメイドさんを雇うと決めた。
最近エリオも薬作りが忙しくなってきたらしい。
ホールにその諭旨を伝え、ヒルリアで人間以外のちゃんとした人を雇って欲しいと伝えた。
最適の種族がいるから任せろといっていたが、どんなのを連れてくるんだろうか。
*** ***
家はまだ出来てないが、暫くするとホールが男女三人を連れて、休憩所で寛いでる俺を訪ねて来た。
「おいホール、見ての通りだがまだ家は出来てねーぞ。」
「家が出来る前に雇う者を決めんと意味がないだろう。」
確かに、御尤もな意見です。
こいつは執事候補のアーバインと、こっちはメイド候補のジョルジーアとウェンターク。
三人とも半獣人でアーバインが鋭猫族と人間のハーフ。
ジョルジーアが脱兎族と人間のハーフで、ウェンタークも鋭猫族と人間のハーフだ。
アーバインはキリっとして痩せ型なのに体格もしっかりしている、歳は三十前位だろうか。
ジョルジーアとウェンタークは俺より年下で、かなりの美少女である。
「お前らはここで暫く待っていてくれ、俺は話をしてくる」
ホールはそう言い残し俺と家の奥の部屋へ行く。
「基本的に差別が無いとされるミセリア国だが、半獣人の扱いだけは別だ。俺は変わり者だから気にしないが、ハーフは忌み嫌われている。だがアールなら問題ないと連れてきた。因みにこの三人はここで雇われなかったら、ダリュセに売り飛ばされる。男は強制労働、女は金持ちの変態にでも売られるんじゃないかな、そして其の儘死ぬまで扱き使われる。」
「分かった分かった、態と今後どうなるか聞かせてんだろ。そして俺が雇う方向に仕向けたいんだろ、やらしい作戦だな。」
「この三人の身柄を確保してやれば、どんなことでもしてくれるぞきっと。汚い仕事でも躊躇なくやると約束している。女の方はそれ以外にも夜の奉仕も約束してるぞ。アールは優しいからどこぞの良く分からん奴、にゴミの様に扱われるよりはアールの方が余っ程マシだと言ってある。あと勿論この森のことは硬く口止めしてある、バラしたら隠れている同胞の場所を知ってるから、お前らの代わりに売り飛ばされるぞと。」
「お前結構悪いやつだな。」
「ヒルリアでの立場上な、表立って誰にでも優しくして居られないんだよ。察してくれ。」
「そういうことか、名家の御曹司も大変なんだな。」
「まあ内容は兎も角、引き受けるが給料はどうしたらいい?」
半獣人は基本的に身の安全と衣食住さえ確立されていれば、物凄く忠実だと言う事らしい。
しかも忌み嫌わず普通に接しているだけで、忠誠を誓うと言う。
だがこの世界で普通に接してくれるのは変わり者か同胞だけなので、それなりの金があり自分たちを忌み嫌わない主人を見付けるのが相当困難らしい。
「三人とも相当戦闘慣れしてるから、そっち方面でかなり使える。女の方はアールの好きにしろ。」
このホールと言う商人は俺を色魔か何かと、勘違いしてるのではないだろうか。
だが俺も男だ、内心邪なことを考えてしまう。
「一応給料も払うが構わんよな」
「そこは好きにするがいい。
それと半獣人を雇う時若干儀式的なものが必要になる。
これは国の決まりでな、主人に死ぬ迄仕え忠義を立てる必要があるんだ。
そして主人に逆らえなくなる法具を付ける、これを付けてない半獣人を雇ってると雇い主も罰せられる。
法具はもう持参してるし料金は俺持ちだ。以前稼がせて貰ったからな。」
そんな決まりが有るとはミセリアは相当半獣人を忌み嫌ってる様だな。
「あの三人もそろそろ自分達の命運がどうなるか不安だろう、雇って貰えるそうだと伝えに言ってやるか。」
そして休憩所の前で、律儀に直立不動で待つ三人の元へ行く。
「話があるから、家の奥の部屋で話をしようか。」
そう言った後、さっきまでホールと話をしていた部屋にまた戻ってきた。
「お前達三人は幸運だ。このアールが三人の身の安全と衣食住を約束してくれるそうだ。しかも給料まで出すと言って下さってる。」
三人に驚きの表情が見受けられる。
「では誓え、今後命尽きるまでアールを主人とし裏切ること無く忠誠を誓うと。」
「「「今後私達はアール様をご主人様とし忠誠を誓います。」」」
そう言うとホールが懐から出した首輪の様な物に各々(おのおの)魔力を注いでいる様だ。
そして自分でその首輪を首に取り付けた。
「アールあとはお前が、この首輪に魔力を注げば完了だ。」
そう言われ順番に魔力を注ぎ込んで行く。
「この法具は物理的・魔法的にも壊せない。アールが契約を解除するには。別の法具を以って解除しなければ外す事が出来ない。そう為らない様に忠義を果たせ。」
「「「はい」」」
「これで堅苦しいのは終わりだ。」
そして五人は部屋を出た。
「んじゃ俺帰るから、また何か有ったら呼んでくれ。」
そういってホールは、中心街へ歩いて行った。
不安そうな顔をする三人にどう接すれば良いか分からないが、取り敢えず服装が酷い。
「取り敢えずその格好を何とかしようか。水浴びでもしてくると良い。」
そう言うと、ジョーが声を掛けてくる。半獣人を見ても時に気にしてなさそうだ。
「残念ながら水浴びはもう出来ない、代わりにあの池から水を引いて作った、掘り風呂に火力を落とした炎鉱石を入れてお湯にして風呂にしてある。鍛冶屋のドウェインが持ってたから安く譲って貰った。木材で囲いを作ったから安心して入れるぞ。」
この男ジョーは予算オーバー癖はあるものの、いつもいい物を隠れて作ってやがるな。
そろそろ専属大工にしたい位だと、本気で思う。
「ならその風呂に入って来い。」
遣り取りを見ていると、半獣人は男性上位な様でアーバインが先に入るようだ。
俺は先に風呂がどんな感じなのか、ちょっと覗いてくるか。
ジョー・・・やり過ぎだ。直径20mくらいの円形の風呂が有る。
あとで聞くと火力を落とした炎鉱石でも中々温度調整が難しく、結局こんなサイズになったと言う事らしい。
しかし縁は丸みのある綺麗な石で固められ、周囲も色鮮やかな草花を植えいい雰囲気の風呂になっている。いいセンスをしてるなジョーは。
そしてアーバインが風呂からあがると、次はジョルジーアとウェンタークが風呂に行った。
その時邪な考えが俺を突き動かした。
いいよな・・・うん、俺も男だもん。見たいもんは見たい。
エリオじゃ胸が小さく目の保養にならんから、今まで特に覗きもしなかった。
と言う事で服を脱ぎすて、俺は風呂場へ飛び込む。
(でけえ・・・服の上からでもでかいと思っていたが)
ジョルジーアの前の水面にメロンが二つ浮いている。
ウェンタークはそれ程じゃなかったが、それでもこちらもデカい。やはりエリオとは違う。
「ご、ご主人様如何・・・されましたか」
こういう時に胸を隠すのは駄目だとでも教えられていたのか、そのメロンを隠すこと無く恥ずかしそうにジョルジーアがそう言う。
「二人共美人だったから、つい見たくて出来心で入って来てしまったよ。」
「びじ・・・ん」
どうやらこういう感情は普通の人は抱かないのか、俺ももしかして変わり者の部類だったのか。
まあ良い、見た目も普通の人間と若干違う程度で、耳が獣っぽくそして尻尾が生えており髪が変わった色だと言う以外は、ほぼ普通の人間と変わらない。というか寧ろ普通の人間より興味が湧いて興奮してしまう。
やはり変わり者なのか。
しかしこの行動が切っ掛けとなりアールが半獣好きと言う、変わった嗜好に芽生える瞬間であった。
そんあ半獣好き目覚めたとは露知らず、内心急にドキドキし始めていた。
そしてドキドキが収まらないから話題を変える。
「ちょっと名前が呼びにくいから、ジルとウェルで良いか?」
「ご主人様の呼びたい様にして下さいませ。」
「あと言い回しが堅苦しいからもう少し気楽に喋ってくれ、これはお願いだ。」
「仰るとおりに致します」
「かたい」
「わ、わかりました」
まぁこのくらいで良いか。
そして俺は二人の間に、割り込む様に入って座った。
(眼福じゃぁぁぁぁ)
「今日はゆっくりして、明日は三人の服を買いに行くぞ。」
そして長風呂をしたアールはと言うと、湯当たりを起こすのであった。




